第二十三話 そして再びやつが来る
・・・なんだあいつ。
俺が飛びかかってきたおっさん達を気絶させた時、かなり手加減してたんだけど、一人だけ俺の攻撃を受け流したやつがいた。
そいつは向こうで黒いローブに身を包んで佇んでいる。
何故か嫌な予感がしたんだけど、気のせいだろう。
「さて、戻るか」
司会が俺と黒ローブの二日目進出を宣言したのを聞いて、俺はシオン達がいるところに行こうとした。
その時。
「・・・?」
突然黒ローブに服掴まれた。
え、まって、怖いんですけど。
「なんでしょうか?」
「・・・」
声を掛けてみた。
すると黒ローブはものすごい力で俺の手を掴んでそのまま駆け出した。
「ちょ、まてまてまてまて!」
抵抗してみたが、黒ローブは俺の手を離さない。その後連れて行かれたのは誰もいない部屋。
かなり焦る俺を尻目に黒ローブは扉を閉めた。
そして───
「どーーーーーーーん!!!」
「ぐおっ!?」
急に抱きつかれた。
ダメージはほとんどないが、多少痛みを感じる突進を腹に受け、俺は吹っ飛びかけた。
「あはははは、ちゃんと受け止めてよー」
「・・・おいおーい」
まじかまじかよまじですか。
なんでこいつがここにいる。
「レヴィ!?」
「はーい、ジークのお嫁、レヴィアタンでーす!」
「ちげえよ!」
何故か現れた魔神レヴィは、黒いローブを脱いで再び俺に抱きついてきた。
胸が当たって気持ち────なんでもない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「で、なんでお前がここにいる」
「ジークに会いたかったからぁ!」
「ぐはぁっ!!!」
俺の精神力はかなり高いはずだが、今のはやばかった。破壊力抜群だ。
ぶっちゃけると、魔神レヴィアタンは超可愛い。
前は腰あたりまでだったが、なんか肩ほどぐらいまでに切られてる綺麗な水色の髪や、まだ子供のようなその見た目、さらにその見た目で地味にある胸。
様々な要素がこのぶっとび魔神少女を可愛くみせている。
俺はロリコンではないが、何故か少し心が荒ぶった。
危ない危ない・・・。
そんな美少女に満面の笑みで会いたかったなどと言われると、流石に俺でも耐えられない。
「ふぅ、落ち着け落ち着け。それだけが理由か?」
「それだけだよ。会いに来たら何か面白そうなことやってたから、参加してみた」
「まったく・・・」
自由すぎだろこの魔神は。
まだあれから一週間だぞ、話数でいったら四話前ぐらいだぞ。再登場早すぎだ。
「むふふー」
「おま、くっつくなって!」
「なんかねー、ジークと戦ってからさ、ジークのことが頭から離れなくなったんだぁ。毎日毎日ジークのこと考えちゃうようになってね」
「っ!?」
少し頬を赤く染めてそう言うレヴィ。
やばい、やばいやばいやばいやばい!!
なんか心臓がやばいことになってる!!
もしかすると、もしかするのか!?
「ボク、ジークのこと好きになっちゃたみたい」
「ああああああぁぁぁぁ!!!」
まじかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
もしかしちゃったぁぁぁぁぁぁ!!!どこに惚れる要素があったのかは知らんけどうわぁぁぁぁ!!!
「あったかーい」
「・・・神よ」
俺は、不幸じゃない。
そう、固有スキルなんて消滅したんだ、そうに違いない。
「ジークは、ボクのこと・・・好き?」
「んぬぁ!?」
姿の見えない神に手を合わせていたところにそんな質問をされ、俺は変な声を出してしまった。
どうすれば!?
どう答えればいいんだ!?
「ま、ままままぁ、嫌いでは、ないかも知れないような気がするようなぁぁぁ!?」
「ん、んん?」
とんでもなくテンパる俺を見て珍しく混乱しているレヴィ。
だって、なんて言えばいいんだよ!
「ま、まあ、その話は置いといてだな」
「うん」
「とりあえず離れたまえ」
「やだー」
ニコニコしながら俺に抱きつくレヴィ。胸の弾力が腕に伝わってきて俺の聖剣がこんにちわしかけている。
てかこいつこんな甘えてくるキャラだったか!?
「はぁ・・・」
ついてない・・・のか分からん。
いやまあ、嬉しいんだけども、相手魔神だからね?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「・・・どうして貴方がここにいるのですか」
「なんでだと思う?」
「おいやめろ言うな!」
今レヴィがさっき俺に言ったことを目の前でダガーを握っているシルフィに言ったら、詰む。
「別に悪い魔神ではないというのは分かっているのだが・・・」
エステリーナが困ったような表情でレヴィを見た。
「む・・・」
シオンは俺にひっつくレヴィを見てムッとしている。
「ま、まあ、とりあえず他の人の試合見ようぜ」
「・・・了解しました」
シルフィは納得いかない表情でダガーを収めた。
レヴィはまだ俺から離れない。
「あ、エルフちゃんも抱きつきたいんだね?」
「へっ!?ちっ、違います!」
「あははは、顔真っ赤だよ」
「うっ、うぅ・・・」
シルフィは真っ赤な顔を隠すかのようにもじもじしながら俯いてしまった。
なにこの子、可愛いんですけど。
その後、腕に抱きついてくるレヴィ、いつもより近い距離で俺の隣を歩くシルフィ、なんとも言えない表情を浮かべるシオンとエステリーナ達と共に観客席に向かった俺は、美少女達に癒された男達から嫉妬の目で見続けられることとなるのだった。




