第三十話 お怒りレヴィさん
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幸運:-7700
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まって、超嬉しい。
久々にステータス見てみたら俺の幸運が-7700になってた。
そりゃ前より不幸なことが減るわけだ。
「死ね、変態!!」
「ハーレム作ってんじゃねえぞクズ!!」
「鼻の下伸ばしやがって!!」
「ロリコン野郎が!!」
まあ、固有スキルのせいか知らないけど、さっきからずっと瓶とか砂とか卵とか飛んでくるんですけどね。
相変わらず不幸なんですけどね。
とりあえずシルフィを病室があったのでそこに運んだ俺は、現在フィールドに立っている。
これから行われる第二試合は俺が出るからだ。
しかし相手を待ってる間観客席からは様々なものが飛んでくる。
王都では英雄だー勇者だーなどと言われてるけど、王都の外から来た人達は遠慮というものを知らないようで。
「うぉっ!?誰だ今包丁投げてきたやつ!!」
「死ねーー!!」
「禿ーげーろー!!」
もうやだ。
別に俺何も悪いことしてないのに。
「ジークーー!!頑張ってねーー!!」
「ぬああぁぁ!!美少女に応援されているぞぉぉ!!」
「試合前に戦闘不能にしてやれぇぇ!!」
「おい司会者、何とかしてくれ!!」
『頑張ってください!』
レヴィの応援を聞いてさらにヒートアップする危険物飛ばし。
まじふざけんなって。
レヴィの応援は正直超嬉しいけど、誰か男どもを何とかして。
『え、えー、それでは、ジークフリードさんVSパレル・ホリマンさんの試合を始めたいと思います』
おいこら、止めろよ司会者。
『試合、開始!!』
「卵とかバンバン当てられてんだから止めろよゴラァ!!」
「ぷっ・・・」
「あ?」
「ひぃっ!?」
突然対戦相手の男が笑ったので、睨みつけた。
すると男はビクッてなって腕で顔を隠す。
「・・・」
「・・・」
「試合、始まったけど」
「か、かかかかかって来い!!!」
なんだこのビビリは。
「んじゃー、いかせてもら───」
「ま、まてっ!!本気で、本気でやらないでくれよ!?」
「はあ?」
「死んじゃう!俺死んじゃうから!!」
・・・ふむ。
「せい」
「ぎゃばっ!?」
とりあえずチョップしたら、対戦相手のパレルは気絶した。
まって、弱すぎだろ。
『・・・ジークフリードさんの勝利ー』
「ちょっとまって、色々と雑すぎねえ!?」
はい、無事勝ち進めましたぁ・・・。
なんだこれ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『えー、それでは三試合目は・・・おっと、これは注目の対戦カードですよ!!三年連続優勝者、イツキ・ロンドさんVSレヴィさんです!!』
「ふむ、お前が相手か」
「よろしくねー」
三試合目、イツキとレヴィは向かい合った。
そこでイツキはレヴィの秘める尋常ではない魔力に気が付く。
「・・・お前、何者だ?」
「ん?」
「その魔力、一体どれ程のものか想像がつかん」
イツキにそう言われ、レヴィはにっこり笑った。
「あはは、世の中には知らなくてもよいことがたくさんあるのですよ」
「む、そうか・・・」
とりあえず返事をして、イツキは大剣を抜く。
「まあいい、お前がどれだけ強かろうが、全力で相手をしよう」
「おおー、なんか主人公っぽいこと言うね」
レヴィの身体からも魔力が溢れ出る。
「・・・」
そして、レヴィはチラリと観客席を見た。
その視線の先には、他の観客から様々な攻撃を受けながらもこちらを見ているジークの姿が。
彼を見てレヴィの口元は自然にニヤけた。
『さあ、それでは第三試合を始めます!試合開始!!』
司会者の声が響き渡った。
「さて、始めようか」
それを聞いてイツキが大剣に炎を纏わせる。
「やっぱり手加減したほうがいいよね」
対するレヴィはそう呟くと、水を自身に纏って勢いよく跳躍した。
「なにッ!?」
あまりのスピードにイツキの反応が遅れる。
魔神レヴィアタンの動く速度は、ジークとそう変わらない。
とてもその動きを人間では追うことは出来ないが、今のレヴィはかなりゆっくり動いていた。
(殺しちゃったらジークに嫌われるかもしれないし)
そう思いながら、レヴィはイツキの真上から大量の水を放つ。それに気付いたイツキが炎を放つが、レヴィの水は燃え盛る炎を消し、彼を呑み込んだ。
「ぬぐっ!?」
「《水牢》」
着地したレヴィが水の中でもがくイツキを見てニヤリと笑う。
レヴィは水を自由自在に操る事ができ、このように相手を水の中に閉じ込めることも可能なのだ。
本気を出せば、王都全体を覆い尽くす程の水を浮かべることも出来るのだが・・・。
「さあ、降参する?」
「がっ、ぐぅ・・・舐めるな!!」
イツキの大剣が水を切り裂く。
「っ!!」
「焼き尽くせ!!!」
そして、特大の火球をレヴィに向けて放った・・・が。
レヴィの前に現れた水の壁に阻まれ、火球は消滅した。
「ちっ・・・」
「うーん、やっぱりジーク以外じゃ楽しめないかなぁ」
「・・・あの男とどういった関係かは知らんが、あまり舐めていると痛い目を見ることになるぞ」
「え、別にぺろぺろしてないけど・・・」
「そういう意味ではないッ!!」
顔が赤くなったイツキは地面を蹴り、キョトンとするレヴィに大剣を振り下ろした。
「おっと」
しかし再び水の壁に阻まれる。
たが今回はそれもイツキの計算の内である。
「我が炎は大海さえも蒸発させる!!」
「ッ!?」
大剣が勢いよく燃え上がった次の瞬間、水の壁が蒸発し、レヴィを炎が襲った。
「あっつい!!」
それでも流石は魔神、至近距離で放たれた炎が自身に届く前に、その場から離れる。
「なっ、今のを躱すのか・・・!!」
「・・・・・・」
「む・・・?」
突然黙り込んだレヴィを見てイツキは動きを止めた。
「・・・焦げた」
「・・・?」
「せっかく、ジークに意識してもらおうと思って可愛い服着てたのに、服が焦げた・・・」
「む、それはスマンことをしたな」
「周りに可愛い子ばっかりいるからボクだって負けないために可愛い服着てたのにっ・・・」
そこでイツキはレヴィの様子がおかしいことに気が付いた。
ちなみに、観客席にいたジークもレヴィの魔力が跳ね上がりかけていることに気が付く。
「許さないんだからっ!!!!!」
「ぬあっ!?」
突然叫んでレヴィが跳び上がった。
そして手を上に掲げる。
「げっ!?レヴィ、それはやばいって!!」
イツキにはジークの焦った声が聞こえたが、今のレヴィには聞こえていない。
これまで適当に服を着てきたレヴィにとって、好きな人が意識してくれるようにと初めてまともに選んだ服を焦がされ、彼女は怒っていらっしゃるのだ。
「な、なななな・・・」
『こ、これはっ!?』
闘技場上空にとんでもなく巨大な水の塊が出現した。
それを見て観客達はパニックに陥る。
「ちっ、馬鹿魔神!」
「へ─────」
しかし、背後から少年の声が聞こえたと思った次の瞬間、レヴィは消えた。
それと同時に水の塊も消滅する。
「・・・は?」
『・・・え?』
「なにやってんだこの馬鹿魔神!!」
「いたっ!!痛いよぉ・・・」
ほとんど人が居なくなっている王都の路上で頭を叩かれ、レヴィは頭を押さえてうずくまった。
「だっ、だって、服が・・・」
「だからってなんで闘技場全壊するレベルの魔法使おうとしてんだよ!」
「うぅ・・・」
彼女を叱りつけているのは、観客席で焦っていたジーク。
あの一瞬でレヴィを掴み、闘技場から王都まで跳躍したのだ。
「だって、ジークに見てもらおうと思って選んだ服だったのに・・・」
「うぐっ・・・」
しかし、いくらなんでも涙目で上目遣いは卑怯すぎる。
レヴィのような美少女がすれば尚更だ。
ジークはあまりの破壊力に手が出そうになるのを必死に抑えた。
「〜〜〜〜〜っ、分かった、分かったからその目で見るな!服ぐらい買ってやるから!」
「え、ほ、ほんと!?」
「ああ!また暇な時買い物ぐらい付き合ってやるから!!」
「っ、やった!」
それを聞いてレヴィは両手をあげながら満面の笑みで嬉しさを表現した。
「ったく、ほら、戻るぞ」
「えへへ、りょうかーい」
「ぐおっ!?抱きつくなって!!」
そして、レヴィは勢いよくジークの背中に抱きつく。もう既に服が焦げた事など忘れている小さな魔神さんなのであった。
「・・・何だったのだ?」
ちなみにレヴィが急に消えたので、第三試合の勝者はイツキに決まった。




