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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
破壊と停滞〜王都挟撃〜
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第五十話 怠惰の領域

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「《魔女の心臓(ハートオブウィッチ)》はどこだ?」


ベルフェゴールがそう言ったのを聞き、シオンとシルフィは目を見開いた。

そんなもの、見たことも聞いたこともない。


「あらあら、物騒な名前ね〜」

「場所を教えろ。そうすれば命だけは見逃してやる」


そう言われても、リリスは笑みを浮かべ続ける。


「何処だと思う?」

「さあ、分からないから聞いてるんだけど」

「なーんだ、そんなものも分からないのね。魔神といってもそんなものか」

「・・・へぇ」


ベルフェゴールの体から魔力が溢れ出す。


「なら、拷問して聞き出すとしよう」

「ふふふふ、後ろ」

「む─────」


次の瞬間、ベルフェゴールは勢いよく吹っ飛び、壁を突き破って外に飛び出した。


「あらま、油断したなぁ」


中を見れば魔法を唱えた後のシオンが立っていた。


「はあっ!!」

「おっと」


その直後、ベルフェゴールの背後からシルフィが斬りかかったが、彼女の筋力ではベルフェゴールの耐久を上回ることは出来ず、あっさりと受け止められた。


「なかなかやるね」

「くっ・・・!」

「それじゃ、サクッと────」


そう言って動こうとしたベルフェゴールを雷が襲う。


「あまり暴れないでほしいんだけど」

「はは、それは無理だ」


振り返ればリリスがにっこりと笑っている。彼女が魔法を唱えたのだろう。

しかし、こんなものではベルフェゴールを止めることなど出来ない。


「3対1とか、ずるくない?」

「アンタ相手に手加減なんてしたら全滅確定じゃないの」

「よく分かってるねー」


ベルフェゴールが手を挙げた。それを見た3人は一斉に動き出す。


「《幻糸展開げんしてんかい》!!」


まず、シルフィが放った糸がベルフェゴールの動きを一瞬止める。


「《山崩しの暴風(タイラントストーム)》!!」


そこにシオンが上位魔法を放った。


「《薙の雷(なぎのいかずち)》」


さらにリリスの魔法も合わさり、竜巻は爆発した。


「・・・クク」

「っ・・・!」


しかし、煙の中から現れたベルフェゴールは無傷だった。


「あーもう、笑っちゃうよね。無駄だと分かっていながらそうやって無駄な足掻きを何度も何度も・・・」


そう言ってベルフェゴールはある魔法を発動した。


「まあいいや。ちょっと今から楽しませてもらおうかな」

「何を────」


次の瞬間、広範囲に向けてベルフェゴールの魔力が放たれた。


「くっ!?」


咄嗟にシルフィは後ろに下がろうとしたが、あることに気づく。


「な、え・・・?」


身体がまともに動かない。動かそうとしているのだが、とてつもなく遅く動く。


ゆっくり、ゆっくりと足が地面につく。


「ふ、ふふふふふふふ・・・」


それを見たベルフェゴールが不気味に笑う。


「これが、俺の魔法だ」


まるで、時間の感覚がおかしくなってしまったかのようだ。ベルフェゴールの周りのものが全て遅くなった。


シオンも、シルフィも、リリスも。

空を飛ぶ鳥も、爆発跡から立ちのぼる煙も。

ベルフェゴールを中心としてあらゆるものの動きが遅くなる。


「俺は動くのが嫌いだ。なのに敵はバンバン動くじゃん?だから全部遅くしてやればいいって魔法さ」

「め、滅茶苦茶だ・・・」


シオンは震えた。つまり、その魔法が発動している間、自分達はこのスピードでしか動けないのだから。


「《停滞せし怠惰の領域(アケディアゾーン)》、もう君達に勝ち目は無い」


そう言ってベルフェゴールが顔を向けたのは、シオンだった。


「さて、そこにいる女二人を殺せば、《魔女の心臓(ウィッチオブハート)》の場所、教えてくれるかな?」


周囲から隔離された怠惰の空間を、ゆっくりと歩くベルフェゴール。それから逃げようとしても、シオンの体は動かない。


「じゃあまずは君から─────」


そこでベルフェゴールは振り返った。


「まったく、面倒な子ねぇ・・・」

「・・・!」


何故なら、リリスが普通に動いていたから。ガシガシと頭を掻いている。ただそれだけのことなのだが、ベルフェゴールは目を見開いた。


「・・・何故、普通に動いている」

「・・・なんでだと思う?」


そう言って微笑むリリス。それを見たシオンとシルフィは背筋が凍った。

リリスは、いつも通り笑みを浮かべているだけ。なのに、言いしれぬ恐怖が彼女達を襲った。


「・・・まあいい、君が動こうが、結果は変わらないし」


そして再びシオンのほうにベルフェゴールは顔を向ける。


「恨むなら、あの女を恨んでね」

「・・・」

「?何その目」


シオンは、ベルフェゴールを睨んでいた。


「絶望する人間の目じゃないなぁ。これから死ぬってこと、分かってる?」

「いいえ、分かっていません」

「・・・あ?」


ベルフェゴールの動きが止まった。


「何故なら、この街にはヒーローが居るからです」

「何を言って──────」


次の瞬間、ベルフェゴールは咄嗟に魔法障壁を展開した。しかし、障壁は跡形も無く砕け散り、ベルフェゴールは勢いよく吹っ飛ぶ。


「ッ───────」


何が起こったのか理解出来ずにベルフェゴールは顔を上げた。


「ふう、何とか間に合ったか」

「・・・誰だお前は」


現れた少年をベルフェゴールは睨みつける。


「俺はジークフリード、魔神ベルフェゴールだな?ぶっ飛ばしに来たぜ」


そう言ってジークはニヤリと笑った。

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