第二十四話 可愛いんだもの
『続きまして、Gグループの人はバトルフィールドに集合してください』
「あ、私・・・」
レヴィに抱きつかれ続け、シオンとシルフィ、さらに周囲の男達からの謎の視線を浴び続けていると、シオンが所属するグループが呼び出された。
「ファイトっ」
「・・・はい」
俺がシオンに声を掛けると、彼女は少し口元を緩めて頷いた。
そして立ち上がり、向こうへと歩いていく。
「シオンって強いの?」
「ああ、レベルは低いけどシオンの風魔法はかなり威力が高いし」
「へぇ」
レヴィはちょっとだけ興味を持ったようだ。
さて、応援するとしましょうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おおっ、可愛い子だね!試合後僕とランチでもどうだい?」
「・・・結構です」
「何言ってんだこのナルシスト!俺と遊びに行こうよ!」
「いやいや俺と!」
「俺だ!」
「わしじゃぁぁぁ!!」
「・・・」
バトルフィールドに降りたシオンは、周囲の男達からのナンパを断り続けていた。
彼女はこの世界でも『超』美少女という部類にカウントされてもおかしくはないレベルの美少女だ。
この暑苦しい男共の中に一人だけポツンと女の子がいれば、それはもちろん男達がこぞって声を掛けてくるだろう。
(早く始まらないかな・・・)
そんなことを思いつつシオンはチラリと観客席を横目で見る。
(む・・・)
すぐにジークは見つかった。しかしその腕にはレヴィアタンがしがみついている。
最初はジークも引き剥がそうとしていたのだが、途中で諦めていた。
(あの子、ジークさんのこと好きなのかな?ジークさんもあんまり嫌そうじゃないし、もしかしたら二人は・・・)
そんなことを思って若干傷つくシオン。
そんなことはない、そんなことはないと自分に言い聞かせながら頭を振った。
その光景が男達から見たら小動物がフルフル頭を振っているようでまた興奮させているのだが・・・。
「はぁ・・・」
自分もレヴィアタンのように積極的になれば、もっとジークも反応してくれるのだろうか。
しかし自分は昔から身に付いてしまっているこの常時無表情に、レヴィアタンのような明るさも無い。
再びズーーンと落ち込んだシオンに男達が一斉に声を掛ける。『悩み事があるなら俺が相談に乗るよ!』的なあれである。
「いえ、結構です・・・」
寄ってくる男達を避けつつ少しずつ距離をとるシオン。
この時観客席にいるジークが鬼の形相でシオンに群がる男達に飛びかかろうとしているのをシルフィ、エステリーナ、ゲラゲラ笑うレヴィアタンに止められていたのを彼女は知らない。
『それでは、Gグループの試合を開始します!』
と、そこで司会のアナウンスが聞こえ、シオンは安堵した。
まだ本当の地獄はこれからだというのに・・・。
『試合、開始ッ!!』
ゴオオオオオオン!!
「うおおおおおお!!」
「どけぇっ!」
「邪魔だぁぁぁぁ!!」
試合開始の銅鑼の音が鳴り響くと同時に、男達は一斉に戦い始めた・・・かと思ったら殴り合いながらシオンの方へと向かってくるではないか。
「え・・・え?」
何故自分の方に向かってくるのか。
シオンはわけが分からず混乱した。
「触るのは俺だぁぁぁぁ!!」
「いや、俺だ!!」
「ここで夢を叶えるのだぁ!!」
「うひょひょひょ!」
「ひぃっ!?」
ここで初めてシオンは恐怖を露わにした。
下心丸出しで、涎を垂らしている人までいる集団が、自分に向かって迫って来る。
つまり、襲われる。
「う、ウインドピラー!!」
咄嗟にシオンは風魔法を唱えた。
発生した竜巻が迫る男達を巻き込んで上空に吹っ飛ばす。そして彼らは次々と地面にめり込んだ。
今回はギャグ要素が強いので彼らは死なない。
「ウインドハンマー!!」
再びシオンが風魔法を唱える。
残った男達を風が押し潰す。もう一度言っておくが、今回はギャグ要素が強いので彼らは死なない。
「うきょきょーー!!」
「この子は俺のもんだぁぁぁ!!」
「夢を叶えるんだぁ!!」
しかし、まだ数名残っていた。
かなり距離は近く、シオンの頬が引き攣る。
「もらったぁぁぁぁ!!」
「ウインドカッター!!」
「うぎゃああああ!!」
そしてシオンが唱えた風魔法を受けて残った男達は吹き飛んだ。さらにそのまま向こうの壁にめり込む。今回はギャグ要素が強いので彼らは死なない。
『ど、どうやら決着がついたようです!えー、Gグループから二日目に進出するのは、シオン・セレナーデさんと・・・あれ?』
司会が焦る。
何故なら全男性がシオンに吹き飛ばされ、シオン以外誰ひとりとして立っていなかったから。
『えー、その、とりあえずシオンさんの勝利ー』
パチパチパチパチ
この後、目を覚ました男達はじゃんけんで二日目に進出する人を決めたのだった。




