第七十七話 アスモデウスをさがせ
「それでは早速、今後について話し合いを始めよう」
「はーい」
「こ、ここがジークフリード様のお部屋・・・」
現在俺とレヴィ、そしてシャロンは俺の部屋にいる。
よくよく考えたら、俺の家の中が多分一番安全だということにさっき気付いたのだ。
「まず、魔神アスモデウスの居場所についてだな」
「空飛んでるのは偽物だからね。分かりにくい場所に隠れてるんじゃない?」
「まあ、そうだろうな。王都の外に出られてたら終わりだけど」
「うーん、それは無いんじゃない?なんかこの状況を楽しんでるみたいだしね」
「だとしたら、どこに隠れてると思う?」
「わかんなーい」
とりあえずアスモデウスを見つけ出さなければ、この地獄の追っかけ合いは終わらない。
「ってそうだ、魔力サーチは?」
「ごめん。アスモデウスは自分の魔力を完全に隠すことが出来るから、やっても引っかからないと思う」
「ふむ、じゃあ直接見つけ出すしかないか」
と、そんな会話をする俺達を見てキョトンとしているシャロンと目が合った。
「何だか、とても冷静ですのね」
「まあ、これまでに何度か魔神と戦ってるからな」
「尊敬致しますわ」
いやー、そんなこと言われると照れる。
「んで、あとはあれだな。街の人達をどうするかだな」
「そうだね」
「シャロンみたいに他の街からやって来た人が襲われたりしたら大変だし」
「片っ端から気絶させていくっていうのは?」
「時間がかかるだろ。やっぱりアスモデウスを倒すのが一番手っ取り早いか」
だとしたら、いつまでもここに居るわけにはいかない。
「とりあえず、アスモデウスが居そうなところをピックアップしてみよう」
「ギルドとか?」
「おお、確かに居そうだな」
「それと、王都の地下とか」
「あっ!」
そうだ、王都の下には地下施設があるんだった。以前エステリーナが連れ去られた場所だ。
「それと、王城にいる可能性もありますわね」
「王城・・・」
なるほど、可能性としては一番高いかもしれない。
「んじゃー、それぞれ三箇所に別れるっていうのはどう?」
「確かに効率は良さそうですわ」
「シャロンが襲われないか心配なんだが」
「大丈夫です、その時はわたくしのレイピアで返り討ちにして差し上げますわ」
「た、頼もしいな」
なら大丈夫か。
「そしたら、それぞれどこに行く?」
「ボクは王城がいいなー」
「わたくしはギルドの方へ」
「うし、なら俺は地下施設に行こう」
これで、それぞれの行く場所が決まった。
「シャロンはアスモデウスを見つけた場合、攻撃したりしないですぐに逃げてくれ。それから俺かレヴィのいる場所に向かう、いいな?」
「分かりましたわ」
「よーし、アスモデウス討伐隊、しゅっぱーつ!」
こうして、俺は地下施設の入り口、レヴィは王城、シャロンはギルドに向かうことになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よっと」
以前ぶっ壊した隠し扉から俺は地下施設に足を踏み入れた。すると冷たい風が奥から吹いてくる。
「ふむ・・・」
まじでここ、どういう目的で造られた場所なんだろう。軍事施設か何かだろうか。
「ん・・・?」
しばらく地下施設の通路を歩いていると、前方に人影が見えた。
「・・・3人か」
誰かは見えないが、3人いる。アスモデウスの魔法の効果を受けている人がこんな場所にまで入り込んだのか?
「あれ、ジークじゃん」
「・・・クラウンか?」
「こんなとこで何してんの?」
前方にいたのはまさかのアカリ達だった。
「お前らこそ何してんだよ」
「・・・ちょっと、色々あって」
「っ!?」
突然俺の体が浮いた。そしてそこに猛スピードで槍が飛んでくる。俺は咄嗟にその槍を掴んだ。
「・・・ったく、お前らもか」
「ぬああい!!」
今度はガルムが浮かぶ俺に剣を叩きつける。その衝撃で俺は地面にめり込んだ。
「おっと、硬いな!!」
「・・・ジーク」
豪快に笑うガルムを押しのけ、アカリが俺にのしかかってきた。
「なぁっ!?兄ちゃん、アカリに手ぇ出すつもりか!!」
それを見たガルムが今度は俺の顔面に剣を叩きつける。しかし俺は無傷で、逆に剣にヒビが入る。
「やっぱり、早くアスモデウス見つけねーとなぁ」
「・・・わっ」
俺は軽いアカリをクラウンに向かって放り投げ、クラウンがアカリをキャッチした隙にガルムを地面に叩きつけて勢いよく奥に向かって走った。
「あ、逃げるな!!」
「・・・階段、一段も上ってない」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「・・・誰も居ませんね」
その頃、ギルドを訪れていたシャロンは、一通り建物内を歩いて誰も居ないことを確認してから外に出た。
「・・・あら、何の用ですの?」
「ここに来ると思っていたぞ、シャロン」
そんな彼女を待っていたのは、腕を組んで笑うエステリーナだった。しかし、いつもとは違い、表情に凶悪さが滲み出ている。
アスモデウスは女性達がジークを求めるように操った。エステリーナも現在ジークとあんなことやこんなことをするために彼を追いかけているのだが、それを邪魔するシャロンはエステリーナからしたら完全に敵である。
「私とジークの階段上りを邪魔するのなら、容赦はしないぞ」
「ふん、情けないですわね。そんなに簡単に操られてしまうなんて」
「覚悟するがいい、シャロン・アラベスク」
エステリーナが鞘から剣を抜き、炎を纏わせる。
「・・・わたくしが目標としていたのは、今の貴女ではありません」
「・・・?」
「今の貴女に負ける要素など、何処にもありませんわ!!」
「っ!!」
エステリーナが地を蹴ってシャロンとの距離を詰めた。そして勢いよく炎剣を振るう。
「遅いですわよ」
しかし、あっさりとそれを躱されてエステリーナは体勢を崩す。
「はあッ!!」
シャロンはそれを見逃さず、突きを放った。
しかし、
「ふん、甘いな」
「な・・・!?」
エステリーナの全身から炎が放たれ、シャロンは咄嗟に後退した。
「その程度か、シャロン」
「まだまだこれからですわ!!」
シャロンがレイピアを構える。
彼女も、エステリーナに会える気がしていたから、ギルドを選択したのだ。
自身の生涯のライバルを元に戻すために。
アスモデウスなら、きっとジークが何とかしてくれると信じて。
「魔神のことはお願いします、ジークフリード様!!」
そう言って、シャロンはエステリーナに向かって駆け出した。




