ある少女の譫言
短編を集めました
あるところに、とても優しくきれいな娘がいました。
その娘の家は、あまり裕福ではありませんでしたが慎ましく三人で暮らしていました。
そんなある冬の日の事です。娘の母親が病気で亡くなってしまいました。
それは、あまりに早い別れでした。その娘と父親は悲しみに沈みました。
その日から、父親は人が変わったかのように仕事をしなくなり、娘に暴力を振るうようになりました。
それでも娘は、父親に元に戻ってもらおうと必死に家事や仕事をこなします。
そんなある日の事です。父親が新しい母親だと、黒髪の妖艶な美しい女性を連れてきたのです。
娘は、さすがに嫌だと抵抗しますが「もう決まった事だ、嫌なら出ていけ」と言われ泣く泣く認めることになりました。
それからと言うもの仕事をより増やし、継母のわがままを聞く父親の言うこと聞きながら家事をこなす毎日が始まりました。毎日が苦痛で、娘は日に日に痩せ細っていきました。仕事で稼いだお金は父親と継母にほとんど取り上げられ、ご飯も満足に食べられません。
なんの希望も抱かなくなったころ、ふらふらと森の中に入り込んでしまいました。
早く帰らないとと、思えば思うほど帰りたく無くなっていき森の奥深くまで入ってしまいました。
ハッと気がついたときには、きれいな湖の畔に立っていました。
その湖には何故か昔の家族の姿の写真が浮かんでいました。
これが、走馬灯かと思いながらぼんやりと眺めていると、写真が渦巻き別の写真が現れました。
そこには、継母の姿がありました。なにやらお菓子が、怪しい鍋の中からが出てきたのです。先が気になり、目を凝らすと……そのお菓子を母親に渡したところや父親に近づいているところまで写っていました。そして、娘は何故かそのお菓子には毒が入っている事と継母の正体が魔女だと言うことに気がついたのです。その事に気がついたとき娘の中にあった、ほの暗い気持ちが溢れ出しました。娘の目は、光を失い。唇はつり上がるように弧をえがきました。げっそりとした面もちの女が幻想的な湖の畔で狂ったように笑っている様子は、どんなに屈強な男でも逃げ出してしまいそうなほど狂気に包まれた空間でした。
すると、頭の中に声が響きました。
『ふふふ、不思議な感情を抱いている娘だな。面白い、お前の為に力を貸してやろう。』
そんな誰かの声は、今の娘には、まるで全ての事を包んでくれているような心地よく感じました。
だんだんと自分の中にあったはずの何かが無くなっていくのが分かった。しかし『何』が無くなったのかわからない?
ふふふ、楽しい事が始まる予感がするわ。
まず、声に導かれるように魔女の隠れ家に行き必要な資料を集め、その他(家も含む)を山火事にならないように少しずつ燃やしました。
そして、また導かれるように家に帰り継母もとい魔女を倒しました。そして、父親も魔女に毒されてしまいましたから、浄化するために倒しました。
それから、娘は村を浄化の炎で燃やしました。赤々と燃え盛る火を見て、狂ったように笑っている様子から『狂気の魔女』と呼ばれるようになった娘は今も森の中でさまよっています。
しかし、それから時を経ず『狂気の魔女』は美しい湖の畔で身を投げて亡くなっている事が分かった。
その死体は、周りには燃えるように真っ赤な薔薇に囲まれていて、まるで全ての事から解き放たれたかのように安らかな顔で亡くなっていたらしい。
しかし、その姿はしわくちゃなお婆さんと見間違えるぐらいな姿に変わっていました。
娘は知らない。目で見たことだけが事実とは限らないことを、唐突に降って湧いた『魔女』とは何なのかを‥‥‥
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娘の姿を見ていたのは、神々しいオーラを身に纏い、碧色の髪が特徴的な物憂げに俯いている男だった。
その男は、感情が無い平面な声で呟いた。
「この女は狂った。さあ、最後まで自身を保てる女はいるのだろうか」
それは何もない空間に響き、やがて消えた。
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