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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
転生してもやっぱり俺は不幸でした
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第二話 不幸少年、村を回る

ブックマークありがとうございます


「こんにちは」

「む、見ない顔だな」


村を歩き始めると、老人に出会った。


「どうも、旅の者です。明日までこの村に泊めてもらうことになりまして」

「ほう、珍しいな。旅人がここを訪れるなど」


そして、俺と老人の会話に気が付いたのか、村のあちこちから人がやって来た。それでも総勢10人程だ。


「どこから来たの?」


女性にそう聞かれたので、俺は咄嗟にこう答えた。


「まあ、遠い国からです」


日本です、などと言っても分からないだろう。別の世界から来ましたーなんてことは絶対言うつもりはないし。


「それで、誰の家に泊まるんだ?」

「シオンの家です」

「なっ・・・!?」


俺がシオンという名前を口にした瞬間、村人達の表情が凍り付いた。


「・・・?」


どういうことだ?別に禁止用語を言ったわけじゃないのに・・・。


「おい、旅人さんよ。あそこはやめといたほうがいいぞ」

「え?」

「シオン・セレナーデの家に泊まることだよ」


そう言う村人の表情は真剣だ。いや、何かを恐れているような・・・。


「どういう事ですか」

「あいつは、シオンは呪われている。あんな女の家に泊まるのはやめておけ」

「の、呪われてるって・・・」


見た感じそんな気はしなかったけど、どういう・・・あ。


「ハデスの・・・魔眼?」

「ッ!?」


俺がそう言った瞬間、再び村人達の表情が凍り付く。


「な、何でそれを知ってんだ・・・」

「あ、いや、特別な事情がありましてですね」

「なら、あれがどんなものか知っているんだろう!?」

「それは・・・」


俺のスキルでシオンの情報を見た時に出てきた彼女の固有スキル《ハデスの魔眼》。

確か、3秒間目を合わせた人を石化・・・上位石化させるって効果だったはずだ。でも、俺は石化しなかったけど・・・。

いや、そういうことか。


「右目か」


恐らくハデスの魔眼は右目と目を合わせた時のみ効果を発揮するのだろう。だからシオンは眼帯を付けてたのか。


「あいつと目を合わせたら、石化しちまう。それだけならまだいい。あいつの魔眼は、目を合わせた奴を永遠に石化させちまうんだよ!!」

「な・・・」

「石化しただけなら状態異常回復魔法で効果を消すことができる。けど、あいつのは上位石化効果を持ってる。魔法じゃ石化を解くことはできないんだ!!」


なるほど、それが上位・・石化か。


「でも、シオンは眼帯を付けてます。魔眼の効果は発動するんですか?」

「それは分からない。でも、もし発動したらどうする!?」


恐怖に顔を歪めた村人がそう言った。


「あいつは悪魔だよ。きっとあいつも魔物達と一緒なんだ」

「そうだ、人の姿をした化物だ!」

「ああ、早く村から出ていってくれればいいのに!」


・・・こいつらは、何を言ってんだ。あんなに優しい子に向かって。


「・・・ぁ」


その時、1人の村人が俺の背後を見て硬直した。それに気付いて俺は後ろを振り返る。そこには無表情のまま俺達を見つめているシオンが立っていた。


「し、シオン・セレナーデ・・・」

「あ、悪魔めっ・・・!」


そんな事を言われてもシオンは表情を変えない。やがて彼女は振り返り、森の中に向かって走っていった。


「おい、シオン!」


俺は急いで彼女のあとを追って森の中に入った。





◇ ◇ ◇




「はぁ、はぁ・・・」

「待てって!」


彼女にはすぐに追いついた。肩で息をしながらしゃがみ込む彼女の隣に俺もしゃがむ。


「その・・・」

「もう、私には関わらないほうがいいですよ」

「え・・・」


顔を上げた彼女の頬を大粒の涙が流れていた。


「ジークさんまで村の人達に何か言われてしまうかもしれません」

「い、いや、だからって・・・」

「っ、もう関わらないでください!!」


そう言って右目の眼帯をとるシオン。


「なっ・・・」

「これが、私の固有スキル、《ハデスの魔眼》です」


シオンの右目は黒く染まり、黒目の部分が黄色く染まっていた。

と、それを見ているとすぐにシオンは眼帯を付け直す。


「今のは3秒経たなかったから石化しませんでしたけど、あの見た目で分かるでしょう?これがどれだけ危険なものか」

「それは・・・」

「だから、もう関わらないでください!!」


と、シオンがそう叫んだ次の瞬間、突然爆発音が聞こえた。その方角に顔を向けると、村があった方から煙が立ち上っているのが見えた。


「なっ・・・」


何か事故でもあったのか?そう思った俺は隣で青ざめて固まっているシオンに気が付いた。


「そ、そんな、あれは・・・」

「ん・・・?」


どうやら彼女は上を見ているようで、俺もそっちに顔を向ける。


「なんだあれ」


そこには、人のような何かが浮いていた。何だか気味の悪い力をその身に宿しているのは分かるが・・・。


「っ・・・!」

「あ、おい、シオン!」


突然シオンが村に向かって駆け出した。俺も急いで彼女のあとを追うべく走り出す。が、何故か靴紐がほどけて地面から飛び出た地面の根っこの割れ目に絡みつき、俺は勢いよくこけた。


さらに顔面が地面に激突した衝撃で地面に穴が空き、下にあった空洞に転落した。


「・・・ついてない」


くっそう、早速固有スキルの効果が不幸を招いたか。

俺は起き上がると、服についた砂を落とす。そして顔を上げると、俺の前によく分からん服を着た四人組がいた。


「誰だ?」

「くくっ、我々はアルター様の部下、アルター四天王だ」

「アルター四天王って・・・」


ちょ、まて。なんだそのネーミングは。


「・・・貴様、何が可笑しい」

「いや、アルター四天王はやばいっしょ・・・」

「貴様ッ、アルター様のネーミングセンスを愚弄するか!!」

「名付け親そのアルターってやつかよ!!あっはっはっは!!」


たまらず腹を抱えて笑ってしまった。目の前の四天王はぷるぷる震えながら俺を睨みつけている。


「・・・で、アルターって、誰だよ・・・」

「まず笑うのを止めてから質問しろぉ!!」


と言われ、俺は必死に笑うのをやめた。


「・・・アルター様は、《絶界の十二魔神》が1人。貴様らなど足下にも及ばん偉大なる大魔神様だ」

「へぇ・・・。で、そのアルターってやつは?」

「くくっ、すぐ近くにある村である人物を探している」


ある人物・・・?


「《魔眼》を持つ女・・・だそうだが」

「・・・まじか」


じゃあ、さっき空を飛んでた奴がアルターか。

そんな奴がいるとこに《魔眼》を持つシオンは走っていったわけで。


「そりゃ大変だ。わりぃ、俺ちょっと村に行ってくるから」

「くくっ、何を言っている。貴様はここで死ぬのだ」


なんだよこいつらは。俺はお前らに構ってる暇はないっつうの。


「貴様からはとてつもない力を感じる。くくっ、少しは我々を楽しませてくれ」


そう言ってアルター四天王は力を纏った。

いや、今なら分かる。これが魔力か。


「・・・はあ」


しょうがない、アルテリアスがくれたこの力を信じて戦ってみるか。まあ、地面に穴開ける程頭が硬くなってたし、ステータスは本当に上昇しているのだろう。


「じゃあ、いくぞ」





◇ ◇ ◇





「・・・そんな」


私、シオン・セレナーデは、目の前の光景に絶句した。

村が燃えている。幼い頃から育ってきた村が。

自身の家も、おじさんの家も、みんな燃えている。


「・・・む?まだ生き残りがいたか」

「ひっ・・・」


燃え盛る炎の中からとてつもない魔力を纏った男が歩いてきた。


「・・・いや、なるほど。お前が《ハデスの魔眼》の所持者か」

「え・・・」


体が震える。汗が止まらない。


「貴様の持つ固有スキル、《ハデスの魔眼》は上位石化効果を持つらしいじゃないか。そんな素晴らしいをわざわざ私自ら手に入れに来てやったのだぞ?」

「う、うぅ・・・」


そんな。つまり、村がこうして燃えているのは・・・。


「私の・・・せい」


私を育ててくれた村が、自分のせいで。


村の人達は、私に散々酷いことを言ってきた。仕方が無いだろう。私のせいで死者も出たのだから。

それでも村から追い出されたり、殺されなかったのは何故か。


『口ではあんなことを言っちまったけど、心の底からあの子を憎むことはできねぇよ!!あの子が小さい時から俺はあの子を見てきたんだ!優しい、優しい子だ・・・!』


ある日の夜、とある家からそんな声が聞こえてきた。どうやら村人達が集まって、私を殺すか殺さないかで話をしていたらしく、他の人達も同じようなことを言っていた。

そして、それから私は殺されたりなどしていない。


「っ、あああああ!!」

「む・・・」


私は、魔法を放った。得意なのは、風魔法。

しかし、その風魔法は、目の前の男には全く効かなかった。逆に魔力で跳ね返され、私は尻餅をつく。


「クク、私が誰だか知っているか?絶界の十二魔神、《悪王》アルター様だ。人間ごときの低級魔法が私に効くはずがないだろう?」

「うっ・・・」

「クク、そろそろ貴様の魔眼を頂くとしよう。これで私は更なる力を得るのだ」


そう言って手を伸ばしてくるアルター。駄目だ、体が動かない。


ごめんなさい、私のせいで。

ごめんなさい、ごめんなさい。


私の目から涙がこぼれ落ちた。








────その直後、どこかでとてつもない魔力が放たれた。

それと同時に地面が揺れる。


「っ・・・!?」


顔を上げれば向こうの方の森の中から木や砕けた岩が天高く舞い上がっているのが見えた。


「なんだ・・・?」


アルターがそれを見ながら呟く。


「っとぉ、まじでステータス上昇してんのなー。すっげぇ!」

「ッ!?」


突然アルターの背後から聞こえた声。どこかで聞いたことのある声だ。


「で、お前がアルターか?」

「貴様、何者だ?」


振り向いたアルターの背後には、黒髪の少年が立っていた。


「それと、さっきの魔力の膨張と共に、我が配下達の魔力が消えた。まさか、貴様が・・・」

「ん?あれか、アルター四天王か。あれはやばいよ、ほんとに名前変えたほうがいいって。まあ、俺が吹っ飛ばしたけどな」

「貴様・・・」


少年はケラケラ笑うと、アルターの横を普通に歩いて私の横に立った。


「無事か?」


そう言って手を差し伸べてくる少年。そんな彼を見て、私の目から更に涙が溢れた。


「じ、ジークさん・・・」


そう言って手を取ると、彼はにかりと笑った。

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