第五十九話 変態吸血鬼
「・・・なんでここにいるんですか」
「まあまあ、細かいことは気にしないの」
しばらく街を調査していると、何故かピンク色の長い髪の女の人と出会った。
「あら、エステリーナ達はいないの?」
「そんなことよりリリスさん、何故ここにいるのですか」
「まあ、シオンたんまで・・・」
「たん・・・?」
現れたのは、ギルド長のリリスさん。
ということは・・・だ。
「シオン」
「はい?」
「この人がいるってことは、ここは日本じゃなくて、シオン達の住むフォルティーナだ。この街だけがこっちに飛ばされてきたんだろう」
「そのようですね」
「なによぅ、2人でこそこそ話しちゃって」
リリスさんには聞かれないようにシオンに耳打ちした。
「で、なんでリリスさんはここに?」
「あーもうしつこいわね。古代都市ってのがどんな場所なのか気になったからよ」
「まあ、古代都市ではないですけど・・・」
「というか、さっきも言ったけど、エステリーナ達は?」
「はぐれました」
いや、どうなんだろ。はぐれたって言い方はおかしいか?
「それにしても、不思議な場所ね。見たことない建物とか、魔物とかいっぱいいるし」
「いや、魔物というか、なんというか・・・」
「あ、ほら、来たわよ」
『Gydtj』
ほんとだ、ウォーリーみたいなやつが・・・めっちゃ来た。
ひぃふぅみぃ・・・10ぐらいか。
「雷槍」
『Rrdjuu』
そんなロボット達にリリスさんが魔法を放つ。
『Egg.ietdttuuu/egd』
「あら?なんだか元気になったみたいね」
どうやらロボット達はリリスさんの放った電気を取り込んだらしい。
「Gtrrrrrrr」
「おっと」
「きゃっ!」
ロボット達が一斉に銃弾を撃ってきた。しかし俺には効かない。
咄嗟にシオンを背後に避難させた。
「ちょ、私も守ってほしいなぁー」
「リリスさんレベルだったらこのぐらい簡単に対処出来るでしょ」
「まあねー。とりあえずうざいから処理は頼んだ少年」
「お任せあれ」
数秒後、ロボット達は鉄くずになった。
「まじでなんなんだこいつら」
「ちっ、何故今ので死なない」
「なにレギュラー風に隣に立ってんだてめえ」
気がつけば、隣にさっきぶっ飛ばしたはずのキュラーが立ってた。気持ち悪いんだけど。
「お前もなんなんだよ青白」
「ククッ、いいだろう。特別に教えてやる」
そう言ってキュラーは俺から離れ、なんかよくわからんポーズをとった。
「我が名はキュラー、吸血鬼だ!!レヴィ様を愛する、魔界幼女同好会会長を務めている!!」
「・・・」
なるほど、ただの変態か。
ほらー、シオンが見たことない表情になってるじゃないか。
「我々にとってレヴィ様は神に等しい存在ッ・・・!!」
「実際魔神だけどな」
「あの美しい身体は、誰にも穢されてはならんのだ!!」
「とか言ってちょっと下心あるんだろ?」
「少しはある」
あるんかい。
「はぁ、なんで集まってくる男共はこんな変態ばっかなんだろう」
「ジーク、あんたも十分ロリコンで変態よ」
うるせえよ!!肩に手置いて微笑んでんじゃねえ!!
「てかよ、今はお前に構ってる場合じゃないんだよ。ここがどういう場所なのかを知らなきゃならんし、そこで粉々になってバチバチいってるやつらのことも調べなければならねえ」
「ふん、知ったことか」
「めんどくせえな、殺すぞてめえ」
「やってみろロリコンがッ!!」
「それはお前だろ!?」
突然キュラーが飛びかかってきた。もう知らん、レヴィの部下らしいけど、まじでぶっ飛ばしてやる。そう思って俺は拳を握りしめたのだが・・・。
「《山崩しの暴風》」
「ぬぐっ!?」
「《薙の雷》」
「ぐぅがぁぁぁ!?」
シオンとリリスさんが放った魔法を受けて、キュラーはまっ黒焦げになった。
「いい加減にしなさいよー、この青白変態ロリコンゴミ野郎が。もうあんたの出番は終わったのよ、とっとと帰れ」
「ひぃっ!?」
「ジークさんが困っています。これ以上ジークさんに迷惑をおかけするのなら、容赦はしません」
「ぬぐぐ・・・!!」
うわー、怖い。なんかリリスさん目がマジだもん。
こういうグダグダするのが嫌いなんだろうな。
「くそぅ、死ぬ前にもう一度だけ、レヴィ様の姿を拝見したかった・・・っ!!」
「俺さっきまでレヴィと一緒にいたんだけど」
「なにぃ!?」
なんなのこいつ、反応がいちいちうるさい。
「今からお前が暴れたりうるさくしないんなら、後で会わせてやることも出来るんだが」
「よし、今日から私達は親友だ!!」
「うるせえ気持ち悪い!!なに肩組んできてんだお前!!」
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「おい、ジークフリード」
「あ?」
「これはなんだ?」
そう言ってキュラーが指さしていたのは、車。
シオンもリリスさんも気になっていたようで、全員の視線が俺に集まる。
「あー、それは車っていう乗り物だ。馬車より速い」
「馬車より!?」
そこでシオンが驚いた。
「い、一体どんな動物を・・・?」
「いや、動物じゃない。まあ、俺も構造をちゃんと知ってるわけじゃないし、これはフォルティーナじゃ多分造れないし使えないと思う」
「そうですか・・・」
それでもまだ気になるようで、シオンは車をぺたぺた触り始めた。なんか癒されるものがあるな。
「ほんと、不思議な場所ね」
「そうですね」
「ところで、ジーク君。なんでそんなにこの場所について詳しいのかしら?」
しまった!!
俺が異世界出身だということはまだシオンにしか言ってなかったんだった!!
「いや、あのですね・・・」
「んー?」
「ぐっ、わかった、言いますから、顔近いですって!!」
「よろしい」
これ以上言わなかったら殺される気がしたので、俺はリリスさんにも俺の秘密を伝えた。
「あらまぁ、君も大変ねぇ」
「ほんと、大変ですよ・・・」
話し終えたら、リリスさんはケラケラ笑った。
「それ、エステリーナ達には言わないの?」
「んー、まあ、いつかは話すかもしれませんね」
「そう」
薄く微笑むと、リリスさんは近くに倒れていた自転車のもとに歩いていった。なんだかんだいっていろいろ気になるものはあるようだ。
「おい、ジークフリード」
「なんだよ」
「あれはなんだ?」
突然キュラーが俺の背後を指さしたので、俺は振り返った。
『Eyyhfe、対象確認』
なんか、小型版ガ〇ダムみたいなのがいる。しかも今日本語が聞こえたような・・・。
『対象4名確認、tuOTE2、排除シマス』
「いっ!?」
日本語喋ってる!!
「おいジークフリード、あれはなんだと言って─────」
そこで言葉を切り、キュラーが跳んだ。その真下をレーザーが通っていく。
「なるほど、敵のようだな」
「ああ」
よくわからんけど、やってくるならやり返そう。




