第八話 不幸少年の初依頼
王都西部に広がる草原(ノルティア草原)にやって来た俺とシオンは、討伐対象であるスライミーを探していた。
スライミーとは、ぷよぷよしたあの有名なモンスターによく似た魔物らしく、それが大発生しているというのだ。
今回の依頼はそれを討伐するというもので、きちんと全滅させてきてくれとのこと。
「《ウインドカッター》!」
シオンが得意だという風魔法をスライミーに向かって放つ。風はぷよぷよしたスライミーの身体を切り刻んだ。
べちゃべちゃと地面に落ちたスライミーは、キラキラした粒子になって消えていく。
「お、レベルが上がったな」
俺はシオンを見てそう言った。
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~シオン・セレナーデ~
★ステータス★
レベル:16
生命:90
体力:38
筋力:19
耐久:20
魔力:164
魔攻:135
魔防:95
器用:210
敏捷:18
精神:105
幸運:16
★固有スキル★
・ハデスの魔眼
3秒間目を合わせた者を上位石化させる。
・風魔攻上昇
風魔法によるダメージを増加させる。
★装備★
魔導士のローブ強
革の靴強
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ちなみに俺が他人のステータスを覗き見できる固有スキルを持ってることはシオンに言ってある。
「はい、2上昇したようです」
「結構倒したんだけどな。やっぱりE難易度の依頼の討伐対象じゃそんだけしか貰えないか」
どうやらこの世界では魔物を倒せば経験値なるものが手に入るらしく、それが一定量まで達するとレベルが上昇するらしい。
俺がアルターを倒した時は20レベル上昇した。
「さて、殆ど倒したか」
「あとは、あそこにいる数体だけですね」
シオンの目線を追うと、身体をくっつけ合っている5匹のスライミーがいた。
なんだあれ、ちょっと可愛いじゃないか。
「・・・ん?」
そこで俺はあることに気がつく。
密集したスライミー達の身体がなんか合体していってるように見えるんだが・・・。
それだけじゃない。どんどんデカくなっていってるような。
「あ、あれは・・・」
そんなスライミーを見たシオンが少し驚いたような表情でそう言う。
「あいつら何してんだ?」
「スライミー達の中でもステータスの高いスライミーは、命の危機を感じると他のステータスの高いスライミー達と融合するという話を聞いたことがありまして・・・」
「え?」
「あ、見てください」
そう言われて振り返る。スライミー達は完全に一つの生物へとなり、普通に俺よりもデカくなっていた。
「す、スライミーキングです」
「ほー、王様ねぇ」
スライミーキングは、巨体をぷよぷよさせながら、少しずつこちらに向かってくる。
よく分からんが、スライミーよりかは強いと思うのでシオンより俺が相手をしたほうが良さそうだ。
と、思った次の瞬間。
「え、きゃあっ!?」
「んなっ!」
スライミーキングが勢いよく飛び上がり、そして俺の後ろにいたシオンにのしかかった。そしてそのまま倒れ込む。
「てめっ、何してやが─────」
もがくシオンからスライミーキングを引き剥がし、投げ飛ばす。そしてシオンに目を向けた俺はその場で固まる。
「え、あ、ぁ────」
俺の視線を感じたシオンも自分の身体を見て固まる。
「・・・これは」
スライミーキングの体液?によってシオンの身体は全身ねちょねちょになってしまっている。
それだけならまだいい。
俺とシオンが固まった理由、それは。
「きゃあああああああああ!!!」
シオンのローブが溶け落ちていたからだ。
下着まで溶けたらしく、素っ裸のシオンは顔を真っ赤に染め、叫びながら身体をだき抱えるようにしてしゃがみ込んだ。
おいおいおいおいおいおい。
どういうことだ俺は固有スキルのせいで幸運が-9999になってるはずだそのせいでこれまで転けて穴に落ちたり馬に踏まれたり色んなことがあったなのになんだこれは俺得すぎるありがとう神様女神様そうだ女神様といえばアルテリアスだな
よし、落ち着こう俺。
とりあえず深呼吸して着ていた服を脱いでシオンに渡す。もちろん彼女の身体を見たりなどしていないぞ?
どういうことなんだ。
こんなラッキースケベに遭遇することが出来るとは。
俺の幸運は-になっているはず。
そう思って俺は脳内でステータスを表示させた。
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~ジークフリード~
★ステータス★
レベル:420
生命:7400
体力:9999
筋力:9999
耐久:8300
魔力:9999
魔攻:6200
魔防:5600
器用:3000
敏捷:6250
精神:1100
幸運:-9500
★固有スキル★
・超力乱神
筋力を+5000する。
・全属性適性
全属性の魔力を扱えるようになる。
・状態異常無効化
全状態異常を無効化する。
・超不幸
幸運-9500
・能力透視
相手のステータスを見る事が出来る。
★装備★
白のシャツ
流行りのズボン
快速の靴
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なんだよ流行りのズボンって。そんな名前だったのかよこのズボンは。
いや、それよりも。
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幸運:-9500
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やったぁぁぁぁぁぁ!!!
ちょっとだけ+されてる!!何が理由かは分からないけど!!
だからこんなラッキースケベに遭遇することが・・・。
「ありがとうでもお前は消えろ!!」
とりあえずシオンをこんな目に遭わせたスライミーキングは殴って消し飛ばした。そしてふるふる震えるシオンに手を差し出す。もちろん首は全力で別の方向に向けている。
「そのー、帰るか」
俺がそう言うと、シオンは恐る恐る俺の手を掴んだ。
ごめんなさい、ごちそうさまでした。