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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
機来界壊〜古代都市?いえいえ未来都市です〜
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第六十六話 朝を迎えて

「・・・ふぅ」


次の日、起床した俺は、とりあえず顔を洗ってリビングへと向かった。


「・・・」


シオン、起きてんのかな。


「あ、ご主人様、おはようございます」

「おう、おはようシルフィ」


リビングに行くと、シルフィが机を拭いていた。どうやらまだシオンは起きていないようだ。


「・・・ご主人様?」

「はい」

「顔が赤いですよ?何かあったのですか?」

「い、いや、別に何でもないぞ!」

「あ、おはようございます」

「どわっふ!!」


突然後ろから声が聞こえ、肩が跳ねる。振り返ると、パジャマ姿のシオンが立っていた。


「おお、お、おはよう」

「はい、おはようございます」


微笑む彼女を見て、また心臓の動悸が激しくなる。最近微笑んだりしてくれることが増えたなーと思ってたけど、これだけ意識してしまっている今その表情をされると、ちょっとやばい。


「・・・?」


何故か黙り込んだ俺達を見て、シルフィが不思議そうな表情を浮かべた。


「どうしたのですか?」

「え、いや、何でも・・・」


・・・ぴと。


「・・・」

「・・・」

「・・・あのー、シオン」

「はい?」

「何か距離がかなーり近い気がするんだけど」

「・・・駄目ですか?」

「いやいやいや、むしろ嬉しいんだけども」


そんな俺達のやり取りを見て、シルフィは何かを察したようだ。


「し、シオンさん、まさか・・・」

「・・・うん」

「うぅ、お買い物に行ってまいります!!」

「え、シルフィ!?」


こんな朝早くから買いものするのか?

そんなことを思っているうちに、シルフィは外に出ていってしまった。


「・・・」

「・・・」


2人きりになってしまった。

そしてまだシオンは俺にぴったりとくっついている。


「・・・ジークさんに振り向いてもらうために、これからは少し積極的になろうと思いまして」


な、なんだって!?

今シオンの顔はものすごく赤くなっている。つまり、かなり恥ずかしいはずなのだ。


「し、シオン・・・」


けど、それを我慢してまでそんなことを・・・。すごく幸せですね、はい。


「あれ、何してんの?」

「げっ・・・」


そんな中、アホが起きてきた。


「朝からお熱いですな。まぜてー」

「む・・・」


俺に勢いよく飛びついてきたレヴィを見て、シオンが顔をしかめる。


「いやー、ようやくシオンも積極的になったんだね。お姉さん嬉しいよ」

「見た目は完全にロリだけどな」


ニヤニヤしながらレヴィがシオンに絡む。


「はい、負けたくないので」

「むふふ、そっかー。じゃあ、ライバルだね!」


シオンが堂々と負けたくないと言ったので照れた。しかも彼女、まだ俺にひっついてるからお胸が腕に当たってですね、ちょっと色々と大変なことになってるんですね。


「ねえねえ、ジークはこんなことされて嬉しいよね?」


そう言いながらさらに抱きつく力を強めてくるレヴィ。


「もちろんだ」

「だって〜、シオン」

「むむ・・・」


そんなレヴィを見て、シオンまでもが俺に抱きついてきた。

こ、これは・・・!


「ここが天国・・・か」


そう呟き、チラリとシオンのほうを見てみたら、彼女、顔がとんでもないぐらい赤くなってた。

けど、昨日のことがあった後だと、嫌がってこんな顔になっているわけじゃないと分かる。


「・・・ふむ」


ちょっと待って、やばくなってきた。美少女2人にぎゅっと抱きつかれてるこの状況。

俺の下の方があかんことになりかけている。


「あのですね、お二人とも」

「はい?」

「なにー?」

「一旦離れてほしいんだけど」

「・・・」

「えー、あと1分だけ」


・・・離れてくれない。

ほんとにまずい、だって胸柔らか────


「・・・おいジークフリード貴様ァ!!レヴィ様に何をしているのだ!!」

「え・・・どわっ!?」


突然何者かに殴られ、俺は吹っ飛んだ。


「・・・キュラー!」

「よくも堂々と手を出したなぁ!!殺す!!」

「相変わらず気持ち悪くてうざいけど、今日だけはお前に感謝する!!」

「やめろっ!!肩を組んでくるな!!」


今日ばかりは現れたキュラーに感謝しなければ。このままじゃいろいろとスタンドアップしかけたからな。


「た、ただいま戻りました・・・」

「おじゃまします」


そして、そんな状況の中、シルフィがエステリーナを連れて帰ってきた。今の光景をギリギリ見られなかったことに俺は安堵する。


「あら?もうラブラブシーンは終わっちゃったの?」


さらに、リリスさんまでもがやって来た。


「ギルド長!?こんな時間に起きているなんて・・・」

「なんだか面白そうなことが起こってる気がしたのよ」


どうやらリリスさんはシルフィ達が連れてきたわけじゃないみたいだな。


「ふむ、ジーク。ギルド長が言うラブラブシーンというのはどういうものなんだ」

「え、いや、まあ・・・、レヴィのいつものヤツですよ」

「貴様、レヴィ様といつもあのようなことを・・・!!」

「お前はうるさい」


なんかややこしいことになってきたぞ。


「あらあら、シオンちゃん。顔が真っ赤だけど、何があったのかしらぁ?」

「う、うぅ、何でもありません!」

「あ、逃げた」


ニヤニヤするリリスさんから逃げるようにシオンは二階に駆け上がっていった。


「さーて、ジーク君。一体どんな面白いことをしていたのかしら?」

「こいつ、レヴィ様とあの眼帯をしている女に抱きつかれてました」

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


こんのクソ吸血鬼、ぶっ殺してやる!!!


「別にいいじゃん。ね、ジーク」

「ちょ、この状況で抱きついてくんなって!!」

「ジークフリードォォォ!!」

「そ、そんな・・・、シオンまでもが」

「うぅ、私にはそんな勇気ありませんよ・・・」

「なるほど、ジーク君は想像以上のプレイボーイだったのね」

「こんな朝、嫌だッ・・・!!」


誰か、助けてください。

俺は額を押さえてため息を吐いた。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「あ、あの、ジークさん」

「な、なんだいシオン」


その後、俺は部屋へと逃走し、絡みに絡んでくる人達から逃れることに成功した。


まったく、朝から大変だぜ・・・なんてことを思っていた時、シオンがゆっくりと扉を開けて中に入ってきた。


「その、ごめんなさい。私が変なことしたから・・・」

「気にしないでくれ」


むしろ幸せでもあったからな。


「で、そんなことをわざわざ言いに来たのか?」

「あ、いえ、それだけではなくて・・・」

「とりあえず座りなよ」

「・・・ありがとうございます」


どこか緊張しているようにも見えるシオンに座布団を手渡す。それを下に置いて彼女は座った。


「あのですね、実は昨日あの男の人に連れ去られた時に、いろいろ気になることがあって・・・。先に、その、告白・・・したりしてしまったので、伝え忘れていました」

「そ、そうなのか」


告白という単語を口にするのに顔が真っ赤になるシオンが、見ていて微笑ましくもあるんだが、なんか凄まじく照れる。


「実は、あの男の人にハデスの魔眼の石化効果が効かなかったんです」

「なに?」


シオンの魔眼はただの石化効果じゃなくて、上位石化効果を持っている。

どんな魔法でも解くことの出来ない力だというのだが。


「あの男、まじで何者だったんだ・・・?」


上位石化効果を無効化したり、転移魔法を扱えるほどの力を持ってるのなら、どうして俺はあいつに対して何も違和感を感じなかったんだろうか。


それに、俺をボコボコにしたツァーリなんたらってマシン。

魔神並の力を持つマシンをよく開発出来たな。


「あの人は、魔法と科学の力を融合させて、ロボットを造り上げたそうですよ」


俺の考えていたことが分かったのか、シオンがそう言った。

なるほど、確かに魔法があれば、開発は可能なのかもしれない。


「それから、私の魔眼はまだ完全に力を発揮出来ていないと言っていました」

「は・・・?」

「この魔眼の真の力は、国を滅ぼせるそうです。そして、あの人の造り出すマシンと合わされば、生物や造形物関係なく全てを石化させるものが出来上がるとも・・・」

「めちゃくちゃだな」


魔眼の真の力って、どういうことだ。

アルターといい、柳といい、その力を求めてシオンを襲撃するやつが多すぎる。


「・・・ごめんなさい。こんな眼を持っているせいで、皆さんに迷惑をおかけしてしまって」

「シオン・・・」

「いつ、何が理由でこの魔眼の力が発現したのかは覚えていません。けど、私は過去にこの魔眼で人の命を奪っています。やっぱり私は他の人達を不幸に─────」

「はいはいストップ!」

「えうぅ・・・?」


俺はシオンのほっぺたを引っ張った。


「迷惑なんかじゃない。言っただろ、俺達は仲間だ。仲間が困ってんのなら、俺はどんなことでもする」

「ジークさん・・・」

「それに、俺はしょっちゅう不幸に見舞われてるからな。今更どんな不幸なことが起こったってへっちゃらだ」


そう言ってやると、シオンは安心したかのように微笑んだ。いかんいかん、俺はこの微笑みに弱い。


「ありがとうございます、ジークさん」

「お、おう」

「あ、そうだ。少しお話しませんか?暗いことじゃなくて、明るい話を」

「そうだな、じゃあ俺が日本にいた時の話でもするかな」

「ほんとですかっ、聞きたいです!」

「ふっふっふ、まずは俺が15歳の時の話だ。学校に行こうと思ったら車と激突してだな・・・」

「ええっ、それは明るい話じゃないのでは・・・?」


そう言いながらも笑みを浮かべるシオンを見て、俺は決意した。




この先、どんなことがあっても絶対にこの子は守ってみせる。







─────to be continued

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