第四十話 一緒に寝てほしい・・・です
「それで、なんで魔神はどっかいったんだ?」
魔物達を全滅させたあと、俺はレヴィにそう聞いた。
「分かんない」
「ふむ・・・」
あれからレヴィは魔力サーチを何回か行っているが、先程出現したであろう魔神の魔力は掛からないらしい。
「うーん、何だかさっき感じ取った魔力が魔神のものだったのか心配になってきたよ」
「まじか・・・って、そういえば、どんな魔神の魔力を感じ取ったんだ?」
「あ、言ってなかったね」
それは、アルターレベルの魔神なのか、レヴィと同じ《七つの大罪》レベルの魔神なのか・・・。
「さっき感じたのは、《七つの大罪》の憤怒を司る魔神サタンの魔力だよ」
「へえ、そりゃすご・・・ってまじか!?」
七つの大罪レベルかよ!
アルターレベルじゃないのかよ!
「でも、おかしいんだよ」
「なにが?」
「あのね、サタンはとっても大きな魔神なの。王都を囲んでる壁よりも遥かにね」
「なん・・・だと?」
それは、デカすぎませんか?
「そんな魔神が、一瞬で姿を消すことなんて不可能なはずなんだけどなぁ・・・」
「確かに・・・」
実はそいつ忍者じゃないのか?
・・・いや、無理がありますね、はい。
「まあ、よく分かんないけど、とりあえず戻ろっか」
「そうだな、イツキさんとリリスさんに報告したい」
ということで、俺とレヴィは王都に戻ることにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「大罪レベルがもう一人・・・か」
王都に戻った俺は、まずギルドにいたイツキさんに先程判明したことを報告した。
そして三人で俺の家に向かい、他のメンバーにもそのことを伝えた。
「あらまぁ、王国史上最大の危機じゃない?」
そう言ったのはリリスさん。
柿ピーみたいなやつをもぐもぐ食べている彼女は、なんとも緊張感がない。
「ふむ、独自に動き始めたのは七つの大罪の一人だということが分かったが、問題は帝国と手を組んだのが普通の魔神か、それとも七つの大罪か・・・ということだな」
エステリーナが腕を組みながらそう言う。
確かに、七つの大罪2人を相手にするのは王国もキツいだろう。
「王国軍に報告してから、国境付近ではいつでも帝国を迎え撃てるように準備を整え始めたそうだ」
イツキさんがそう言う。
「しかし、独自に動き始めた魔神の動きまではさすがに把握出来んぞ」
「そうですね、どうしたもんか・・・」
帝国側と、独自側の同時攻撃とかも有り得るしなぁ。
「まあ、とりあえず私達はいつも通り普通に暮らしてればいいのよ。それで、敵が来たのなら遠慮なく叩き潰せばいいんだし」
欠伸をしながらそう言うリリスさん。
こう見えてこの人、魔神アルターよりレベル高いからね?
「そうですね、私達は軍人ではありませんし・・・」
シオンは少しほっとしているようだ。
俺達も今から魔神退治に行くぞー!みたいな感じにならなくてよかった。
「それじゃ、とりあえずこの話は終わりにしますか」
「それでは昼食にいたしましょう」
そう言ってシルフィは台所に向かった。
手伝うためにシオンもあとに続く。
これから何が起こるのかは分からないけど、いつも通り、のんびり過ごすとしよう。
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その日の晩、俺はふと目を覚まし、起き上がった。
なんか暑いんだけど・・・ああ、そういうことか。
俺の隣ではレヴィが寝ていた。
そりゃ暑いわ、引っ付きすぎだ。
「ったく・・・」
喉乾いたな・・・。
水でも飲みに行くかぁ・・・。
「・・・ん?」
その後、台所で水を飲んでいると、外から物音が聞こえた。
こんな時間に誰かいんのか?
「ふむ」
気になるな。
ちょっと確認してみるか・・・。
「・・・あ、ジークさん」
「なんだ、シオンか」
外にいたのはシオンだった。
可愛らしいパジャマに身を包んだ彼女は俺に気付くと微笑んだ。
「何してんだ?」
「その、眠れなくて・・・」
「・・・魔神のことか?」
「・・・はい」
なるほどなぁ、つまりシオンは怖いんだろう。
いつ帝国や魔神が攻めてきてもおかしくはない。
今、突然魔神が現れる可能性もあるのだ。
「・・・レヴィさんはとてもいい人です。でも、やっぱり他の魔神達は、アルターのような魔神ばかりなんでしょうか」
不安そうな表情でそう言うシオン。
かつて魔神アルターに村を焼き払われたシオンにとって、やはり魔神というのは恐ろしい存在に違いないのだ。
「そんな魔神達が来るって考えたら、怖くて・・・」
胸の前で握りしめた拳は震えている。よく見れば、肩も小刻みに揺れていた。
「・・・シオン」
「・・・はい─────え?」
俺は、震えるシオンを抱きしめた。嫌がられていないと祈る。
「心配すんな。何があっても、絶対俺が守ってやるから」
「ぁ──────」
「約束するよ」
「ジーク・・・さん」
そのまま互いに黙り込む。しばらくすると、シオンの震えは収まってきたので、俺はゆっくり彼女を離す。
「・・・ありがとう、ございます」
「おう」
そして俺はシオンから顔を逸らした。何故なら今の俺は顔が真っ赤だから。カッコつけて抱きしめたりしたけど、超はずい。
いや、他に恐怖を和らげてやる方法が咄嗟に思い浮かばなくてですね、決してセクハラがしたかったわけでは──────
「ま、まあ、俺なんかに守られるのは、不安かもしれないけど」
「そんなことありませんっ!!」
「え?」
突然強い口調でそう言われ、俺は焦った。
「ジークさんは、私のヒーローです・・・から」
言ってる途中で恥ずかしくなったのか、シオンは顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。
対する俺も顔が真っ赤である。いやだって、ヒーローとか・・・。
「そ、そうか・・・」
「・・・」
気まずーい。
「そ、そろそろ寝るか」
よし、寝よう。今は暗いから俺の顔があんまり見えてないだろうけど、真っ赤ですもん。
「あ、あのっ・・・」
「ん?」
「あの、その、何だか今日は、一人で寝るのが怖いので、その・・・」
もじもじしながら何かを言う彼女。なんだこれ可愛い。
「その、今日だけ、一緒に寝てほしい・・・です」
な ん だ と ?
「あ、ご、ごめんなさいっ!迷惑ですよねっ!」
「へ、いやいやいや、迷惑なんかじゃないけど!」
迷惑なんかじゃないけど、絶対寝れねえ!!
「すみません、一人で寝ます・・・!」
「ま、まて、分かった!一緒に寝よう!」
「え・・・」
怖がってる女の子を一人にさせるわけにはいかん!
ということでね、一緒に寝ましょう!
「いいんですか・・・?」
「当たり前だ!」
俺としては大歓迎なんだが、暑すぎるのと、美少女と共に寝るという行為を行って冷静にいられるかが分からんのだ。
「ほら、行こう!」
「あ、は、はいっ」
俺は顔が赤いシオンの腕を掴み、家へと戻った。
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「すぅ、すぅ・・・」
「うーん、おなかすいたぁ・・・むにゃ」
左には寝言を言うロリ美少女。
右には可愛らしい寝顔の美少女。
うん、寝れない。




