第三十六話 決勝戦
その後、『誘拐、脅迫、監禁』などの罪でヴィライン(瀕死だが生きていた)は逮捕され、王国兵に連れて行かれた。
エステリーナはまだ身体が自由に動かないらしく、試合を棄権した。それにより俺は不戦勝となり、決勝へと進出。
対するイツキさんも、ヴィライン逮捕により不戦勝となって、決勝へと上がった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『さあ、50回目となる今回の魔闘祭も、いよいよ決勝戦です!!』
会場が沸く。
観客達の声が闘技場を揺るがした。
『さあ、注目の対戦カードを発表しましょう!!一人目は、先程起こった事件を無事解決した、ジークフリードさんです!!』
「きゃーーー、ジークフリード様ぁ!!」
「応援してるぞーーー!!」
・・・なんだこれ。
女性からは様付けされ、さっきまで卵とか投げてきてた男達からはなんか応援されてるんですけど。
あれか、エステリーナ助けたからか。
『そんな彼の相手は、三年連続優勝者、王国最強の魔剣士!!イツキ・ロンドさんです!!』
「「「うおおおおーーー!!」」」
さすがは三年連続優勝者。
すごい人気みたいだな。
「まさか、貴様が相手とはな」
「はは、どうせだったらイツキさんも倒して優勝させてもらいましょうかね」
「ふっ、悪いが負けるつもりはないぞ」
イツキが大剣を抜き放ち、ニヤリと笑う。
「それはこっちの台詞ですよ」
「手加減は無用だぞ」
申し訳ないけど、手加減はします。
『両者共準備は出来ていますね!それでは、決勝を始めましょう!!』
それを聞いて、騒いでいた観客達が一瞬静まる。それを見計らっていたかのように、司会は叫んだ。
『試合、開始ッ!!!』
「フレアウェイブ!!」
試合開始の合図と共に、イツキさんが魔法を放った。しかし俺はその場から動かない。
「ふんっ!!」
炎の波は俺を焼くことは出来ずに通り過ぎ、消滅した。
「なにっ─────」
「次はこっちの番だ!」
驚いて動きを止めたイツキさんの背後に一瞬で回り込み、そして俺は勢いよく拳を振るった。
「ッ──────」
「なっ!?」
しかし、俺の拳が届く前にイツキさんはしゃがみ、攻撃を回避する。戦士の勘・・・というものだろうか。
「フレアハンマー!!」
「っと」
そしてイツキさんは振り向きざまに炎魔法を放つが、俺はバックステップでそれを躱す。
「ふん、やるな」
「そっちこそ」
まさかパンチ避けられるとは思わなかった。
「まだまだ試合はこれからだッ!!」
「む・・・」
イツキさんが燃え盛る炎を大剣に纏わせる。そして勢いよく跳躍した。
「《炎をもたらす魔剣》!!」
上空から放たれた炎は剣の形へと姿を変え、俺を呑み込む。
「《アトミックブレッド》!!」
次に放たれたのは上位炎魔法。
何十発もの炎の弾丸が俺に降り注いだ。
「さあ、覚悟するがいい!!」
そして着地したイツキさんは、炎に包まれる俺に向かって疾走し、魔力を大剣に集中させた。
「《焔凰裂翔斬》!!!」
イツキさんが真下から上に向かって大剣を振るう。そして迫る炎の魔剣は俺を切り裂く────ことはなく。
「な──────」
「ふふふ、ノーダメージですよ」
俺は手のひらで迫る大剣を受け止めた。
その衝撃で燃え盛る炎は爆散し、消滅する。
「馬鹿なッ・・・!!」
「次は俺のターンだ!」
俺は勢いよく地面を蹴ると、イツキさんの周りを高速で駆け回った。
残像が残るほどの速度で。
「っ・・・!?」
「こっちですよ!!」
そして彼の背中に掌打を打ち込む。
もちろんかなーり加減はしたぞ。
「ぐっ、がぁ・・・!?」
それでも相当なダメージだったらしく、イツキさんは勢いよく倒れ込んだ。
「ちっ、クソが!!」
「おっと!?」
しかしそれでも彼は立ち、俺目掛けて炎を放ってくる。
そのすべてを叩いて消しながら、俺はイツキさんに向かって歩いた。
「さて、そろそろ勝たせてもらいましょーかね」
「ちっ、舐めるな!!」
イツキさんが魔剣を振るう。しかしその一撃は俺の耐久力を上回ることは出来ず、腕に直撃して止まった。
「っ!?」
「はあっ!!」
その隙に俺はイツキさんの魔剣を蹴りあげ、そして。
「終わりです」
がら空きになった彼の腹に、俺の拳がめり込んだ。
それを見たイツキさんは一瞬目を見開き、笑う。
「ふっ、見事だ──────」
そして彼は仰向けに倒れ込み、動かなくなった。
『こ、これはっ・・・!!』
ふむ、ここはとりあえずやっておくか。
「へへっ」
俺は笑い、拳を天高く突き上げた。
『決着、決着です!!第50回ローレリア魔闘祭優勝者は、ジークフリード!!!!!』
「「「ウオオオオオオオ!!!」」」
次の瞬間、観客達の声が闘技場を震わせた。




