土建屋岩谷 ―城壁修復―
「あ、そうだ!スミスさん、石切場でアダマンタイトが出ました。それで現場の親方に王女様に伝えるって俺が言付かって来ました。」
「ほう、アダマンタイトか。あんな場所から出るなんて珍しいな…で、どの位出たんだ?」
「えーと、縦10m、横5m、奥行き5mぐらいですかね。」
「……ん?…えーと、もう一回頼む。」
「ですから、縦10m、横5m、奥行き5mのぐらいです。」
スミスのリクエストにお応えして綺麗に言い直す浩二。
「……cmじゃなくてか?」
「はい。mです。現場で石切の邪魔になるからって親方に頼まれて俺が切り出して邪魔にならない所まで運びました。」
「おおっ!でかしたぞコージ!早速原石を切り分けられる魔法使いを手配しよう!」
「魔法使い?」
「あぁ、アダマンタイトは原石でもエラい硬度でな。土魔法の手練れじゃないと切り出すのも難しいんだわ。」
「へー…何なら、俺が切り出しましょうか?多分魔法使わなくても切り出せますよ?」
無意識に仕事を増やそうとする浩二。
多分本人は気付いていない。
「マジか!?出来るなら頼みたい所だが…城壁修復もまだだろ?」
「あぁ、それなら…」
浩二は座っていた石材から飛び降りると、先程と同じ様に気の剣を作り出し大まかに石材を刻む。
今度は刻んだ石材を穴の中へとポンポンと適当に投げ入れる。
入り切らなかった石材は手前に積む。
「んじゃ、やりますか。」
浩二は魔核を一個作り出し命令を刻むとヒョイと石材の山へと投げ入れた。
次の瞬間、石材と城壁の一部を光が包み…
「うん、こんなもんか。」
光が消えた時、穴のあった場所はまるで新品の石材を隙間なく組んだ様に真新しい城壁へと姿を変えていた。
それを見ながら当たり前の様に頷く浩二。
「…………」
「さて、それじゃアダマンタイトを切り出しに…ってスミスさん?」
目を見開き口を開けたまま動かないスミス。
浩二がスミスの目の前で掌をサッサっと振ると、ハッ!と我に返ったスミスが浩二に食い付く。
「コージ!今何をした!?何で一瞬で穴が塞がった?つーか、どうやって石材を刻んだんだよ!それより、あんな適当に刻んでなんで綺麗に城壁と一体化してんだよ!」
「ス、スミスさん、落ち着いて…」
「アホか!普通あんな簡単に修復が終わるかよ!…普通…?…あぁ、コージは普通じゃ無かったな。悪かった。」
謝る所が違う。
「それにしても…凄まじいな…あの石材を簡単に刻めるなら城壁の意味なんて無いじゃねーか…」
「えぇ、まぁ。それに俺は『転送』使えますから最初から壁なんて意味が無いですよ。」
「そうだったな…それに、城門破壊したのもコージだったな…」
「…あー…はい。すみません…」
「いやいや、必要だったんだろ?仕方ねーよ。この城を取り返せたのもコージのお陰だしな。文句なんかある筈が無い。それに穴を塞いで貰えて助かったよ。」
「いや、そもそも穴を開けたの俺ですし…」
「それでもだ。ありがとうな。」
「はい。」
浩二はスミスの真っ直ぐな物言いに照れ臭そうに頭をポリポリと掻きながら返事をする。
「んじゃ、早速石切場に行くか。」
「そうですね。それじゃ、門からある程度離れた場所まで飛びますか。」
そう言って足元にゲートを開く。
「便利だよなぁ、ソレ。」
「確かに一度言った場所なら直ぐですからね。さ、行きましょう。」
「あぁ。」
スミスは躊躇いなくゲートに飛び込むと、浩二もすぐにスミスの後を追いヒョイとゲートへと飛び込んだ。
□■□■
「お、お疲れ様ですっ!」
「おう!お疲れっ!」
門番の兵士がスミスを見て緊張気味に敬礼をする。
そして、隣に居る浩二の姿を見て叫ぶ。
「お前はさっきの馬鹿力!」
「あぁ、はい。お疲れ様です。」
「こいつは俺の知り合いなんだ。通って良いよな?」
浩二の肩に手を置き門番に話し掛けるスミス。
「はい!問題ありません!」
「んじゃ、行くかコージ。」
「はい。」
二人は敬礼する兵士を横目で見ながら門を抜け石切場へと歩いていった。
「アイツ…一体何者なんだ…?」
二人の後ろ姿を見ながら兵士がポツリと呟いた。
□■□■
「よう!コージ!どうした?忘れ物か?」
石切場についてすぐに親方が浩二に話し掛けてくる。
「いえ、城に戻ってアダマンタイトの話をしたら、切り出すのに魔法使いを手配するって聞いたんでそれなら俺が代わりにと。」
「コージが切り出すのか!?」
「はい。今からチャチャっとやっちゃいます。」
「チャチャってお前…まぁ、良い。アンタは?」
「あぁ、俺はスミス。王女の代理で来た。」
「そうか。それじゃこっちだ。」
親方の後に続きさっきアダマンタイトを置いた場所まで移動する。
「これはまた…デカいな。」
スミスがアダマンタイトの原石を見上げながら呟く。
「それじゃ、早速切り出しましょうか。」
浩二は縦に置かれているアダマンタイトの原石を切りやすいように横向きに倒す…とは言っても浩二以外には無理な話だが。
近くにいた職人達は、浩二の姿が見えた段階で少し距離を取っている。
何とも複雑な気分だ。
しかし、これから浩二が見せる行為がそれを更に加速させる事になるとは本人も予想していなかっただろう。
「えーと…切り出すサイズはどの位です?」
浩二は横倒しにしたアダマンタイトの原石の前でスミスへと向き直る。
「サイズに拘りは無い…と言うか、運ぶのにさえ不便でなければ大丈夫だ。どうせ窯で溶かさなきゃ使えんしな。」
「成程…ならある程度大雑把でもかまいませんね?」
「あぁ、頼むわ。」
「了解です。」
浩二は改めて原石に向き直りある程度の寸法を決める。
そして、右手に剣を作ろうとした所で親方から声が掛かった。
「コージ、これからする切り出しってのは、彼処から原石を切り出したのと同じ方法なのか?」
「はい、そうですが?」
「なら頼みがある。近くで見ても良いか?」
親方はあの鏡面仕上げの様な切り口をどうしたら出来るのか興味がある様だ。
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