遠くを見よう!
「仕事中にすみません。邪魔はしないのでちょっとだけ場所を貸して貰えますか?」
「それは構わないが、何をするんだ?こんな場所で。」
「えーと、ひょんな事から『千里眼』のスキルを手に入れたのでレベル上げをしようかと。」
「…普通はひょんな事でスキルは手に入らないんだがな。まぁ、コージの旦那だしな。」
もう、シュレイド城内での浩二の扱いはこんな感じだ。
始めは驚くが、結局「あぁ、コージだしな。」で落ち着く。
見張り塔の兵士も例に漏れず少し驚きながらも椅子を差し出してくれた。
「あぁ、ありがとうございます。」
そして、その対応にも慣れてしまった浩二。
その慣れが更に浩二のトンデモ行動に繋がる。
所謂悪循環と言う奴だ。
この城の兵士達が地元に帰った後に非常識扱いされない事を祈ろう。
一言お礼を言った浩二は椅子に座り景色を眺める。
「うん、分かってはいたよ。」
呟いた浩二の視線の先には森、森、森。
鬱蒼と繁る森林が何処までも続いていた。
「俺…この世界に来てから森と城しか見てないな…あ、一応滝も見たな。」
滝とは言ったが、その滝も魔の森の中であり、やっぱり森なのだ。
「…あの…この森ってどの位まで続いてるんですか?」
「大森林の事か?そうだな…ざっと300kmはあるんじゃないか?あぁ、このシュレイド城はその西寄りにあるから、ここからだと森の端まで200kmって所か。」
「……えげつない距離ですね…」
「まぁ、大森林って名前は伊達じゃないって事だな。」
北海道と殆ど変わらない広さかよ…
そりゃ、森しか見えない訳だ。
「まぁ、仕方ないか…飽きそうだけどなるべく遠くの森を見よう…」
森以外の物を見るのを諦めた浩二は、淡々と遠くを見続けた。
時折『透視』で森の中を見る事も忘れない。
まぁ、忘れないと言うかそうしないと幾らドMな浩二とは言え飽きてしまうだろう。
「コレ…何か目が良くなりそうだな…」
《コージ君、『千里眼(見習い)』と『透視(見習い)』のレベルがMAXになったよ。お疲れ様、あ、あと緑を見ると目が良くなるって言うのは迷信らしいよ?》
目に入るものが緑ばかりで飽き飽きしていた頃、頭に聞き慣れたアナウンスが浩二の最後の砦を打ち砕く言葉と共に聞こえて来る。
浩二の数時間が無意味に終わった瞬間だった。
いや、『千里眼(見習い)』と『透視(見習い)』のレベルがMAXまで上がったのだから無意味では無いのだが。
「………」
《あぁ、でも目のリラックス効果はあるらしいから無駄じゃなかったかな。》
「…女神様…何でそんな事知ってるんですか…」
女神の微妙なフォローに対し絞り出す様に口にした浩二。
やはり浩二は動かずに黙っているのが何より苦手の様だ。
□■□■
「と、言う訳で麗子の装備を作ろうと思う。」
「…相変わらず唐突ね。」
麗子は訓練所にいた所を浩二に捕まり唐突に切り出された。
浩二は麗子にだけ装備を与えてないことに気付き装備を作ろうとするも、彼女の戦闘スタイルが今一分からず、直接聞きに来た訳だ。
「麗子ちゃんの装備なら弓だよね!」
一緒にいた蓮が横から口を挟む。
ちなみに一緒に訓練していたナオは浩二の腕に絡み付いている。
「そうなのか?」
「うん!麗子ちゃんの弓、凄いんだから!」
「ちょっと蓮!やめてよ!」
麗子が顔を赤くしながら蓮に抗議する。
「ん?弓じゃ嫌なのか?」
「あ、え…いや、そんな事は無いけど。」
「経験者なんだろ?」
「うん!学校に居た頃は何回も大会で優勝してるよ!」
「へえ、凄いな。」
「だから、止めてって!」
照れ臭いんだろう、麗子は真っ赤な顔で蓮にヘッドロックを決めている。
あぁ、結構綺麗に決まってるな…
おお、蓮が必死に腕をタップしてる。
何にせよ、取り敢えず麗子の武器は弓で決まりだな。
それじゃ、作りますかね。
何ならもう、みんなの武器も改良しちゃおうかな。
浩二は森の観察で余程ストレスが溜まっていたのだろう…麗子の武器を作るだけではなく、今までの武器まで改良しようとしていた。
魔改造と言う名の改良を。
□■□■
浩二は理由を話し一度皆に作った武器を集めて回り、何時もの小部屋に来ていた。
今回は一緒に来たのはナオだけだ。
そして、二人の目の前にある簡素なテーブルの上には今まで浩二が作った
『エンジェリックブレス』
『ブラックロア』
『花鳥』と『風月』
『カグヅチ』
『紅蓮の篭手』
が並んでいる。
「それで浩二はどんな改造をするの?」
ナオが並んだ武器達を前にして腕を組んでいる浩二に問い掛ける。
「んー…いっそ意思を持たせようかと思ってる。」
「意思?」
「うん。皆の武器を他人に使われたくないからな。なら、武器自身が意思を持った方が早いだろ?」
「…まぁ、そう…かな?」
また浩二の突飛な発言が始まった。
道具に意思を持たせるなど普通の魔道具職人なら絶対に思い付かない発想だ。
『至高の創世主』を持つ浩二ならではの発想と言えよう。
つまり、普通じゃないのだ。
ナオが返答に困るぐらいは。
「でも、先にアクセサリーを幾つかと麗子用の武器を作ってしまおうと思う。」
「弓だっけ?」
「そう、弓道に使うような和弓。でも、正確には分からないからそこは麗子の頭の中に任せようかと。」
「ん?どういう事?」
「グリップを握れば弓本体と弦が頭で思い描いた様に具現化する様にするんだよ。」
「…そんな事出来るんだ…?」
「んー…多分。」
浩二が多分と言えばそれは『出来る』という事。
浩二の持つ『至高の創世主』はそれ程迄に規格外のスキルなのだ。
「そんじゃ、作りますかね。」
そう言って浩二は隣の倉庫へと素材を取りに行ってしまった。
「…きっと皆…また驚くんだろうな…」
ナオは新しく出来上がった武器達を渡された時の皆の反応を想像して苦笑いを浮かべた。
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