第四話 不幸少年、王都を目指す
「へいへいへーい、可愛らしい彼女連れてどこ行くのぉ?」
「ちょっと待ちなよぉ!」
「・・・はあ、ついてない」
現在俺とシオンは王都に向かって森の中を歩いている。その途中、よく分からん3人組に絡まれた。今何時だと思ってんだこいつらは。シオンが持ってた時計を見ればもう22時だぞ。
シオンが眠そうだったからそろそろ安全そうなとこを見つけて寝ようとしてたのに・・・。
「お嬢ちゃーん、そんなやつより俺達とイイことしない?」
「・・・結構です」
まるでゴミを見るかのような瞳でシオンはそう言った。しかしそう言われて何故か逆に男達は興奮している。
なるほど、Mか。
「いやー、いいねぇ。そういう子好きだぜぇ」
そう言って男がシオンに迫る。いよいよ彼女がとても困ったような表情で俺に助けを求めてきたので俺は男とシオンの間に立った。
「・・・殺すぞガキ」
「うん、やってみろよ」
俺がそう言うと、目の前の男はキレて手に持っていた木の棒を勢いよく俺の頭に振り下ろした。それを見たシオンが目を瞑る。
バキィィィィ!!
「・・・へ?」
俺に直撃した瞬間、木の棒は粉々に砕け散った。
なんか怖いな、俺無傷だもん。
「このガキッ!!」
別の男が俺の顔面を殴る。が、当然向こうが叫びながら痛がった。
「ば、化け物だぁ!!」
「ひぃぃぃ!!」
そう言って3人組は逃げていった。いや、酷いな。化け物言うなよ。
「シオン、無事・・・だな」
「は、はい。ジークさんこそ・・・」
「いや、俺魔神のパンチ効かないから心配ないって」
「そうですね」
よし、今度こそ寝る。実は3人組に絡まれながらもちょっと向こうに寝やすそうなところを見つけたのだ。
今夜はそこで寝るとしよう。
◇ ◇ ◇
次の日、俺達は王都目指して再び歩き出した。この調子なら明日には到着するだろう。そんなことを思っていると。
「・・・戦闘音?」
遠くから何かが聞こえる。なんだろう、気になる。
「私は何も聞こえませんけど・・・」
「うーん、ちょっと気になるなぁ」
「行ってみます?」
「行ってみよう」
よし、音が聞こえる方に行くぞ。
「うわあああ!!」
「駄目だ、武器が効かない!」
なんだこりゃ、どういう状況だ?
音が鳴る方に来てみると、男の人達が巨大なサソリみたいなやつと戦っていた。
どうやらサソリの体はかなり硬いらしく、剣が弾かれている。
「臆するな!必ず弱点はある!!」
「そうは言ってもよぅ、まじで効かないんだって!」
「むむ・・・」
綺麗な赤髪を首の辺りで束ねた少女が悔しそうに唇を噛んでいるのが見えた。
なんだあの子、えらい美人さんだが・・・。
「・・・」
「ん?どうした・・・」
俺を見るシオンがちょっと不機嫌に見えた。ああ、あれか。加勢に行かないからか。
「そうだな、ちょっと助けてやるかぁ」
「え、いや、そういうわけじゃ・・・」
シオンが何かを言ってるが、俺はサソリに向かって駆け出した。
「なっ、誰だお前は!」
「いやー、なんか苦戦してるっぽかったからちょっと助太刀に参りました」
俺がそう言うと赤髪の少女は目を見開いた。
「武器も持たずにあいつとどう戦うつもりだ!」
「え、素手だけど・・・」
「馬鹿かお前は!」
怒鳴る少女。いや、馬鹿じゃないし。
「あいつは鉄の剣さえも弾く体の持ち主、お前程度が素手で太刀打ちできるわけがないだろう!」
「いや、どうかな?」
じゃあ見てろよ、俺のパンチ。
俺はニヤリと笑い、勢いよく跳躍した。そしてサソリの背中に着地する。
「なっ、速い!」
「そおら、お前も暴れんな!!」
そして俺はサソリの背中を思いっきり殴った。衝撃で地面が砕け、サソリの背中が陥没する。
そして破裂した。
きったねぇ!なんかよくわからん汁が服についた!
「な・・・」
そんな光景を見て赤髪の少女は口をパクパクさせている。他の男達も同じような感じで俺を見ていた。
◇ ◇ ◇
「・・・すまない、助かった」
「いや、当然のことをしたまでだ」
俺に向かって頭を下げる赤髪の少女。
「私はエステリーナ。王都にあるギルドに所属する者だ」
「俺はジークフリード、ジークって呼んでくれ。んで、こっちがシオン。それで、なんでサソリと戦ってたんだ?」
「ああ、依頼でさっきのサソリを討伐しに来ていたんだ」
なるほど、ギルドねぇ・・・。
「私達はこれから王都に戻るけど、お前達は?」
「俺達も王都を目指してんだよ」
「そうか、なら私達が乗ってきた馬車に乗るか?」
「まじでッ!?」
なんてありがたいんだ。こりゃ俺の固有スキルも効果を発揮してないな。
「それじゃ、乗せてもらうよ。いいよな、シオン」
「はい」
「てことでよろしく、エステリーナ」
「ああ、よろしく」
とりあえずエステリーナと握手した。そして馬車に乗り込もうとした時。
「ヒヒィィィン!!」
「へ──────」
何故か暴れだした馬に勢いよく踏まれ、俺の顔面は地面にめり込んだ。
「なっ、なななな!大丈夫か!?」
「ああ、大丈夫だ」
馬をどかして立ち上がり、慌てるエステリーナを落ち着かせる。
今ので服が汚れてしまった。
「まったく、ついてないな」
そう言って俺はため息をついた。俺の固有スキルはやっぱり常に効果を発揮しているようだ。