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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
破壊と停滞〜王都挟撃〜
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第五十二話 大人な子供

「・・・」

「んふふふー」

「あのー、レヴィさん」

「なぁに?」

「今、俺達が居るのが何処なのか、分かってます?」

「お城ー」

「分かってんのかよ!なら抱きついてくんな!」


と、ツッコミを入れて恐る恐る顔を上げると、厳つい老人が、玉座に座って俺達を見ていた。

やばい、汗が止まらん。


「も、申し訳ございません!後で叱っておきまひゅ・・・」

「エステリーナ・・・」


緊張しているのはみんな同じのようで、あのエステリーナが噛んだ。

可哀想に。顔を真っ赤にして涙目になっちゃってる。


シオンなんか傍から見たら無表情な子だけど、緊張しすぎてもう誰の声も届いていない。

シルフィもガチガチだ。


そんな中、抱きついてくるこのアホ魔神は、ある意味尊敬出来る。


「えー、そろそろいいかな?」

「も、勿論であります!!」


口を開いた老人は、ローレリア王国国王(・・)

そう、現在俺達は王城を訪れていた。


な、何を言われるんだ・・・?とりあえずこのアホ魔神はあとで躾ときますから、怒らないで─────


「お疲れ様じゃあああああ!!!」

「ッ!?」

「わーっはっは、なーにを緊張しておるのだ。力を抜いて楽にするがいい」

「え、え・・・?」

「皆の者、ご苦労であった!特にそこの少年は、魔神を倒したそうだな!」


え、まじか。

めっちゃ厳ついのになんだこのノリは。


「は、はい」

「もうワシ、君に領土あげたいぐらいじゃ。本当によくやってくれた!」


立ち上がって俺の肩をバシバシ叩く国王。友達かい。


「王国騎士団も、本当にご苦労じゃったな。あの帝国軍を退却させるとは」

「その件ですが、我々が帝国を押し返すことが出来たのも、そこにいる少年のおかげです」


王国騎士団団長だというロキという人がそう言うと、国王はものすごい笑顔でまた俺の肩を叩き始めた。


「君が今日から国王じゃ!」

「えっ!?」

「わっはっは、嘘じゃ!」


なんなんだこのじいさんは!!


「今回の英雄は、間違いなく君じゃ。胸を張るといい」

「あ・・・はいっ」

「さあ皆の者、今日は最大の驚異から王都を守り抜いた貴殿らの活躍を称え、宴じゃあ!!!」

「「「おおおおお!!!」」」


まって、このノリは何なの?


「いつものことよ」


後ろに立ってるリリスさんがそう言った。

はー、とんでもない国王様だな、ありゃ。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「レヴィさん、ご主人様から離れましょう。料理が食べづらいとご主人様が困っています」

「えー、ここはボクの特等席なんだよ」

「関係ありませんから。さあ、離れて」

「むふふー、《嫉妬》してるのー?」

「うぐっ・・・」


あのー、さっきからレヴィが俺の背中にくっついて離れてくれないんですけど。

シルフィの言う通り非常に食べづらいんですけど。


「レヴィ、降りてくれ」

「まって、あと1分」

「はい俺の中では1分経過しましたー。さあ降りなさい」

「えー」


さて、レヴィが離れてくれたからあっちにあるでかい肉でも食べに行こう。







「あ、ジーク・・・」

「エステリーナか」


向こうのテーブルに移動したら、エステリーナが骨付き肉食べてた。


「今日はお疲れだったなぁ」

「ああ、まさか魔神が同時に現れるとは。けど、ジークが両方倒したのだろう?」

「まあ、ベルフェゴールに止めさしたのはレヴィだけど」

「レベルが50も上がったよぉ」

「・・・いつの間に抱きついてたんだお前」


気がついたらレヴィが後ろから抱きついてきていた。そんなところで存在感消してくんじゃねえ。


「てか、レベルがなんぼ上がったって?」

「50!」

「・・・」

「・・・」


俺とエステリーナは黙り込んでしまった。魔神を倒したんだから、確かにレベルは上がるはずだ。

けど、こいつも魔神である。


「これでまた強くなったよ!」

「ソウデスネー」


レベルが俺にかなり近づいた。つまりステータスも上昇している。・・・ということはだ。


こいつがかまって欲しさに飛びついてきたりしたら、俺は結構ダメージを受けることになる可能性が・・・。


「・・・はぁ」


まあいいか。こいつも今回は頑張ってくれたしな。


「あ、そうだ。エステリーナ、怪我は大丈夫なのか?」

「ん?怪我なんてしてないが・・・」

「膝擦りむいてたろ?」

「あ・・・」


思い出したかのようにエステリーナが膝を見た。


「あ、後で消毒しようと思ってたんだぞ?」

「ったく、この世界には便利な回復魔法ってもんがあるんだから、ちゃんと癒しとけって」


日本の医療技術も素晴らしいものだったが、やはりこっちの世界の回復魔法は素晴らしい。


「綺麗な足なんだからな」

「ぅ・・・」

「む・・・?」


何故そこで赤くなる。しかもなんかレヴィがニヤニヤしてやがる。


「あ、あの、ジーク・・・」

「ん?」

「その、今日はありがとう。助けに来てくれた時・・・カッコ良かった」

「お、おう・・・」


普段は凛としているエステリーナに、モジモジしながらそんなことを言われると、ねえ?


男としては、たまらんよね。


「むー、デレデレしてる」

「うむ、これがギャップ萌えというやつか」

「じゃあボクも!おいこらジークてめえ、今日もいつも通りカッコ良かったぞこの野郎!」

「いや、それは萌えないから・・・」







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「あー食った食ったぁ」

「美味しかったねぇ」


あの後、俺は外の空気を吸うためにテラス的な場所に向かった。

当然のごとくレヴィもついてきた。


ちなみに現在午後八時。

太陽は沈み、代わりに真ん丸な月が空に浮かんでいる。


「あたた・・・」

「大丈夫か?無理すんなよ」

「あはは、平気平気」


お腹を押さえて一瞬だけ顔を歪めたレヴィ。どうやら腹を痛めているようだ。


「ったく、なんで平気な振りしてんだよおめーは」

「大丈夫!ほんとに痛くないぃっ!?」


また痛そうな顔した。それでもこの馬鹿は無理やり笑顔を作ろうとする。


「・・・はぁ」

「えっ、ジーク?」

「いたいのいたいのとんでけー。どうだ、まだ痛いか?」

「・・・」


なんとなく日本でよくやった痛いとこをさすれば痛くなくなるあれをやってみたんだが、何故顔を赤らめるのだ。


「あ、すまん、別に下心で触ったわけじゃないんだぞ?」


そういうことなのか?いつも抱きついたりしてくるからそのぐらいならOKなのかと・・・。


いや、傍からみたら俺はロリっ子に手を出す変態か。


「・・・レヴィさん?」

「・・・ふふ、ありがと、もう痛くないよ」

「いや、それで治ったら回復魔法いらないよねって話なんだが・・・」


それでも嬉しそうな表情で微笑むレヴィ。

・・・なんだろう、なんかドキドキする。


「そうだ、なんでベルフェゴールが来た時に俺を起こさなかったんだ?」

「なんでって、そりゃあジークに怪我して欲しくなかったからだよ」

「何言ってんだ。俺はこの耐久力があるから・・・」

「それでも。好きな人に怪我なんてして欲しくないでしょ?」

「むぐっ・・・」


そうだ、俺こいつに告白されてたんだ・・・。結局返事返したりしてないけど、どう思ってんだろ。


「ジークは、誰が好きなの?」

「えっ!?」


急にそんなことを言うんじゃない!!しかもなんか小悪魔っぽい表情を浮かべてやがる。


「べ、別に好きな人とかはいないんだが・・・」

「なら─────」


突然抱きつかれた。そして地面に押し倒される。


「ボクはまだジークのことを好きでいてもいいよね?」

「れ、レヴィ・・・」


いつもとは違う表情で俺を見下ろすレヴィ。向こうから声が聞こえてくる。どうやらパーティーが盛り上がっているようだ。


しかし、そんなことはどうでもいい。俺の心臓はかつてないほど暴れていた。


「そ、その・・・」

「・・・」


なんだか、本当に大人に押し倒されているような気がする。


「レヴィさん・・・?」

「もうだめ、我慢の限界」

「は──────」


突然俺の唇に柔らかいものが触れた。


状況を理解するのに数秒の時間を要した。目を見開けば、逆に目を閉じたレヴィの顔がすぐそこに。


「ッ~~~~~~」


まさかの接吻。

しかもレヴィは中々俺から離れない。エステリーナの時とは比べ物にならないぐらい長く、見た目がロリっ子のレヴィからは考えられないような濃厚なキス。


「ぬぐあああああ!?」


しばらくして、ようやくレヴィが俺から離れた。


「ふふ、顔真っ赤だよ」

「っ、当たり前だ!!」


よく見れば、なんだかレヴィがとても色っぽく見える。お前のキャラは天真爛漫なロリっ子だろ!?


「改めて言うね、ジーク。ボクは君の事が好き、大好き」

「れ、レヴィ・・・」


おいおいおい、頭がパンクしそう・・・。


「ベルフェゴールに負けた時、真っ先にジークが来てくれて、本当に嬉しかった。心配してくれてるんだなって、思えたから」


あ、やばい。


「そんなジークを、ボクは誰にも渡したくない」

「・・・」

「だから、ボク────どうしたの?」


静まれ右手ええええええええ!!!


危なかった、無意識にレヴィの肩に手置いてた。

今正気を取り戻さなかったら、何してたか分かんなかった・・・。


そうなってしまうほど、今のレヴィは魅力的なのだ。


「んー、もう!よく分かんないけど!」

「は────」

「つまり誰にも渡したくないぐらい愛してるってことっ!!」

「どわっ!?」


また抱きつかれた。地味に痛い。

まったく、このアホ魔神は──────


「──────げ」

「・・・」


やばい。向こうでシオン達がこっち見てる。


「れ、レヴィさん、少し離れてもらってもいいですかね?」

「照れてるのー?」

「照れてるけども!それよりも、後ろ、後ろ!!」

「んー?」


そしてゆっくりと振り返ったレヴィの肩が面白いぐらい跳ね上がった。


「・・・何をしているんですか」

「い、いつからいたの!?」

「・・・少し前からです」

「オワタ」


いつもはヘラヘラ笑ってやり過ごすレヴィも、今回は顔が真っ赤になってるし、完全に固まってしまっている。


ふう、とりあえず1回落ち着こう。


「みんな、これは違うんだ」

「ジークさん、少しお話があります」

「ご主人様、私からも」

「れ、レヴィ、一旦ジークから離れた方がいいぞ・・・」

「べっ、別に、何も、変なことはしてないんだよ!?」






この後、何分間も質問攻めされたということは言うまでもない。








─────to be continued

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