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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
第七章:傲慢なる神帝の威光
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第47話:魔軍行進

「お待たせキュラー。状況は?」

「既に敵はレヴィ様達の接近に気づいております。城の周囲には全ての魔王クラスが配置されており、魔物共やベルフェゴールの生み出した複合魔獣も展開済み。その数、全て合わせて十万以上に達すると思われます」

「とんでもない数だね。ベルフェゴールは?」

「奴の魔力は確認できておりません。理由は不明ですが、今回の戦いには参加していないかと」


それは好都合だ。レヴィはキリッとした表情で立っているキュラーを見て苦笑した。普段は鬱陶しいことこの上ないが、やはりやればできる吸血鬼である。


「そっか。うん、ご苦労さま。それと、もう一個転移結晶を持っていたりしない?」

「ええ、こちらに」

「ありがと。じゃあこれの半分を持って王都に戻っておいて。来る時に使ったやつはもう壊れてるから」

「かしこまりました。あの、レヴィ様。褒美として、是非その御御足で私を思いきり蹴っていただけると……」

「さっさと行く!」

「ありがとうございます!!!」


レヴィに尻を蹴られ、キュラーは城に向かって飛んでいった。今ので魔族も動き出すだろう。ジーク達は覚悟を決め、大魔城に向かって駆け出した。


「それじゃあ打ち合わせ通りに!」

「了解、行くぞみんな!」


まずジーク達の接近に気づいた敵の集団に突っ込んだのは、鎌を生み出したレヴィだった。敵がただの魔族や魔物なら、一切手加減せずに叩き潰せる。今のレヴィを止められる者は、同じだけの力を持つ者以外に存在しない。


「あっはっはっ!!邪魔だーーーっ!!」


鎌を振るうと水の刃が周囲に放たれ、敵を次々と切り裂いていく。嫉妬の魔神レヴィアタンは、腕力・脚力・敏捷性・魔力……あらゆる能力が優れた万能型の紋章を持つ。ずば抜けて優れている面は無いものの、総合的な実力は今代の傲慢の魔神に匹敵するだろう。


「ふふ、レヴィは元気だな」

『我々も暴れてやるとしよう』


凄まじい熱量の炎が戦場を燃やす。エステリーナが魔神剣サタンを地面に叩きつけた瞬間、まるで火山が噴火でもしたかのように地面が爆ぜ、憤怒の炎が駆け抜けたのだ。


憤怒の魔神が他の魔神よりも上なのは一撃の破壊力。サタンは本来の姿に戻ることで、腕の一振りで城を破壊できる程の攻撃力を得ていたが、エステリーナは元から人間。攻撃の規模はサタンよりも劣るが、代わりに素早く動くことが可能になっており、更に紋章との相性が良いのか、巨神化サタンと同等の威力を誇る一撃を放つことができていた。


「二人共流石ですね……ですが、私だって負けていられません!」


森の妖精、森の宝石……様々な呼び名があるエルフ族のシルフィが、捕食者となって魔物達を屠った。新たに用意した特殊鉱石加工のダガーを二本両手に持ち、風となって暴れ踊る。


暴食の魔神の攻撃力や魔力などは魔神の中では中程度だが、紋章が持つ能力の数が多いのが特徴である。相手の魔力を喰らうことによる魔力吸収、魔力消費による肉体再生、喰らった魔力の保存と魔法模倣など。


シルフィは暴食の力をあまり好んでいないので殆ど使用していないが、魔力消費が多い時は感情よりもジークの役に立つことを優先し、魔王クラスや魔物達の魔力を喰らっていた。


「フン、物量で押せば何とかなるとでも思っているのかしら」


その美貌に目を奪われた者達を無慈悲に貫く魔剣の雨。まるでアスモデウスを守る騎士のように、魔剣は彼女に迫る存在を次々と斬り捨てていく。


色欲の魔神が誇るのは桁違いな魔力量。ジークとの共闘時に見せた超広範囲の禁忌魔法展開と長時間維持、その状態での連続魔剣錬成に魔法使用……今の彼女は禁忌魔法を使っていないので、魔力はほぼ減少していない状態である。


『私達もいきますよー!』

「ああ、城はもうすぐそこだ!」


頼れる仲間達が道を切り開いてくれている。魔王クラスが何百何千いようと、魔神四人と女神代理の敵ではない。そんな時、突如魔王クラス以上の魔力を誇る怪物が数体姿を見せた。


様々な生物が融合したかのような見た目の存在。先程キュラーが言っていた、ベルフェゴールの研究で生み出された複合魔獣である。


「さあ、ここからが本番だ!」

「ジーク様、ここは私達におまかせを!」

「よし、頼んだぞシルフィ、エステリーナ!」


複合魔獣達の攻撃を、シルフィとエステリーナが受け止める。その隙にジーク・レヴィ・アスモデウスは一気に加速して、大魔城の中へと突入した。


「複合魔獣ですか。悪趣味なことをするものです、怠惰の魔神は」

「魔人化の件も奴が関わっているからな。お前達の魂、ここで我々が解き放とう」


ジーク達を追う魔族達を押し返しながら、二人は複合魔獣の相手をする。様々な箇所から様々な攻撃が飛んでくるが、魔神相手には通用しない。エステリーナの一撃は複合魔獣の巨体を両断し、シルフィの生み出す暴風が魔族達を薙ぎ払う。


「どけーーーっ!!」

「邪魔よクズ共!!」


一方レヴィとアスモデウスも、立ちはだかる魔王クラスを容赦なく蹴散らしていた。ジークには、決戦に備えて少しでも魔力を温存してもらいたいらしい。極力自分達も魔力を使わないよう気をつけながら、ゼウスの待つ謁見の間へと迫る。


そして謁見の間に辿り着いた三人だったが、そこで妙な光景を目にすることとなった。美しいピアノの旋律が耳に届く。視線の先で、こちらに背を向けピアノを弾いている者がいたのだ。


「……舐められたものだね」

「ええ、心の底から腹立たしいわ」


いつまで経っても手を止めないその存在に怒りを向け、アスモデウスが生み出した魔剣でピアノを粉砕した。そこでようやく立ち上がり、絶望の化身は笑みを浮かべて振り返る。


「ようこそ、我が城へ。しかし驚いたよ、まさかあの状態で生きているとは」


素顔を晒した状態で、ルシフェルの体を乗っ取っている魔剣ゼウスがジークに言う。


「ルシフェルと約束したからな。魔剣ゼウス……お前をぶっ倒して、彼女を必ず解放してみせるって」

「ほう……貴様、何故それを」

「本人から聞いたんだ。天界を追われた彼女の体を乗っ取って、傲慢の紋章を得て好き勝手してるってな……!」

「フン、なるほど。そう、私はかつて天界一の武具と言われていた宝剣ゼウス。天使というのは自分こそが絶対的に正しいと思い込み、その他全てを悪とする愚かな屑共だ。私は奴らに嫌気がさし、自らこの魔界へと堕ちた。そして歴代の所持者共を殺し、魔力を奪い、私は究極の力を持つ魔剣となったのだ」


本体である魔剣が光を纏う。あれを破壊しルシフェルを解放することが、今回の目的である。


「この女は素晴らしい逸材だよ。天界最高の実力者で、その体を乗っ取った私は傲慢の魔神となることができた。この私から哀れな堕天使を解放するだと?はははっ、させるものか!私はこの力で天界を滅ぼし、真なる王として君臨するのだ!」

「呆れたわ……」

『その傲慢がいつか身を滅ぼしますよ』

「クク、どうだろうな」


ゼウスが魔力を纏う。あまりにも圧倒的で、浴びるだけで嫌という程実力差を思い知らされてしまう、絶望的な魔力を。


「良いことを教えてやる。貴様らが救おうとしている天使ルシフェルは消滅する寸前だ。もう私に抵抗する力すら残っていない」

「なっ……」

「ゆえに今の私は全ての力を使うことができる。生きて帰れるとは思うなよ」


ゼウスがそう言った瞬間、突如ジークの足もとが発光し、魔法陣が展開された。そして驚く彼の体を包み込み、レヴィ達の前から消し去ってしまう。


「転移させられた……!?」

「チッ、仕掛けてたのね」

「はははははっ!奴の相手は貴様らを叩き潰した後だ!これまで私を幾度となく邪魔してくれたあの男に地獄を見せてやろうではないか!」

「全員同時に相手するのかと思えばジークだけ別の場所に飛ばすなんて、傲慢の魔神が聞いて呆れるね!」


レヴィが紋章を解放し、凄まじい魔力を解き放つ。アスモデウスも紋章を浮かび上がらせ、大量の魔剣を展開。初めから全力で行かなければ、この化物には届かないだろう。

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