第六十三話 突入作戦
「ジーク!」
「エステリーナ達か!」
シオンが連れ去られてからしばらくした頃、俺はエステリーナ達と合流した。
そして、彼女達にシオンが連れ去られたことを伝える。
「そ、そんな・・・」
「ふむふむ、それで、そのヤナギって人を見つければいいんだよね?」
「ああ、どこに行ったのかはわからんけど、見つけ出してぶん殴る」
「ふふ、ジークに殴られたら死んでしまうのではないか?」
「とにかく、協力してくれ」
俺がそう言うと、3人は頷いてくれた。
「お、おおおおお、レヴィ様!!!」
「え・・・げっ、キュラー!?」
「お会いしとうございましたぁぁぁ!!!」
「ま、待って待って!!」
号泣しながらレヴィに駆け寄ったキュラー。しかし、レヴィは俺の背後に隠れてしまった。
「貴様ァァ、ジークフリード!!私とレヴィ様の再会を邪魔するのかぁぁ!!」
「してねえよ!!」
「ご、ごめんキュラー!勝手に魔界抜け出してきたのは謝るから、連れ戻すのだけは勘弁して!!」
「俺を挟んで会話すんな!!」
とりあえずレヴィを掴んで俺の前に置く。
「ちょ、ジークのいじわる!!キュラーもこんな所まで追いかけてこなくてもいいじゃん、バカバカバカーーー!!」
「おだまり」
「レヴィ様に罵倒された・・・はぁはぁ」
「うわ気持ち悪っ!!」
凄まじいな、俺もロリコンって言われてるけどこいつには勝てない。
「って今はそれどころじゃないの!シオンが連れ去られたんでしょ?」
「む・・・」
「だからこの話は後でね」
「わ、分かりました・・・」
気持ち悪いからしゅんってすんのやめてほしい。
「それで、どこから探すんだ?」
エステリーナにそう聞かれ、俺はあることを思い出した。
「レヴィ」
「うんうん、分かってるよ」
どうやら俺が何を伝えようとしたのか把握してくれたようで。
レヴィは俺達から少し距離をとると、凄まじい魔力をその身から放った。
「なっ、なんという魔力・・・!レヴィ様、また腕を上げたのですね!!」
「まあ、ベルフェゴールにトドメさしたのレヴィだからな」
「なんと・・・、レヴィ様、キュラーは感動しております」
「なあ、マジで気持ち悪いから泣かないでくれる?」
なんてやり取りをしていると、レヴィが笑顔で駆け寄ってきた。
「シオンの居場所、わかったよ!だから褒めてー」
「はいはい、ありがとな、レヴィ」
「どういたしましてー」
頭を撫でてやると、レヴィは満足そうに笑った。それを見たキュラーの顔が凄いことになってるけど無視しよう。
「んで、どこにいた?」
「ここから北の方にある建物の地下!案内するよ」
「了解」
エステリーナ達もいるし、全力疾走は無理か。とりあえずレヴィについていこう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ここだよ」
「・・・ふむ」
数分ほど走り、俺達がたどり着いたのは病院だった。この地下に柳とシオンが・・・。
「あれ、そういえばリリスさんは?」
「怪我をしているからな。私が待機するように言っておいた」
「なるほど」
腕から結構血流れてたからなぁ。確かにあの状態のリリスさんを動かすのは危険か。
「んじゃあ、ここにいるメンバーでシオンを助けにいく。この街や、エステリーナ達からしたら未知の存在についてはまた説明するから、各自全力でシオンを探してくれ」
「了解だ」
「おし、いくぞ!!」
「「「おおっ!」」」
そして俺は病院の扉を蹴破った。そのまま勢いよく中に突入する。
「レヴィ、地下への入口は?」
「えーと、どこなんだろ」
「まあいいや、ちょっと離れてろ!」
無いなら作ればいい。
俺は床を思いっきり踏んだ。その衝撃で床が崩れ、俺は瓦礫とともに地下に落ちた。
「あははは、大胆だね」
それに続いてレヴィ達も降りてくる。
『Ytddgyt』
「早速お出ましか」
俺達の前に現れたのは、ガ〇ダム型。こんな狭いとこでレーザー乱射されたら厄介だな。
「てことで潰れとけ」
『Tydeed───』
一歩踏み込み瞬時にロボットの隣に移動。そして、側面を全力で殴った。
その衝撃でガ〇ダムは粉々に砕け散る。今回は爆発しなかった。
「悪い、先に行くぞ!」
「わかった、私達は別ルートで行く!」
「了解!」
エステリーナのそんな声を聞き、俺は駆け出した。頼む、無事でいてくれよ、シオン・・・!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「足で・・・まとい」
「そうさ、それはきっと皆が思っていたことだよ!!」
柳にそう言われ、シオンはこれまでのことを思い出した。
確かに、自分は足でまといだったかもしれない。シルフィのようにスピードがあるわけでもなく、エステリーナのように攻撃力があるわけでもない。当然ジークやレヴィにはすべての面で劣っていた。
「で、でも」
「みんな本当に君のことを仲間だと思っていたのかな?ジークフリードも迷惑だったのかとしれないよ?だって、君は弱いから」
「私は・・・」
「それに、彼はきっと思っているはずだ。君の魔眼を見て、気味が悪い・・・と」
「っ・・・!」
そんなことはないと言いたい。しかし、もしかしたらと思うと、言えなかった。
「そんな眼の女の子、誰だって恐れるさ。だって君は呪われてるんだからね」
「や、やめて・・・」
「けど、僕は君を受け入れるよ。君ほど美しく、可憐で儚い存在は他にはいない!!僕なら君の全てを受け入れられる!!」
「いや・・・」
「君は僕の全てだ」
「・・・」
ついに、シオンの目から光が消える。それを見て柳は口角を吊り上げた。
「クククククク、アハハハハハハハハハ!!!そうさ、君は僕のモノだ!!!」
柳が近くに置いてあった何かを手に取った。
「さあ、まずは君を僕のモノにする前に、その眼を頂くよ。その後のことは2人で一緒に考えていこう!!フフフフフフフフ!!!」
「・・・」
もう、全てがどうでもよくなった。そうだ、自分は呪われている。誰からも必要とされていない。ならもう生きている意味も無い。これまでのことは全て幻想だ。
「それじゃあ、我慢してね」
「・・・ジークさん」
ぽつりと、その男の名は涙とともに溢れ出した。
「呼んだか?」
「─────」
そんな声が聞こえた。
その直後、向こうの壁が吹き飛び、1人の少年が現れる。
「な、どうやってここまで・・・!!」
「まあ、普通にロボットぶっ壊しながら」
「あ、ありえない、どれだけの数を配備していたと思ってる!!」
「知らん」
現れた少年、ジークフリードは、柳と涙を流すシオンを見比べて、一言呟いた。
「殺す」




