第二十八話 燃え上がれ二日目
「・・・シルフィちゃん」
「はい、何でしょう」
「シルフィちゃんって、ジークさんのこと好きだよね?」
「ふえっ!?」
Cグループの試合が行われるので、シオンとシルフィはフィールドに降りた。
そこで突然シオンがシルフィにそんなことを言ったので、シルフィは顔を真っ赤にして俯いた。
ちなみにシオンが敬語を使わないのは年下のシルフィだけだ。普通に仲のいい友達のような関係なので。
「そ、それは、その・・・」
「む・・・」
「じゃ、じゃあ、シオンさんはご主人様のことをどう思っていらっしゃるんですか!?」
「え、そ、それはっ・・・」
顔が真っ赤なシルフィに反撃され、今度はシオンが真っ赤になった。
「み、見ていれば分かります!シオンさんは確実にご主人様に惚れていらっしゃいますよね!」
「う、うぅ・・・」
そんな二人のやり取りを見ながら、Cグループの男達の心は癒されていた。
「可愛ええ・・・」
「萌え・・・」
そんなことをつぶやきながら。
「ま、負けないもん・・・!」
「わ、私だって!」
「「「ジークフリードめぇぇ・・・」」」
『それでは、Cグループの試合を始めます!試合開始!!』
そこで試合開始の銅鑼が鳴り響いた。
「ウインドピラー!!」
「っ!!」
突然シオンがシルフィに風魔法を放つ。ギリギリのところでシルフィはそれを回避した。
「なるほど、ご主人様は渡さない・・・ということですか」
「ウインドカッター!」
「くっ!」
シオンが次々に風魔法を放つが、シルフィはその全てを躱していく。その度に後ろにいたおっさん達が風魔法の犠牲になっていることを彼女達は知らない。
「《幻糸展開》!!」
「っ・・・!」
「動かない方がよろしいですよ?」
再び風魔法発動の体勢に入ったシオンの周囲にシルフィが創り出した魔法の糸が張り巡らされた。
恐ろしい切れ味を誇るその糸に触れればシオンの肌は簡単に切れてしまうだろう。
「さあ、どうしますか?」
「・・・」
「・・・?っ!?」
「そっちも動かない方がいいよ」
余裕を見せていたシルフィが驚きの表情を浮かべた。
今彼女の周囲には風が渦巻いていたから。
「ウインドカッターを唱え続けてるから、触れたら切れるよ」
「ふふ、なるほど」
両者共に動けない。
そんな彼女達を攻撃しようとしたら逆に体が切れるので残った周囲の男達は攻撃できない。
「引き分け・・・ですか」
「引き分け・・・だね」
そして、二人は互いを囲んでいた魔法を解いた。
「今回は、だからね」
「つ、次は負けませんっ!」
そう言いながら彼女達は残った男達に顔を向けた。
「「「へ・・・」」」
「ウインドピラー!」
「はあっ!!」
そして、シオンの風魔法と、シルフィのダガーによる攻撃で残った人達は全滅した。
『Cグループ決着!本選進出を決めたのは、シオン・セレナーデさんとシルフィ・パストラールさんです!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「・・・」
「エステリーナァァァ!!」
「・・・」
「やっと俺達二人で戦えるな!!」
「・・・」
「この時を、ずっと待っていたのだぁ!!」
「う、うるさい!!」
「がぶぁ!!」
二日目最後のDグループの試合。
フィールドではエステリーナが騒ぐイツキを殴っていた。
そう、イツキもエステリーナと同じDグループなのではしゃいでいるのだ。
「い、いい歳していつまでそんなことを言うつもりだ!」
「死ぬまでだ」
「やめろ!いい加減共に歩める女性でも見つけたらどうなんだ!」
「エステリーナだけで十分だ!」
「ぐっ、この・・・」
顔が真っ赤なエステリーナはイツキから離れると剣を抜いた。
「な、エステリーナ、何を!?」
「もう許さんぞ兄上!私だって我慢の限界というものがあるんだ!」
「我慢の限界!?」
「流石に恥ずかしいんだ!」
「ふははは、そうやって照れる妹も可愛─────」
「笑うな!!」
傍から見たらただの仲良し兄妹にしか見えないのだが、エステリーナは気づいていない。
『えー、そ、それでは、Dグループの試合を始めましょう!試合開始ッ!!』
赤髪の兄妹が言い合っている中、試合は始まった。
「覚悟しろっ!!」
「落ち着け我が妹よ!!」
「ぬうっ、避けるな!!」
「避けるに決まっているだろう!?」
エステリーナがブンブン魔剣を振るいながらイツキを追う。
「そこだっ!」
「ぬっ・・・!!」
そして、エステリーナが放った突きを大剣で受け止め、イツキは吹っ飛んだ。
「チッ、邪魔だ!」
「ぐえっ、理不尽ッ!!」
その時にぶつかったおっさんを殴り飛ばし、再びイツキはエステリーナからの逃走を開始する。
「何故逃げるのだ兄上!武人として恥ずかしくはないのか!!」
「俺には愛する妹を斬ることなど出来んのだ!!」
「まだ言うかっ!!」
エステリーナの本気の斬撃がイツキの服を切り裂く。咄嗟に身体を捻っていなければ肉ごと斬られていただろう。
「きょ、兄妹だろう!?」
「うるさいっ!!」
その後も壮絶な戦いは繰り広げられ、周囲にいた男達はその巻き添えをくらうのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ローレリア魔闘祭本選進出を果たした十名を発表します!!』
司会者の声が闘技場に響き渡る。
『一人目は、最近王都に現れた美少女を食い漁るハーレム変態野郎!!ジークフリード!!』
「おい待てどんな説明だこら!!」
『二人目は、無表情な美少女、シオン・セレナーデ!!』
(笑う努力はしてるんだけど・・・)
『三人目は、赤髪の美人剣士、エステリーナ・ロンド!!』
「む、美人・・・か」
「照れる妹も、可愛いものだな」
「うるさい!」
「がほっ!?」
『四人目は、ご主人大好きエルフっ子、シルフィ・パストラール!!』
「うぅ、恥ずかしいことを・・・」
『五人目は、お馴染みの最強炎男、三年連続優勝者!イツキ・ロンド!!』
「ふははは、よろしくよろしく!」
『六人目は、データが無いのでよく分かりませんが、水魔法使いのロリ美少女、レヴィ!!』
「むふふ、よろしくー!」
「「「撫でたい」」」
『七人目は、パレル・ホリマンさん!!』
「しょ、紹介短くないすか!?」
『八人目は、男達の骨と心を粉砕した、昨年準優勝者!ヴィライン・カリオーラさん!!』
「クックッ・・・」
『以上、八名です!それでは皆さんまた明日!!』




