第二十二話 全員参加!ローレリア魔闘祭
一週間後、現在王都はもの凄く賑わっている。
王国最強を決める祭、《ローレリア魔闘祭》が始まるからである。
そして俺達は今まであることを知らなかった王都から少し離れた場所にある巨大な闘技場に集まっている。
周りを見ればムキムキやゴリゴリのおっさんで溢れかえっている。なんだこの暑苦しい空間は、地獄だ。
「あと何分待てばいいんだ?」
「30分ぐらいじゃないか?」
駄目だ、死ぬ。
と、あまりの暑苦しさに苦しんでいると、向こうの方から受付を済ませたシオンとシルフィが歩いてきた。
俺とエステリーナは既に受付を済ませている。
今回魔闘祭には俺、エステリーナにシオンとシルフィも出場することになったのだ。
「ジークさん、受付を済ませてきました」
「えらい長かったな」
「すみません、男の人達に声を掛けられていて」
「・・・なんだと?」
誰だシオンをナンパしたおっさんは。
見つけしだいメキャメキャのギッタンギッタンに────。
「ご主人様、どうかしましたか?」
「あ、いや、なんでも」
危ない危ない、思わず魔力を纏ってしまうとこだった。
「まあ、気長に待とう」
俺達を見ながら、エステリーナはそう言って苦笑した。
そして待つこと30分、ようやく開会式が行われた。
長々とルールやマナーについて説明されて俺は高校の校長を思いだした。あのおっさんほんと話長かったなぁ・・・。
その後俺達は闘技場内にある休憩所でくつろいでいる。
さて、ルールについて整理しておこう。
参加人数400人の魔闘祭は計3日行われる。
一日目は1グループ20人で闘技場に入り、戦う。そして残った二人が二日目進出である。
二日目に進めるのは40人だ。
二日目は1グループ10人で戦い、残った二人×4が最終日に進める。
最終日の戦闘形式は一対一。
残った8人でトーナメントを行う。
そして勝ち残った二人が決勝で戦う。
うん、適当にまとめすぎた。わかりにくいかもしれないけど我慢してください。
そしてその後、俺達に一日目のグループが書かれた紙が配られた。
俺は一試合目のAグループ、シオンはGグループ、エステリーナはHグループ、シルフィはKグループだ。
イツキさんは知らん。
『これより、ローレリア魔闘祭第一試合を行います。Aグループの方はバトルフィールドに集まってください』
「お、出番か」
とりあえず怪我はさせないようにしなくては。
そんなことを思いながら俺は立ち上がった。
「ジークさん、ファイトです」
「ご主人様の勝利しか想像出来ませんが、応援しております」
「頑張ってこい」
「おう!」
美少女3人に見送られながら、俺は休憩所をあとにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なんだなんだぁ?ガキが参加してやがるぞ」
「わっはっは、怪我したくなかったらとっとと失せなぁ」
うるせーなぁ。
さっきからデカいムキムキゴリゴリのおっさん達がやたらと絡んでくる。面倒臭い暑苦しい。
『それでは第一試合を開始します、準備はいいですか!!』
「「「おおおおお!!!」」」
「うるせええええええ!!」
司会の掛け声に反応したおっさん達が雄叫びをあげた。
鼓膜がビリビリしてるからまじでやめてくれえええ!!
『試合、開始ッ!!』
ゴオオオオオオン!!
銅鑼の音が鳴り響く。
王国最強を決めるための最初の戦いが始まった。
さて、やるか。
俺は飛びかかってきたおっさん達を見てニヤリと笑った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「・・・馬鹿な」
観客席でバトルフィールドを呆然と眺めている兄、イツキを見ながらエステリーナは苦笑した。
シオンは当然ですねと呟き、シルフィは満足そうに微笑みながら手を叩いている。
第一試合は、開始3秒で幕を閉じた。
ジークが迫り来るおっさん達を見てニヤリと笑った次の瞬間、彼の姿は消えた。
魔法の効果などではない、その速度を人々が目で追えなかっただけである。
気がつけば、ジークはかなり手加減したのだろうが、おっさん達は泡を吹きながら地面に倒れていた。
そんな中唯一立っている黒いマントに身を包んだ誰かがいた。
「あの人、どうしてジークさんは攻撃しなかったんでしょうか」
「二日目に進めるのが二人だからじゃないのか?」
「別にわざわざ一人だけ攻撃しない意味が俺には分からんな」
確かに、イツキの言う通りだ。
何か理由でもあるのだろうか。
疑問を抱きながらもシオン達はこちらに気づいて手を振るジークに向かって手を振り返した。




