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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第一章 ドワーフは魔族!?

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緩やかな日常。

ここで異世界転生ものを読んでいるうちに我慢出来なくなり自らも書こうと思い至りました。

本人が社畜であり、なかなか執筆が進みませんが、生暖かく見守って頂けたら有難いです。

「今日もいい天気だ。」



快晴…とまではいかないが、繁る木々の隙間から覗いた空を見て呟く。

丁度いつもの座り慣れた切り株が見えてきた所で、首に絡み付いていた猫が「ナァーォ」と鳴き声を一つ。



「ハイハイ。」



青年はいつもの事のように切り株に座り、すると猫はこれまたいつものように青年の膝に音もなく降り立つと、自らの頬を青年のお腹に擦り付け甘えるように再び「ナァーォ」と一鳴き。



「ハイハイ。」



甘える猫の喉元をコリコリと指で撫でてやると、やがてゴロゴロと喉を鳴らして目を細め、この場所は自分の場所だと言わんばかりにその場に腰を下ろし綺麗な青い瞳で青年を見つめる。



「本当に…今日もいい天気だ。」



一人と一匹は少しの間見つめ合い、やがて青年が空を仰ぎながら呟いた。



□■□■



某市の某町にある少し大きめの森林公園。

一人と一匹は青年の休日にいつもここを訪れていた。



青年の名は岩谷浩二(いわたにこうじ)

今年で26歳になった。


朝から晩まで働きつつも薄給という所謂「社畜」だ。

しかし、本人は特に不満もなく趣味と言ってもこの散歩という名の森林浴ぐらいしかない…少々ジジくさいが。


浪費癖など微塵もない彼は、生活には何不自由なく悠々自適に一人と一匹暮しをしていた。

悠々自適と言っても社畜なんだが。


本人の性格は至って普通。

当たり障りなく誰とでも接し、世界中の人々が静かに幸せに生きられればなぁ…等と思いつつも、それはきっと無理なんだろうなとも思っている。


低身長、筋肉質、平和主義。

顔も人並み、もう本当に普通の青年だった。



「さぁ、そろそろ行こうかナオ。」



浩二の膝で微睡んでいるナオという名の猫の頭をひと撫ですると、少し名残惜しそうに立ち上がり再び彼の首に絡み付く。

ナオの毛並みを首元に感じつつ浩二は立ち上がり、生い茂る森林の中をゆっくりと歩き出した。


普通、猫は散歩に連れ歩かない。

まぁ世間一般での話であって、世の愛猫家の中では違うのかも知れないが。

それでも、首輪とリード位は付けるだろう。


しかし、彼女…ナオは違った。

愛くるしい美人顔に透き通るような青の双眸。

アメショー柄、左耳だけが何故か薄茶色でそれがかえってチャーミングな彼女は、首輪を嫌った。

それはもう猛烈に。

元々野良だったせいもあるのかも知れないが、猛烈に。

にも関わらず、何故か散歩に行こうと浩二が玄関に向かうとヒョイと華麗に彼の肩に飛び乗り、絡みつく。

「自分も連れて行け」と。


拾った時は産まれて間もない子猫だった。

たまたま、本当にたまたま立ち寄った近所の神社の境内。

その軒下に彼女はいた。

弱々しく横たわり、このまま放置すれば確実に一両日中には死んでしまうであろう姿。

彼女は浩二に気が付くと弱々しく首をこちらに向け、まだ見えているかさえ分からないが、その綺麗な青の双眸をこちらに向け、ただ一声



「ナ…ーォ…」



と鳴いたのだ。

迷いは無かった。

優しく、ただひたすらに優しく彼女を抱き抱えた浩二はそのまま彼女を連れ帰った。

有りと有らゆる情報を漁り、社畜であるにも関わらず仕事を一週間も休み、渾身的に彼女の看病をした。

その甲斐あってか、彼女はみるみる回復し順調にスクスクと育っていった。

付けた名前は「ナオ」。

見つけた時の彼女の第一声から取った。



「ナオ、んじゃ行ってくる。」


「ナァーーォ」



いつもの当たり前のようなお見送り。



「ただいま、ナオ。」


「ナァーォ」



そして、当たり前のようなお出迎え。


一日も欠かしたことのない当たり前のような行動。


浩二は時々思う。

彼女は本当に言葉を理解しているんじゃなかろうか…と。

愛猫家に良くあるアレだ。

実際、ナオは散歩に出かける時以外は浩二の肩に飛び乗りはしない。

決まって散歩の時だけだ。

「自分も連れて行け」と。

そして、散歩中は決して浩二から離れなかった。

と言うより降りなかった…浩二の身体から。



「お前は賢いなナオ。」



もう、何度目か分からないがそう言いながら首に絡み付いている愛猫の顎を撫でる。



「ナァーォ」



目を細めながら「当然よ」と言ってるかのように一鳴き。


緩やかに静かに流れるひと時。


浩二はこの一時が何時までも続けば良いと思っていた。

癒しの森林浴。

愛猫との一人と一匹の生活。

充実しているとはお世辞にも言えないが、特別不満もない。

そんな生活が何時までも続くと思っていた。


今日までは。



□■□■



「そろそろ帰ろうか。」



森林浴という名の散歩をひとしきり楽しんだ一人と一匹は自宅の方向に足を向けた。

実際に足を向けたのは浩二だけだが。


先ほどとは打って変わって賑やかな街中。

平日の午後なのだからまぁ当たり前なのだが。


浩二の仕事は所謂不定休。

週末もあれば平日もある。

不定…なのだ。

月に6回の休日が不定に振り分けられる。

仕事が暇な日に。

今日はそんな6回の休日のうちの最終日。

まぁ予定などなくいつも通り森林浴に洒落こんでいた訳だが。



「予定なんてもの、ここ暫く無いなぁ…彼女でも居れば…痛ッ!」



違うんだろうか…と言葉を続けようとした時、不意に耳に痛みが走る。



「お?ヤキモチか?ナオ…だから痛いって!」



浩二は耳に噛み付いた…とは言っても本気では無いのだが、ナオに向かい話し掛けるが当のナオは「フン!」とでも言わんばかりにそっぽを向く。



(本当に人間臭いんだからコイツは…)



まるでヤキモチでも妬いたかの様なナオの反応に苦笑いしつつも、そんなことを思う。



(そういや、前に会社の同僚の女の子を連れて帰ったら偉い興奮してたなぁ…。)



以前、単に同僚の女の子にDVDを貸す為に家に連れていったことがあった。

下心など微塵もなく、単に彼女の帰り道が浩二の家の前を通るから帰宅ついでに貸す…それだけだったのだが…。


いつものお出迎えをする為に待ち構えていたナオがドアを開けた瞬間に彼女に飛びついた。

それも、すごい剣幕で。


慌てて引き離そうとするも、彼女のスカートに噛み付いたまま離そうとしないものだから引き離すのに大変な思いをした。

たまたま彼女も猫を飼っており、それ程大事にはならなかったが…



「いやぁー、ビックリしたよホント。あんなにヤキモチ妬きな子初めてかも。」



DVDを受け取った後彼女が言った一言がやけに印象深かった。

その後、会社では我が家の愛猫ナオは「浩二の彼女」と言うことで定着した。

定着した…。



「ま、可愛いから良いけどな。ナオ、そろそろ機嫌直してくれ…な?」



ツーンとそっぽを向くナオの耳元をコリコリと引っ掻くように撫でると、チラチラこっちを見ながら「仕方ないわね…今回だけよ?」と言うかのように浩二の手に頬を擦り寄せてくる。



(チョロイな…でもまたそこが可愛かったり…。)



全くもって親…飼い主バカである。

きっとこの男ありきの彼女なのだ。


そんな事を考えながらナオの極上の毛並みを肩越しに楽しんでいた浩二だったが、ふと彼女が浩二の手に頬を擦り寄せるのを中断し、辺りを見回すようにキョロキョロしながら耳をピクピクさせ始めた。


まるで何かに気付いたように。


読んでいただきありがとうございます。

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