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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第四章 新しい種族と新しい魔王

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土建屋岩谷 ―巨大アダマンタイト原石の切り出し―


「構いませんが、危ないですから少し離れてて下さいね?」


「しかし…それじゃお前の手元が見えん。」


「んー…それじゃ、ある程度原石が小さくなったら改めて見せますよ。」


「うむ。それで頼む。」


「分かりました。それじゃ少し下がって下さい。」



浩二は親方が距離を取るのを確認した後、改めて右手に気で剣を作り出した。

それを見た親方が目を剥く。



「それじゃ、先ずは半分だな。」



横に倒されたアダマンタイトの丁度真ん中に立つと、徐に右手を振り上げ素早く一閃。


すると、良く見なければ分からない程の極細の切り口からガコッ!という音を立てて巨大な原石が両断された。


浩二はそのままどんどん切り進め、最終的には一辺30cm程の立方体がゴロゴロと出来上がる。



「さぁ、親方。今から切りますから見てて下さい…って親方?」



口を開けたまま動かない親方。

まぁ、仕方の無い話だが。


アダマンタイトは鉱石の中でもかなり硬い部類に入る鉱石だ。

本来はスミスが言う様に土魔法を使える魔法使いが土魔法で鉱石に干渉し意図的に柔らかい部分を作りそこから割る…という方法を取る。


しかし、アダマンタイトはミスリルやオリハルコンといった魔法との親和性が高い鉱石とは違い、非常に魔法との親和性が低い。

だからこそ、手練の魔法使いが時間を掛けて干渉しなければならないのだ。


それを浩二は切った。

アダマンタイトの硬度はそのままに。


親方は目の前で起きた事態に全く頭が追い付かないのだ。

長年石を相手に仕事を続けて来た熟練の職人である彼の知らない技法で…と言うか手刀でアダマンタイトを両断。

それどころか次々と小分けにしていく姿は何処か遠い世界の事のように思えた。



「あぁ、すまんコージ。どうやら見ても理解出来そうに無い。」



そう口にするのがやっとだった。



□■□■



「それじゃ、後ほど改めて馬車をこっちに回すから積み込みの指示を頼む。」


「あぁ、了解した。」



何とか我に返った親方がスミスの言葉に頷く。



「あ、それとな…」


「?」


「ここの職人達に報奨が出る筈だから期待してて良いぞ。」


「おおっ!本当か!」


「あぁ、あの量のアダマンタイトだ。それなりの額だろうよ。」



その言葉を聞いて後ろに控えていた職人達から歓声が上がる。

親方も嬉しそうだ。



「良かったですね、親方。」


「あぁ、コージのお陰だ!ありがとうな。」



親方は浩二の手を両手で掴みぶんぶんと振る。

うん、力強いな。



「それじゃ、親方、仕事頑張って下さいね。」


「うむ。コージも達者でな。」


「はい。」



浩二は親方や職人達に手を振りスミスと共に城へと戻って行った。



「しかし、凄まじいですね…」



職人の一人が立方体に切り分けられたアダマンタイトの原石を撫でながら呟く。

重なり合った立方体同士が文字通り隙間無く積み上げられている。



「あぁ、全くだ。何の参考にもならんかったが、世界の広さは分かったよ。」


「確かに。アレは真似できませんね。」



二人は苦笑いを浮かべ…そして大笑いを始める。



「俺達は俺達のやり方で精進するとしよう。」


「ですね。」



親方と職人はそう言うとアダマンタイトの原石をポンと叩き仕事に戻って行った。



□■□■



「…アダマンタイト…ですか。しかもその量…」



王女はスミスの報告を聞いて頭を抱える。

希少鉱石を大量に手に入れたにも関わらず浮かない顔の王女。


それも仕方の無い話だ。


少量ならば国内で消費出来る。

何よりアダマンタイトを扱える人材が人族領には殆ど存在しない。


つまり、これほどの量のアダマンタイトを消費する手段がこの国には無いのだ。

言ってしまえば宝の持ち腐れだ。



そんな中、最初に頭を抱える王女に言葉を発したのは浩二だった。



「えーと、多分ですが…買い取ってくれる所がありますよ?」


「…これだけの量ですよ?一体何処が…」


「ドワーフの国です。」


「!?」



人族とドワーフ族は交易…と言うか接触を絶って数百年。

王女も流石にこの答えにはたどり着けなかった様だ。



「一応ソフィアに聞いてみますね。」



浩二はそう言って素早くゲートを開くとそこに飛び込み消えてしまう。


そして数分後頭上に開いたゲートから飛び降りて来る浩二。



「えーと、大丈夫だそうです。」


「本当ですか!?」



軽い感じの浩二の言葉に食い付く王女。

不良在庫の処分先が見つかったのだ、願ってもない事だろう。



浩二がシュレイド城に戻り直ぐにソフィアにこの話をした所。



「良いわよ。」



即答だった。



「マジで?」


「アダマンタイトでしょ?いくらあっても困らないもの。」


「でも、何で支払うつもりなんだ?」


「通貨はきっと駄目だろうから、貴金属辺りが無難じゃないかしら?」


「成程な。んじゃ早速伝えて来るよ。」


「えぇ、お願いね。一応交換を希望する貴金属の種類と量も聞いておいて。場合によっては即支払うから。」



こんな感じだった。



「…という事みたいです。」


「本当に…彼女にはお世話になりっぱなしですね… 」



王女が申し訳無さそうな表情を浮かべる。



「多分ですが、ソフィアはそんなに気にしていませんよ。だから王女様はしっかり売り側として対価を希望するべきです。」


「そうでしょうか…?」


「えぇ、アダマンタイトは貴重なんですよね?なら、それに見合った対価を求めるのは当たり前です。あぁ、人族領で使う分は避けた上でですけどね。」


「分かりました…アダマンタイトが城に届き次第求める貴金属の詳細を出しておきます。」


「それでは、ソフィアにはそう伝えておきます。近々また人族領にお邪魔しますから、その時に伺いますね。」


「はい。度々すみませんね岩谷さん。」


「いいえ。それではまた。」



笑顔で返事をした浩二は再び足元に開いたゲートで魔族領へと帰って行った。



浩二が到着したのは訓練所。



「浩二ぃーーっ!!」


「うおっ!?」



ゲートから地面へと着地する前に掻っ攫う用に浩二に抱き着くナオ。


そのまま二人揃って訓練所をゴロゴロと10m程転がる。



「お帰り浩二っ!」


「あぁ、ただいまナオ。」



ナオの熱烈な出迎えを土塗れて受け取る浩二だった。

今年も今日で終わりですね。


こっちはリアルで仕事の真っ最中ですが(笑)


毎年三賀日は地獄の忙しさです…



それでは…

来年もよろしくお願いします。

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