第六話 不幸少年、ギルドを訪れる
ブクマありがとうございます
「ふふ、来たわね」
「ごめんなさい」
「え、何が?」
ギルドに着き、そのままギルド長室に入った俺はまず頭を下げた。
てっきりギルド長はゴリゴリのおっさんだと思って少々会うのがだるかったのだが、実際会ってみるとギルド長超美人。
「・・・えーと、初めまして。ここのギルド長をさせてもらってるリリスと申します」
「初めまして、ジークフリードです」
「・・・シオンです」
とりあえず挨拶した。やべえ、美人過ぎてほんとびっくりした。
「・・・ジークさん、デレデレし過ぎ」
「へ!?」
「顔に出てます」
まじかー!いやだって、ギルド長あんなに美人だと思わないじゃないか。そりゃちょっとはデレデレするって。
「ちなみに20歳でーす」
「な、なんとッ!!」
若いっ、若いぞギルド長!
と、シオンの俺を見る目がどんどん冷めてきているので一旦落ち着こう。
「コホンッ、それで、何の用で?」
「別に、大した用じゃないんだけどね」
そう言うと緩いウェーブのかかった長い桃色の髪を揺らしながらギルド長は立ち上がり、俺の前に立った。意外と背が小さいな・・・。
「ふーん、結構筋肉はあるのねぇ・・・」
「えっ、ちょ・・・」
突然俺の胸筋をプニプニし始めたギルド長を見てシオンが慌てる。
「あらあら、どうしたのかしらん?」
「い、いや、その・・・」
「うふふ、可愛いわねー」
顔が真っ赤になっているシオンを見てにっこり笑うギルド長。まだ俺の胸筋をプニプニしている。
「あのー、何が目的で?」
「いやー、エステリーナから君がサソリメタルを素手で討伐したって話を聞いて、どんな子なのかと思って」
ああ、そういうことか。
「それともう一つ、あなたたち、ギルドに入らない?」
「ギルドに・・・?」
ふむ、それはいいかもしれない。
これから王都で暮らしていくつもりだが、毎日何もせずに家でぐーたらするよりかは仕事をしたいし。
それにいつか金も無くなるしな。
「実は最近ギルドに所属する人が減っていてな。十二魔神の出現で魔物が活発化しているからわざわざ危険な場所に行きたくないんだろう」
背後にいるエステリーナがそう言った。確かに、あんなサソリみたいなやつと遭遇したらそのへんの人達じゃすぐ死んじまうしな。
とりあえず確認の意味を込めてシオンの方を見た。何故か少し頬が赤い彼女は俺と目が合うとこくこくと頷いてふいっと目を逸らした。
・・・よく分からんが、今の頷きはいいという意味だろう。
「分かりました。それじゃ、ギルドに所属させてもらいます」
「ふふ、ありがとう」
ギルド長が紙とペンを差し出してきた。どうやらこれに名前などを書き込むようだ。
「・・・ねえ、ジークフリード君」
「ジークでいいですよ」
「それじゃ、ジーク君。君、とんでもなく強いね」
書類に名前を書いていると、ギルド長にそう言われた。
「・・・まあ、それなりには」
「ううん、それなりにはどころじゃない。私には分かるわ」
「・・・」
すごいな、この人は。見ただけで俺の強さを見抜くとは。固有スキルでもあるんだろうか。
・・・ちょっと覗いてみるか。
そう思って俺はギルド長をガン見した。ついでにギルド長の隣に立つエステリーナの情報も手に入れておこう。
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~ギルド長リリス~
★ステータス★
レベル:250
生命:5000
体力:2000
筋力:1700
耐久:1280
魔力:6800
魔攻:5420
魔防:1800
器用:500
敏捷:2910
精神:600
幸運:500
★固有スキル★
・闇霊の加護
闇属性魔攻魔防上昇効果
★装備★
摩天のローブ
摩天のブーツ
精霊の指輪改
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~エステリーナ・ロンド~
★ステータス★
レベル:68
生命:800
体力:1200
筋力:1000
耐久:1000
魔力:560
魔攻:400
魔防:380
器用:56
敏捷:1350
精神:400
幸運:80
★固有スキル★
・火属性耐性
火属性魔法によるダメージ半減
・炎剣士
火属性魔法を剣に付与することが可能
★装備★
魔剣イグニート
炎鎚の鎧
炎鎚の篭手
炎鎚のブーツ
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え、まって。ギルド長普通にアルターより強いよねこれ。
エステリーナもまあまあ強いけど、ギルド長強すぎ。まあ、それよりも遥かに俺のステータスの方がおかしいんだが。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないです」
ガン見し過ぎた。俺は書類に視線を戻し、必要な情報を書き込んでいった。
そして俺が書き終わったタイミングでシオンも書き終わったようだ。同時に顔を上げる。
「んー、はい。二人共おっけーよ。今日からギルドの一員ね」
そう言って渡されたのは、カードのようなもの。カードには俺の名前が書かれている。
シオンも同じものを受け取っていた。
「ギルドで仕事を受ける時にはそのギルドカードを受付で渡すこと。いい?」
「分かりました」
「ふふ、それじゃ、今日はありがとう」
「はい、それでは」
そう言って俺とシオンはギルド長室を出た。
「んー、気になるわねぇ」
「・・・?何がですか」
「ジーク君、多分私より強いわよ」
「なっ・・・!」
そんな馬鹿な、とエステリーナは思った。ギルド長リリスは、この国で最も強い魔導師と言われている。そんな彼女よりも強いとは、一体何者だ、あの少年は。
「まあ、これからはギルドの一員だし、仲良くやっていきましょ」
「・・・そうですね」
ニコニコしながらそう言ったギルド長。
ジークフリード・・・か。
エステリーナは先程部屋を出ていった少年の姿を思い浮かべた。