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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
魔導の祭典〜マジックバトルカーニバル〜
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番外編 エステリーナと初恋相談室

「はあ・・・」


溜息を吐いた美少女を見て、男達は思わず鼻の下を伸ばす。


燃えるような赤髪に、とても美しく整った顔、そしてスタイル抜群の美少女エステリーナは、ギルドに置いてある椅子に座りながらある人物のことを考えていた。


ジークフリードという名の少年。

ずっと前に知り合ってから、依頼を受ける時はだいたい一緒にパーティーを組んできた少年だ。


そんな彼に、この美少女は生まれて初めての恋をした。


少し前に行われたローレリア魔闘祭の最中、ヴィライン・カストールという男にエステリーナは誘拐され、兄を屈服させるための人質にされた。


しかし、ジークフリードはそんな自分を助けに来てくれた。

あの時の彼の姿をエステリーナは忘れることが出来ない。


さらに彼女は彼に礼だと言って『キス』もしている。

本当は感情を抑えられなくなってしたことなんだが。


あれから何度かジークフリードと話す機会はあったのだが、エステリーナは生まれて初めての恋に戸惑い、うまく話すことが出来ていないのだ。


そして今日、彼とシオン、シルフィは迷宮探索に向かってしまっている。

何故エステリーナがついて行かなかったかというと。







ーーーーーーーーーー







「あっはっはっは!!!」

「うぐっ、笑わないでくださいっ!!」


ギルド長室を訪れたエステリーナは、目の前で爆笑する美人を睨んだ。


「ぶふっ、そんな真っ赤な顔で睨まれても、怖くないって・・・ぷっ」

「ぬぐ・・・」


緩いウェーブのかかった桃色の長髪を手でクリクリしながら目の前の美人、リリスはニヤニヤとエステリーナを眺めた。


「あのエステリーナが、恋ねぇ・・・ぷぷっ」

「いつまで笑うのですか・・・」

「いやだって、あのエステリーナが────」

「何度言うつもりですか!」


バンバンと机を叩くエステリーナ。

そんな照れ隠しを見て、さらに笑いがこみ上げてくるリリス。


「ふう、それで、それを私に言ってなんかあるの?」

「・・・その、最近ジークとうまく話すことが出来なくて、どうすれば前のように接することが出来るかなと・・・」

「乙女かっ!」

「真面目に聞いてくださいっ!」


だんだんこの小悪魔のような女に相談するのが嫌になってきたエステリーナ。


「まあ、初めての恋なんでしょう?次第に慣れてくるわよ」

「そ、そうだといいんですが・・・」

「てか、ジーク君と話す時もそんな顔真っ赤なの?」


そう言われ、エステリーナは俯いた。

多分そうなっているのだろう。彼と話す時はいつも今のように顔が熱くなるのだから。


「・・・それでなんで気付かないのかしらね、あの子も」

「まあ、シオンとシルフィがあれだけ分かりやすい反応をしているのに、全く想いに気付かない男ですし・・・」

「あんたもかなり分かりやすいけどね」

「うっ・・・」


シオンやシルフィ、レヴィと接している時、たまにジークは赤面したり慌てたりすることがある。

それでも彼女達の想いには気付いていないのだ。


「いっそのこと告白してしまえば?」

「なっ、こ、こここ告白!?」

「ぷっ、あははははは!!そんなに慌てるあんた、初めて見たわよ!!」


再び爆笑するリリスを見て、エステリーナは顔を両手で覆った。

なんだかんだいって彼女も年頃の少女である。

告白など、簡単にできるはずがない。

なのにキスはしたという・・・。


「とりあえず、ライバルは多いんでしょ?シオンちゃんに、シルフィちゃん。それからあの水魔法使いのちびっ子ちゃんも」

「・・・」

「勝つためには、ジーク君に《エステリーナ》という一人の女として見てもらわなきゃならないわよ」

「女として・・・」

「まっ、十分すぎるくらい魅力はあるから自信をもちなさい」


これほどまでの美人にそんなことを言われると少し自信が湧いてくる。


エステリーナはまだ赤い顔でこくりと頷いた。


「さて、噂をすれば戻ってきたみたいね」

「え・・・」


リリスが窓の外を見ながらそう言ったので、エステリーナも視線をそちらに向けた。


「あ・・・」


向こうからギルドへと向かって歩いてくるのは、先程から話に出て来ていたエステリーナの初恋相手、ジークフリード。

その隣には彼ともっとも付き合いが長いシオンと、彼を慕っているシルフィが。


そして嫉妬の魔神であるレヴィアタンは、ジークに肩車してもらっていた(多分ジークの意思関係なく)。


「ほんと、モテモテよね、彼」

「ですね・・・」


あれほどの美少女に囲まれる男など見たことがない。


「まあ、頑張りなさい」

「はい」


エステリーナは深呼吸すると、ギルド長室をあとにした。






「恋・・・ねぇ」


リリスは静かになった部屋で、ポツリと呟いた。










◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「お、エステリーナ」

「っ、お疲れ様、ジーク・・・」


帰ってきたジークを見て、エステリーナは俯きながらそう言った。ジークはキスの件で照れてはいるが、それを表面には出さない。しかしエステリーナはそれを思い出して顔が真っ赤だ。


(照れてますね)

(これは、チャンスだと思うよ)


そんな彼女を見て、シオンとシルフィはあることを行った。


「え、へっ!?なにしてんだ!?」

「い、いえ、なんでも・・・」

「ほ、報告しに行きましょう、ご主人様」

「れっつごー!」

「・・・?・・・!?」


シオンとシルフィは、両サイドからジークの手を握って引っ張ったのだ。

普段そんなことをしない2人は顔がとんでもなく真っ赤である。


そんな2人を見てエステリーナは目を見開く。


(さあ、これで何もしなかったら、エステリーナさんは意気地無しですっ!)

(恋愛では敵だけど、一応応援はしていますよ)


2人の瞳はそう言っていた。

つまり、シオンとシルフィは同じ人を好きでありながら、エステリーナの恋も応援してくれているのだ。


(ふ、二人共・・・)


思わずじーんとなり、エステリーナは目を瞑る。

そして覚悟を決め、ジークに向かって歩き出した。



・・・が。



(わ、私も後ろから抱きついたりすればいいのか!?)


彼女は足を止めた。

一体何をすればいいというのか。

普通に声を掛けるか、それとも積極的にボディタッチを行えばいいのか。


ジークに抱きつく自分を想像して、エステリーナの顔はみるみる赤くなっていく。






(あーもう、何してんのよ馬鹿)


こっそりギルド長室からエステリーナの様子を見に来ていたリリスは、動きを止めたエステリーナを見て溜息を吐いた。


そして、やれやれといった表情である魔法を唱える。








「え?うわっ!?」

「へ─────」


突然背中を誰かに押されたエステリーナは、勢いよくジークの背中にぶつかった。


リリスが唱えた魔法は初歩風魔法。空気がエステリーナを押し、ジークへと近付けたのだ。


「あっ─────」

「あぶねっ!」


そして、エステリーナとジークはバランスを崩し、倒れた。


「だ、大胆っ・・・!」

「エステリーナさんが突然積極的になりましたよ、シオンさん!」

「うわっと!」


ジークの肩から転げ落ちたレヴィは、机に突っ込んだ。

その際のパンチラで何人かやられた。


シオンとシルフィはエステリーナの行為に純粋に驚いている。


「びっくりした・・・大丈──────」

「ひっ・・・」


倒れたジークは、同じように倒れたエステリーナを心配して声をかけようとしたが、自分の顔がとても柔らかい何かに圧縮されていることに気が付いた。


「なんだこれ?なんか柔らかいんだけど・・・」

「うぁ・・・」


ジークが喋る度に柔らかい何かは動き、可愛らしい声が聞こえてくる。


「・・・まさか」

「う、ぅ・・・」


そう、ジークの顔面を圧縮していた柔らかい何かは、エステリーナの─────


「素晴らしい、お胸ですね」

「きゃあああああああああ!!!!!」












(あらまぁ、ぶふっ、なんというラッキースケベ・・・)


リリスはそんな光景を見ながら必死に笑いをこらえていた。









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