土建屋岩谷 ―原石撤去―
何やら下が騒がしいが…
「親方さーん!コレ、どこに置けば良いですか?」
巨大なアダマンタイトの原石を片手で支えながら大声で叫ぶ。
「おおっ!この辺りに頼むわ!」
「了解ですっ!」
丁度親方から少し離れた辺りに空き地がある。
親方の身振り手振りから察するとあの辺だろう。
「危ないですから、職人さん達は離れてて下さいね!」
浩二は大声で職人達に空き地から離れる様に促すと、蜘蛛の子を散らすように逃げ出して行く。
うん、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。
ちゃんと支えてるから。
職人達の退避が完了したのを確認した浩二は、改めて倒れて来た原石を両手で抱え直す。
それと同時に両足がミシミシと石に食い込んでいく。
「あー…コレは急がないとダメかな?」
浩二自身は重さを感じてはいないが、地面はしっかり原石の重さを感じている様だ。
浩二は地面に足を食い込ませながら空き地へと向かい急斜面を降りて行く。
しかし、あと少しで空き地という所で気が抜けたのだろう…浩二は致命的な間違いを起こした。
空き地の手前の段差をヒョイと飛び降りてしまったのだ。
段差自体は50cm程の大した事は無い段差なのだが…
今の浩二は数十tの原石の塊を持ち上げている。
この状態で着地するとどうなるか…
ズウゥン!!!
まるで地響きの様な揺れと轟音を残し、浩二は地面に埋まった。
原石を持ち上げたまま。
綺麗に隙間なく。
「おいっ!?兄ちゃんっ!?」
ざわめき出す親方と職人達。
皆が高さ10mの原石の根元に注目する。
当然誰1人として浩二が生きている等と思ってはいないだろう。
いつの間にか辺りがシンと静まり返る。
しかし、その静寂を打ち破るようにその手前の地面がボコっと盛り上がり土を避ける様に手が現れ…そして…
「いやぁ…びっくりしたぁ…」
気の抜けた声を出して土に塗れた浩二が顔を出した。
その浩二の言葉を聞いて誰もが思っただろう。
びっくりしたのはこっちだ…と。
□■□■
「本当に大丈夫なのか?」
土塗れになって石に腰掛けている浩二に向かい親方が問いかける。
「はい。お騒がせしてすみませんでした。思ったよりも地面が柔らかかったみたいで。危なくこの原石が墓標になる所でした。」
「何縁起でもねー事言ってんだよ…まぁ、大丈夫なら良いか。それにしても…兄ちゃん丈夫だなぁ…」
頭をポリポリと掻きながら冗談ではない冗談を飛ばす浩二に親方が突っ込む。
そして佇まいを正し浩二に頭を下げる。
「本当にありがとうな兄ちゃん。助かったよ。」
「いえいえ、こちらこそお騒がせしてすみませんでした。」
「そんなの大した事じゃねーよ。この原石を普通にこの場所に運ぼうとしたら一体何ヶ月掛かるか分からんよ。」
「確かに…重いですからね…あ、この原石アダマンタイトみたいです。」
「へ?」
浩二のサラッとした爆弾発言に変な声を出す親方。
「いや、この原石はアダマンタイトの原石ですよ。」
「……マジでか…?」
「はい。鑑定してみたので間違いない筈です。」
本当は女神様から聞いたんだが、説明が面倒臭いしな。
「兄ちゃん…鑑定まで使えんのか…いやいや、そんな事より!アダマンタイト!?これ全部か…?」
「はい。全部です。」
「これはまた…大変な事になって来たぞ…先ずは城に連絡しないと…」
「あ、俺はこれから石材担いで城に戻るんで、王女様に伝えましょうか?」
「それは助かる!…って…兄ちゃん王女様と知り合いなのか?」
「えぇ、まぁ…色々ありまして…」
「本当に兄ちゃん何者なんだ…?」
「…取り敢えず秘密って事で。それじゃ、俺は行きます。」
これ以上ここに居るとドワーフだってバレかねないしな。
浩二は当初の目的である石材を担ぎ、親方に挨拶をする。
「色々お騒がせしました。」
「いやいや、こっちこそ助かったよ。ありがとうな。あ、兄ちゃんの名前教えてくれねーか?」
「浩二です。」
「コージか。ありがとうなコージ。気を付けて帰れよ。」
「はい。それじゃ!」
浩二は石材を担いだまま片手を上げて挨拶をすると足早に石切場を後にした。
帰りに本当に石材を素手で運ぶ浩二の姿を見て門番の兵士が腰を抜かしたのは言うまでもない。
□■□■
「コージか…本当に何者なんだかな…」
親方が浩二を見送った後石に腰掛け煙草に火を付けようとした時、後ろから一人の職人に声を掛けられた。
「親方…ちょっと良いですか?」
「ん?どうした?」
親方は職人に案内されるままついて行くと、そこは先程までアダマンタイトの原石が埋まっていた場所だった。
「ここです…ここを見て下さい。」
「ん?…何だ…コレは…」
親方は職人が指差した場所に触れて驚愕する。
そこは浩二が気の剣で切った場所。
まるで鏡面仕上げをしたかの様にツルツルでまるで凹凸が無かったのである。
「一体どんな切り出し方をすればこんなに綺麗な切断面になるんです?」
「…さぁな…全く…コージの奴め。石切に就職しねーかなぁ…」
親方は今日一日で一年分驚いてしまったかの様な脱力感を感じながらも、少しだけ本気で浩二を石切に勧誘しようかと考えながら煙草に火を付けた。
□■□■
「やっと着いた…」
浩二は石材を担いだまま城門を抜け訓練所へと辿り着いた。
途中、石材を積んだ馬車を走って追い越し、城門前で兵士に止められたり、城門修復中の土建屋に群がられたり…
「馬車…借りて行けば良かった…」
肉体的よりも精神的に疲れた浩二。
穴の前に石材を置きそこに腰掛けてグッタリしていると…
「よう!コージ!お疲れっ!」
黒い義手をヒラヒラさせながらスミスが現れた。
恐らく城門での騒ぎを聞き付けてきたのだろう。
「…疲れました…」
「いや、まさか俺も素手で石材を担いで来るとは予想してなかったわ。」
「いや、肉体的には全然疲れてないんですけどね…」
「まぁ、あんな事すればそりゃ目立つだろ?土建屋から勧誘も来てたぞ?」
「勘弁して下さい…」
「ガハハハハッ!自業自得だなっ!」
グッタリする浩二の横でスミスの笑い声が訓練所に響き渡った。
遂に記念すべき100話目です!
特に何もしませんが(笑)
ここまでお付き合いして下さった読者の皆様本当にありがとうございます!
これからまだまだ続く予定ですので、これからもどうぞよろしくお願いします!
頑張ります!




