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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
第七章:傲慢なる神帝の威光
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第46話:意外な協力者

三日後、魔界突入当日。


シオン、マモン、ロゼ……それに話を聞いたイツキやノエル達が、決戦に臨むジーク達を見送るために集う。エステリーナは兄達と言葉を交わし、レヴィはマモンを変なことしちゃ駄目だよとからかい、シルフィは心残りがないようにとギリギリまで家の掃除をして……その時はやって来た。


「それじゃあ、行ってくる」


ジークが転移結晶に魔力を込め、見送りに来てくれた人達に言う。話を聞いた多くの人達が自宅前に集まっており、応援してくれている皆のために負けられないなと改めて思った。


「ジーク、どうかご無事で」

「ああ、こっちは頼むよ」


最後にシオンと拳を合わせ、ジークは転移結晶を起動した。周囲が光に包まれ、範囲内に立つ者が一瞬で別の場所へと移動する。僅か数秒後、そこは見慣れた王都ではなく、遥か海の先にある暗黒の大陸だった。


死の大地、魔界。遥か上空に存在すると言われる天界、そこからの侵入者を阻む瘴気を含んだ黒雲に空は覆われ、枯れた地に転がるのは無数の骸。弱小魔族は更に暗い場所へと身を隠し、強者のみに自由が許される。


ジークはアルテリアスの魔力を、シルフィ・エステリーナは紋章の力を使うことで瘴気から身を守り、周囲を見渡しながら息を呑んだ。


「こ、ここが魔界……」

「なんだか嫌な空気です」

「とりあえず、キュラーが無事に接触できていたら、例の味方が来る筈だけど……」


遠くから猛スピードで飛んでくる魔族が一人。レヴィは彼を見て、止まれという意味で手のひらを前に向けた。


「レヴィ様!このキュラー、無事に任務を遂行いたしました!」

「うんうん、偉いね。やればできるね。それで、彼女・・は?」

「あの女ならすぐそこに」


キュラーを追ってきたのか、こちらに向かって歩いてきていた少女。そんな少女を見てジーク達は目を見開き、少女もまた心底驚いたようにジーク達を指さした。


「あ、アスモデウス!?」

「ジーク・セレナーデと仲間達!?な、なんであんた達が魔界に……!?」


そう、その少女はかつて王都を占領した色欲の魔神アスモデウスだった。困惑しているアスモデウスやジーク達を見て、レヴィは満足そうに笑う。


「対魔剣ゼウスの協力者はアスモデウスだよ。いやぁ、ちゃんと来てくれなかったらどうしようかと思った」

「何よ魔剣ゼウスって!あんた、ルシフェルと闘うから情報を聞きたいって言ってたんでしょう?」

「あれかな、ジークの頼みって言ったから素直に聞いてくれたのかな?」

「ばっ、な、何言ってんのよ!馬っ鹿じゃないの!?」

「俺何も言ってないんだけど……」


顔を真っ赤にしたアスモデウスに詰め寄られ、ジークは苦笑する。レヴィが何を伝えていたのかはよく分からないが、久々にこの少女の顔が見れて少し安心した。


「まあ、詳しく説明すると────」


レヴィの話を聞いて、アスモデウスは驚きながらも一度で状況を把握してくれた。王都戦以降ゼウスを裏切って追われ続けていたので、倒せば自由に動けるという理由で協力してくれるらしい。


「それで、これからどうするのよ。ルシフェルを支配している魔剣ゼウスを破壊するのは分かったけど、このまま真っ直ぐ敵のいる城に向かうつもり?」

「一応その予定だね」

「はぁ、やっぱり馬鹿ね。居場所がバレれば確実に魔王クラスが送り込まれてくるわ。その度にあたし達は戦って魔力を消費してしまう。逃げるにしても、無駄な体力と時間を使ってしまう。なら、気づかれないようなルートを決めて進むべきよ」


アスモデウスによると、魔界中を移動し続けある程度安全な場所をいくつか見つけていたらしい。そこを通ってゼウスの待つ城に向かえば、戦闘を行わずに済む可能性が高いのだとか。


「とりあえず、あたしについてきなさい。最短でも一日はかかるけど、文句は言わせないわよ」

「ああ、よろしく頼む」

『あのー、少しいいですかー?』

「何よ、急いでるんじゃないの?」

『それはそうなんですけどー、アスモデウス貴女、空飛ぶ気満々ですよねー?』


そう言われ、アスモデウスは額に手を当てた。忘れていたが、ジーク達は空を飛べないのだ。


「最短ルート、無理だわ」

「ど、どうするのですか?」

「極力安全なルートを徒歩で進むしかないわね。結構時間がかかると思うけど、飛べないあんた達が悪いのよ」

『フッ、前途多難だな』


キュラーには先に向かってルシフェルの様子を探れとレヴィが指示し、ジーク達は駆け出した。時折魔物が飛び出してくることもあったが、魔力を使わずそれを撃退。順調に魔神の城へと近づいていく。


「駄目ね、夜になるわ。暗闇の中だと視界が悪くなって危険だし、あたしの隠れ家で朝を待ちましょう」


その後、アスモデウスに案内されてとある洞窟の奥へと向かった特務騎士団一行。そこには簡易的なベッドや生活に必要なものなどが置かれており、ジーク達はここで疲れた体を休めることに。


「魔界各地にある隠れ家の一つよ。まあ、何もないけど休憩するだけなら十分でしょ」

「このベッド、アスモデウスの匂いがするー」

「なっ!?ちょっと、体を洗ってないのに寝転ばないでよ!」


ここに辿り着くまでには湧き上がった地下水も流れており、女性陣がそこで体を洗っている間、男のジークは待機していろとアスモデウスに言われた。


「……何よ」

「いや、なんでいるのかなと」

「あたしの隠れ家で何をしようと、あたしの勝手でしょ。あんたがレヴィアタン達に変なことをしないかってのと、あたしの私物を使って変なことをしないかってのを監視してるのよ」

「別にしないけど……」


随分信用がないなとジークは苦笑する。そんな彼から目を逸らし、アスモデウスは前髪を指で弄り始めた。


「……も、もうくたばってるもんだと思ってたわ」

「そんな簡単にはくたばらないよ。まあ、数日前に死にかけたけども」

「ふ、ふ〜ん。それで、あれからレヴィアタンとはどうなのよ」

「え、いやあ、それは……」

「何よ、気になるじゃない」

「ええと、告白はされた」


アスモデウスが顔を赤くしながら両手を口元に押し当てる。


「その、返事は待ってもらってるけどな」

「そ、そうなんだぁ、良かったわね」

「そう言うアスモデウスはどうなんだよ。気になる相手とかいたりしないのか?」

「い・な・い・わ・よ!あたしは基本的に、下品なことばかり考えてる男が嫌いなの。あんたもよ、ジーク・セレナーデ」

「か、考えてねえっつの!」


妙に顔が熱い。アスモデウスはあまりその顔を見られないように体の向きを変えながら、早まる鼓動を落ち着かせようと胸に手を当てる。


(い、意味が分からないわ。ただ喋ってるだけなのに、何を緊張してるのよあたしは……)

「おい、どうかしたのか?」

「っ、何でもないわ。あんたのことなんて別に何とも思ってないんだから」

「お、おう……?」

(あーもう、モヤモヤする……!)


そう思いながら顔を上げたアスモデウスを、物凄くニヤニヤしながら見ていた者が二名いた。


「アスモデウスって、胸が小さいのを気にしてるからボクらと水浴びするのを避けたんだと思ってたけど……」

「ジークとイチャイチャしたかったんですねー。素晴らしいツンデレっぷり、ごちそうさまでしたー」

「っ〜〜〜、胸が小さいのなんて気にしてないんですけど!!?」

「あ、食いつくとこそっちなんだ」


それからアスモデウスを落ち着かせ、しっかり体を休めて翌朝に隠れ家を出発。魔剣ゼウスが待つ大魔城に辿り着いた頃には更に一日が経過していた。

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