アニマルマシナリー。
その日の夕方。
ナオから連絡を受けた皆は訓練所に集まっていた。
そして、空が綺麗に赤く染まる頃…訓練所の入口から浩二が現れた。
後ろから付いて歩く数匹の動物を連れて。
「ごめん!待たせたっ!」
慌てた様子の浩二を他所に呼び出されたメンバーは頭に「?」が浮かぶ。
待たされたこと自体は気に等していない。
疑問なのは、鳴き声一つ上げずに静かに浩二に付いて来ている6匹の動物達の事だ。
その時、動物達の中から一羽の真っ白な鳥が優雅に羽ばたき舞の元へと向かう。
そして、驚く舞の目の前に降り立つとその綺麗な瞳で彼女を見つめる。
見た目は真っ白な極楽鳥の様な姿をしており、頭の後ろに生えた一本の飾り羽根だけが真紅に染まっていた。
「…綺麗な鳥…」
呟いた舞の言葉に嬉しそうに身を揺すると軽く舞い上がり静かに彼女の肩に留まると、甘える様に頭を擦り寄せる。
「ははっ、早速舞の所に行ったか。」
遅れて到着した浩二はその光景を見ると笑顔でそう言った。
すると今度は笑顔の浩二の横を摺り抜けるように一匹の鼬の様な姿をした動物が栞の元へと駆け寄りスルスルと彼女の身体を駆け上がる。
「きゃっ!」
驚いた栞の声に申し訳なくなったのか、彼女の身体から飛び降りた鼬は栞のすぐ目の前でちょこんとお座りをする。
こちらも舞の極楽鳥と同様に真っ白で額の一部だけ黒い模様が入っている。
俯き加減でチラチラと栞の様子を伺うその姿にもう栞も我慢の限界だった。
「さっきは驚いただけだよ。脅かしてごめんね?」
そう言って栞は鼬の前でしゃがむと頭を優しく撫でる。
気持ち良さそうに目を細めながら頭をスリスリと栞に擦り付ける鼬。
「栞もか。二人は本当に気に入られてたんだな。」
「岩谷さん、この子達は一体…」
肩に留まった純白の鳥を指先で撫でながら舞が浩二に歩み寄る。
「コイツらは元は皆の武器だよ。」
「…え?」
「は?」
「えぇ!?」
「………」
「はい!?」
「…コージ…例の素材はコレに使ったのね…」
六人が六様の反応を見せる中、浩二がソフィアの言葉に頷き続ける。
「えーと、皆の武器の魔核の純度を上げつつ追加要素をちょいちょい足して魔物の素材を加えて『クリエイトマシナリー』でマシナリー化した。一応マスターは俺になってるけど、これから皆には契約してそれぞれのマスターになって貰う。」
そう言うとナイフとポーションを取り出しまずは一番近い舞に渡す。
「指先を軽く切って血を一滴こいつに飲ませて。名前はその時に決めてくれ。」
「…え…あ、はい。」
戸惑いながらもナイフとポーションを受け取る舞。
再び地面へと降りた純白の鳥が、期待する様な目で舞を見詰めている。
舞は鳥と見詰め合い少し考えた後、しゃがみ込んで指先を少し切る。
「おいで…」
短くそう言って血が滲んだ指を差し出す。
極楽鳥は首を伸ばし優しく舞の指先を啄む様に嘴で血を掬い取ると、首を上げ喉を鳴らす。
次の瞬間、極楽鳥は全身から淡い光を放つ。
「あなたの名前は…スパルナ。」
光が収まったのを見計らって鳥の顔を優しく指でなぞりながら舞がその名を呼ぶ。
「キュルッ♪」
スパルナは嬉しそうに一言鳴くと再び舞の肩へと居場所を変えた。
「ふふっ、よろしくねスパルナ。」
「キュルルッ♪」
「無事に終わったみたいだから説明するよ。舞の『エンジェリックブレス』に『極楽鳥の尾羽』と言う素材を追加してスパルナを作った。『極楽鳥の尾羽』には回復力を増大させる効果と魔法防御力を上げる効果があるそうだ。魔核も純度を上げたから回復力も魔素収集力も量も増した筈だ。」
舞はスパルナを撫でながら真剣な表情で頷く。
「そしてメインはマシナリー化だ。これは他の皆の武器にも言える事だが、これで舞以外にエンジェリックブレスを勝手に使われる事が無くなった。武器化したい時はスパルナに言えばいい。」
「…スパルナにお願いすれば良いんですね?…スパルナ…お願い出来る?」
「キュルッ!」
待ってましたと言わんばかりに一声鳴くとスパルナが眩い光を放ちその翼で舞を包み込む。
やがて光が消え去るとそこには純白のフード付きローブを身に纏いエンジェリックブレスを持った舞の姿があった。
「…凄い…一瞬で…」
「そのローブはスパルナが姿を変えたものだ。素材はオリハルコン。元から高かった魔法防御力が更に増している筈だ。」
純白のローブは淡く光を帯びており、所々に鳥の羽根のような刺繍が施されフードの真ん中には赤い縦の一本のラインがまるでスパルナの飾り羽根の様に一際目立っていた。
「…凄ぇ…規格外にも程があるな…」
「………」
猛が驚きの声を上げ、麗子は絶句している。
「舞!白魔道士みたい!」
「綺麗ですね!」
「あはは…ありがとう蓮ちゃん、栞ちゃん。」
蓮と栞がキラキラした目で舞に駆け寄る。
そして、ソフィアがいつものポーズ。
恐らくは今正に心の準備をしているのだろう。
順番は確実に回ってくるのだから。
「次は栞だな。」
「うんっ!」
「はい、栞ちゃん。」
舞が栞にナイフとポーションを手渡す。
舞の指は既にポーションで治療済みだ。
栞の目の前には既に白い鼬がちょこんとお座りして契約の時を今か今かと待ち侘びている。
栞はしゃがんで指を切り差し出すと、鼬はペロリとその小さな舌で血を舐め取る。
やがて光り輝き始めた鼬。
しかし、光が収まってもその場を動こうとしない。
ただただ栞を黙って見詰めている。
栞はそんな鼬の頬を優しく撫で口を開く。
「あなたの名前はイナリだよ。よろしくね、イナリ。」
その名を聞いた途端、イナリは栞の周りをぐるぐると回り始め栞に駆け上ると頬に自分の頬を擦り寄せる。
「きゃっ!ふふっ、元気だねイナリ。」
明らかに喜んでいるイナリの姿を見て栞も満足そうだ。
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