第七十三話 お祭りだもの
「う・・・」
「あー、惜しい」
「ご主人様、幻糸を使用してもよろしいでしょうか」
「ダメダメ」
「うぅ・・・、悔しいです」
エステリーナとシャロンがいろんなもので勝負している間、俺達も屋台を見て回っていた。
そして今俺とシルフィがしているのは射的。
意外とシルフィが負けず嫌いだということが分かった。
「どれ、俺が手本を見せてやろう」
そう言って俺は屋台のおじさんに銅貨を渡し、銃を手に取る。
「何か欲しいもんあるか?」
「え、あの、私は・・・」
「何でもいいんだぞー」
「あ、あの、ぬいぐるみを・・・」
おずおずとシルフィが指さしたのは、うさぎのぬいぐるみ。
「おし、任せとけ」
そして俺はぬいぐるみに狙いを定め、迷いなく弾を撃った。弾はぬいぐるみの額に直撃し、ぬいぐるみの重心が傾く。
「よし、もう一発」
続けて二発目を撃つ。弾は再びぬいぐるみの額に当たり、あっさりとぬいぐるみは下に落ちた。
「すごいです、ご主人様」
「はは、どうも。ほれ、シルフィ」
「あ、ありがとうございます・・・!」
おじさんが取ってくれたうさぎのぬいぐるみをシルフィに手渡す。すると彼女はぬいぐるみを大事そうに抱き抱えて笑った。
「大切にします」
「ぐはっ・・・!!」
シルフィみたいな見た目の子が、ぬいぐるみをギュッてしながら笑うのはずるいぜ。
思わず抱っこしたくなっちまったぜ。
「・・・あれ」
抱っこしたいと思っていた時、視線の先にある人物の姿が見えた。あれは・・・この前の美人さんか。
「あ、ジークフリードさん」
「どうも」
笑顔で駆け寄ってきた桃色髪の美人さん。この様子だと、もうあの連中に変なことはされてないみたいだな。
「・・・」
「ん?どうしたシルフィ」
「いえ、何でも」
警戒するかのように美人さんを見つめるシルフィ。なんかこの前もちょっと不機嫌になってたような・・・。
「ふふ、大丈夫ですよ。ご主人様を奪ったりなんてしませんから」
「えっ!?」
頭を撫でられたシルフィの顔が、みるみるうちに赤くなる。
奪ったり・・・?どういうことだ。
「鈍感なのも罪ですよ、ジークフリードさん」
「・・・?」
そう言われたけど、全然意味が分からない。
「さて、それじゃあそろそろ行きます。明日はもっと楽しくなると思いますよ」
「ん、まあそうだな。ミスコンもあるし」
「また機会があればお会いしましょう」
そう言って美人さんは俺達に背を向けて歩いていった。
「あ、また名前聞くの忘れてたな」
「・・・」
「シルフィ、あの女の人と何かあったのか?」
「違います」
ムッとした表情で俺を見てくるシルフィだが、逆に可愛いんだぞ、そんな顔されても。
「あ、シルフィずるーい!」
「え・・・ぐふっ!?」
シルフィを観察していた時、突然誰かに腰に突進された。
「いいなぁ、ボクも欲しいものいっぱいあるよ」
「お前なぁ、俺じゃなかったら腰骨折れてんぞ今の」
「ジークだからそんなことするんだよぉ」
「やかましい」
とりあえず俺に突進してきたレヴィの頭をグリグリする。
「あれ、そういえばシオンは?」
「あそこだよ・・・ってありゃ」
レヴィが指さした先を見る。
「・・・」
「・・・あー、屋台壊しちゃダメだよ?」
俺はレヴィから手を離し、シオンがいる場所に向かった。
「なあなあ、ちょっとだけだって」
「君可愛いからさぁ、遊んでみたいんだよね」
「あの、困ります・・・」
近づくにつれてイライラが増してくる。
そう、シオンは見知らぬ男達に絡まれていた。多分違う街からやった来たやつだろう。
「おい」
「あ?なんだてめえは」
俺はシオンに一番詰め寄っていた男の手を掴んだ。
「ジークさん・・・」
「なんだぁ?てめえ、この子の連れかよ」
「連れだが?」
「なんか調子のってんなぁ。あんま舐めてっと─────お?」
俺は掴んでいた腕を持ち上げ、軽く上に放り投げた。
「うげっ!?」
「さて、次はどいつだー?」
「ひ、ひぃっ!!」
指を鳴らしながら近づくと、男達は逃げていった。最近こんな輩達と関わる回数が増えてる気がする。
「シオン、無事か?」
「は、はい、おかげさまで・・・」
「ならよかった」
とりあえず安心させようと思って頭を撫でてやった。
すると彼女は満足そうに目を細める。
「シオン、大丈夫?」
「怪我はありませんか・・・なさそうですね」
「え、あ・・・」
向こうからレヴィとシルフィがやって来た。
「もー、ジークがあの人達のこと、殺しちゃうかと思って心配したよ」
「殺すわけねーだろ」
「でもご主人様、殺気がダダ漏れでしたよ」
「それでも俺は殺ってない」
ほんと、祭りの時って調子に乗るやつが多いからなぁ。
「ねえジーク、あっちの方も行ってみようよ!」
「はいはい、分かったから引っ張るな」
「あ、待ってくださいご主人様・・・!」
「浴衣だから動きにくいですね・・・」
そしてその後、俺ははしゃぐレヴィに引きずられながら、月光祭初日を満喫したのだった。




