表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
第七章:傲慢なる神帝の威光
253/293

第44話:最凶の黒翼

「何が天地を統べる王ですか!面倒だからとか言って、シオンさんを人質にしてジーク様を脅すなんて!」

「でも、あのルシフェルがボク達との戦闘を避けるなんて。全員同時に相手するって言いそうなもんだけど」


説明を終えたジーク達は、一度家に戻って情報を整理した。ロゼも起きてしまっていたのだが、今は部屋に戻ってもらっている。


「しかし、急いだ方がいいのではないか?いつまでもシオンが無事だとは限らないぞ」

「だからって、ジーク一人で行かせるってのは危険過ぎる。俺との戦いで全身ボロボロ、魔力も回復しきってない状態でルシフェルに勝てるとは思えねえ」

「……それでも、行くしかない。町中で暴れられなかっただけでもありがたい状況だ」

「で、でもよ……」


ジークはネックレス状態のアルテリアスに触れ、頬を緩める。


「俺に預けてるから殆ど魔力を持ってないのに、無理して回復しようとしてくれなくていい。俺を信じて待っていてくれ」

『ジーク……』

「万が一の時は、みんなを頼むよ」


そう言ってジークは歩き出した。もう既に準備は終えてある。あとは魔力を追い、ルシフェルが待つ場所に向かうだけだ。


「ジーク、負けないでね……!」

「信じています、ジーク様!」

「ああ、行ってくる!」


家を出たジークは、アルテリアスから教わっていた魔力探知を使ってルシフェルを追った。あまり遠くない場所に、凄まじい魔力の持ち主がいることが分かる。全力疾走しながらジークは王都を飛び出し、そしてその場所へ向かった。


「っ、教会か……」


やがて辿り着いたのは、街道から外れた獣道の先にあった朽ちた教会。この中に、傲慢の魔神がいる。ゴクリと唾を飲み、ジークは重い扉を開けて中に足を踏み入れた。


「ようこそ、ここが貴様の墓場になると知ってよく来たものだ」

「ルシフェル……!」


窓から差し込む光に照らされた、傲慢の魔神ルシフェル。足元にはシオンが倒れており、ジークはルシフェルを睨む。


「クク、そう睨むな。別に殺してはいない」

「……お前は、何故王国を襲っていた」

「フム、この私に質問か。まあいいだろう、どうせ貴様はここで果てる運命なのだから」


両手を広げ、ルシフェルが言う。


「この黒く染まった翼を見れば分かると思うが、私は堕天使。天界から地上に堕とされた元天使だ」

「堕天使……」

「私の目的は天界の殲滅。自分達が全て正しくその他を悪と決めつける愚か者共に、身の程というものを思い知らせてやるのだ」


かつてアルテリアスが終結させた大戦……通称神魔大戦。ルシフェルが言っていることが本当なら、現代で再びそれが引き起こされるということになる。


「戦力を増やすため、私は魔王共を使い人間を攻撃した。貧弱な人間共など魔王だけで制圧できると考えたからだ。しかし、そんなタイミングで女神アルテリアスの復活を聞き、最も邪魔になる貴様らを始末するため魔神を動かした」


紫紺の魔力がルシフェルの体から溢れ出す。


「だが、魔神共は敗れた。それならこの私自らが貴様を葬ってやろうと動いたわけだ」

「まだ聞きたいことはある。王都の地下にある石版、それを調べさせていたそうじゃないか」

「ほう、それも知っていたか。あれは私の計画に必要な道具、天界と下界を繋げる〝門〟だ」

「っ……あれを使って天界に攻め込もうって考えか」


ルシフェルの手元に禍々しい魔剣が現れる。それを手に取ったルシフェルは、魔力を纏いジークに殺気を向けた。


「さて、そろそろ英雄殿をこの世から消し去るとしよう」

「くっ……!」

「安心しろ、この娘を盾にその場から動くなとは言わん。思う存分死の運命に抗うといい。それに今は、私を討つチャンスでもある」

「なんだと?」

「貴様は体調を崩したりはしないか?腹立たしいが、今の私はまさにその状態だ。どうだ、素晴らしい状況だろう」


拳を握り、残り少ない魔力を纏ってジークは構える。ここで死ぬわけにはいかない。ルシフェルを倒し、シオンと共に仲間達のもとに帰るのだ。


そう思った次の瞬間、音もなく絶望の化身は目の前に現れた。


「何を油断している。もう殺し合いはとっくに始まっているぞ?」


魔剣を受け止めたが、力負けして吹っ飛ばされる。そして扉を突き破って外に転がり出たジークは、顔を上げて息を呑んだ。


満月を背にこちらを見下ろす最凶の魔神。尋常ではない魔力が大気と地面を震わせ、怪しく輝く魔剣の切先をジークに向けている。


「ば、化物め……!」


レヴィ、ベルフェゴール、サタン、アスモデウス、ベルゼブブ、マモン……これまで出会った魔神達。それら全てを合わせても、ルシフェルには敵わないのではないかと思ってしまう程の圧がジークを襲う。


王都でルシフェルが皆を前に退いたのは、先程言っていた体調不良のようなものが原因なのだろう。これまで姿を現さなかったのも恐らくそれが関係している。


しかし、もしあの魔神が万全の状態で現れていたら。間違いなく全員を相手にその力を存分に振るい、絶望的なまでの力の差を見せつけていた筈だ。


「怪我人を相手に本気は出さんよ。軽く遊んでやるだけだ」

「くっ、ふざけやがって!」


地を蹴り、ルシフェルとの距離を詰める。しかし振り抜いた拳は空振り、背中に衝撃を浴びてジークは地面に叩きつけられた。


「ハハハハハハハっ!!」

「っーーーーー!」


ルシフェルが魔剣を連続で振るう。そこから放たれた魔力の刃が次々と地上に迫り、大地を抉りとっていく。辛うじてそれらを回避していたジークだったが、猛スピードで接近してきたルシフェルに蹴り飛ばされ、何度も木に激突しながらようやく止まる。


「つ、強い……まだ魔力を纏っただけの状態なのに」


輝きを放つ斬撃が迫ってくる。立ち上がりそれを躱したジークは、身体強化を発動してルシフェル目掛けて駆け出した。


「その状態で、よくそんな動きができるものだ」

「一撃で決める……!」


油断しているのか、舐められているのか。ジークは一切手加減せずにルシフェルの顔面を真正面から殴り、魔力を放った。


「【零距離魔道砲ゼロインパクト】!!!」


マモンとの戦闘よりは威力は落ちているが、首から上が吹っ飛んでもおかしくはない渾身の一撃。だからこそ、受けた衝撃はこれまで一番だったかもしれない。


「────クク、いい一撃だ」

「うそ、だろ……!?」


その場からピクリとも動かず、心底つまらなさそうに呟いたルシフェル。ほぼ全ての魔力を今の一撃に込めたジークはふらりと後ずさり、その場に膝をつく。


しかし、そんな彼の前に黒い破片がボロボロと落ちた。見れば、ルシフェルの顔を覆っていた兜が砕けていた。そして見せたその素顔は、ジークに更なる衝撃を与えることになる。


「ほう、私の魔力を貫き砕くとはな」

「お、女……なのか?」


肩ほどまで伸びた純白の髪、こちらを見つめる真紅の瞳、傷一つない白い肌。それらを持った魔神ルシフェルは、美しく幻想的な容姿の〝少女〟にしか見えなかった。


「男だろうが女だろうが、そんなことは関係ない。力を持つ者だけが頂点に君臨することができる。確かに私は女だが、誰もがひれ伏し命乞いをするのだ」

「くっ……!」

「女は殴れないか?その甘さが弱者の証、貴様では私に勝てんよ」


地面を殴り、舞い上がった砂と石で姿を隠す。その隙にジークはルシフェルの背後に回り込み、側頭部目掛けて蹴りを放った。


「遅い」

「ッ──────」


そんな攻撃もルシフェルには通じず。まったく見ずにその蹴りを腕で受け止め、振り向いた勢いでルシフェルはジークを斬り裂いた。鮮血が散り、ジークの視界が真っ赤に染まる。


更にルシフェルは浮いたジークを目にも留まらぬ速さで斬り刻み、最後にジークを教会目掛けて弾き飛ばした。そして何度も転がりながら教会の中に入り、奥の壁に激突する。


「フン。無様だな、ジーク・セレナーデ」


興味が失せたのか、心底つまらなさそうにそう言いながらルシフェルが教会内を歩きジークに迫る。連続で急所を斬ったので、もうじき息絶えるだろう。そう思っていたルシフェルだが、ジークに駆け寄った人物を見て口の端を上げた。


「ジーク、しっかりしてください!」

「目覚めたか。残念だが、その男は助からない」


連れてきていたシオンが目を覚まし、顔を真っ青にしながら倒れたジークの体を揺する。しかし、全身から流れ出る血に触れて彼女は言葉を失った。そんな様子を見ながら、ルシフェルは怪しく輝く魔剣を振り上げる。


「貴様もその男と共に殺してやろう。愛する者との死出の旅を楽しむといい」

「あ、あなたが……」

「ん……?」

「お前が、ジークを……!」


シオンがルシフェルを睨む。それと同時にルシフェルは額への衝撃を感じ、仰け反った。驚いたものの、足に力を入れて踏ん張り耐える。


「ははっ、一体何をした!?」

「っ……!?」

「ああ、なるほど。ベルフェゴールが嬉々として語っていたのはこれか!ははははっ、面白いじゃないか!」


シオンにも何が起こったのか分からないのか、笑い始めたルシフェルを困惑しながら睨む。ただ、何故か頭が激しく痛む。見知らぬ光景が頭に浮かんだ時にくる痛みと同じだった。


「だが、よくも私に手を出したものだ。今ここで果てるがいい、ジーク・セレナーデ共々な!!」


ルシフェルが振り下ろした魔剣から守るように、目を閉じながらシオンはジークに覆いかぶさる。しかし、いつまで経っても痛みがやってこない。目を開けると、今まさに自分達を殺そうとしていたルシフェルは、額を押さえながらよろめいていた。


「ぐうっ……!?お、おのれぇ、まだ抵抗するというのか……!」

「な、何を……」

「忌々しい女め……!どこまで私の邪魔をすれば気が済むというのだ……!」


何を言っているのか分からない。ただ、明らかに様子がおかしかった。誰かに話しかけながら、痛みに耐えるかのように全身を震わせているのだ。


「それにこの反応、レヴィアタン達がここに向かっているな……!?だが、ジーク・セレナーデは始末できた……命拾いしたな、小娘……!」


そう言うと、ルシフェルは教会の天井を突き破って空の彼方へと飛び去った。レヴィ達がここに到着したのは、それから数分後のことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ