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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
第二章:嫉妬する災厄の権化
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第6話:嵐が迫る

「やああっ!」


草原を駆け抜けた小さな妖精が、手にしたダガーで魔物の命を刈り取る。そんな姿を見ながら、ジークは素直に凄いと思った。


やがて全ての魔物を仕留めた妖精が、笑顔でジークに駆け寄ってくる。まるで、主人に褒めてもらおうとしている犬のようだ。ジークは苦笑し、妖精───シルフィの頭を撫でる。


エルフ族は基本的に弓と風魔法を合わせて戦うらしいが、シルフィの戦闘方法はまるで違う。風魔法を使う点は同じだが、遠距離よりも近距離戦を得意とし、扱う武器はこの前訪れた鍛冶屋で最も使いやすいと気に入ったダガー。


その他にも多くのナイフ等を携帯しており、エルフと言うよりは暗殺者のようにも見えた。勿論ジークは思ってもそれを口にはしていない。


「えへへ……」


それにしても、随分と懐かれたものである。今では王都でも有名な人気者となった彼女だが、ジーク以外の男性は殆ど相手にしていない。勿論会話をしたりはしているのだが、ここまで素を見せるのはやはりジークに対してだけだった。


今も頭を撫でてやれば、頬を赤らめ目を閉じて、心底気持ち良さそうに口元を緩めている。エルフ族の特徴である長い耳も、気持ち良さを表現するようにピコピコ動いていた。


「……何をデレデレしているのですか」

「え、いやぁ」

「気を付けてくださいね、シルフィ。この人はケダモノです。油断していると何をされるか分かりませんよ」


シオンがムスッとしながら適当な事を言う。それに対してシルフィは、若干頬を膨らませながらシオンに目を向けた。


「ご主人様はケダモノなどではありません!それに、ご主人様になら、別に何をされても……」

「ぐっ、既に手遅れでしたか……」

「な、何の話をしてるんだ?」


謎の闘いが始まったので、ジークは汗を垂らしながら後ずさる。そんな彼の背中に当たった、信じられない程柔らかいもの。振り返れば、第二騎士団長であるエステリーナが立っていた。


という事は、今背中で味わった感触は───


「ご、ごめん!」

「いや、別に気にしていないぞ?それにしても、賑やかになったものだな」

「ん、確かにな。馴染んでくれるか心配だったけど、シルフィも今ではあの調子だし」

「ふふ、それはジークのおかげだろう」


そう言われると、何だか照れくさい。ジークは頬を掻き、そして思った。何故エステリーナがここにいるのだろう、と。


「実は休暇を貰ってな。ジーク達がここで魔物討伐を行っていると聞いて来たんだ」

「そうなのか。まあ、魔物討伐は今終わっちゃったんだけど」

「見ていたよ。相当な実力者だな、シルフィは」

「だろう?」


自慢げに言うジークを見て、エステリーナが苦笑する。と、不意にエステリーナが魔力を纏った。ネックレス状態のアルテリアスも、何かに気付いて目を覚ましたらしく、ジークは警戒しながらエステリーナの視線を追う。


「あれは……飛竜ワイバーンだ!」


猛スピードで空を舞う巨影。その姿を確認したエステリーナの声を聞き、シオンとシルフィがジークのもとに駆け寄ってくる。


「こんな場所に現れるとは……まさか、魔王クラスが?」

『いえ、それなら私が感知していますー。というかあの飛竜、誰かを追っていませんかー?』

「え?」


目を凝らすと、確かに誰かが迫る飛竜から必死に逃げている姿が目に映る。しかもそれは、まだ幼さの残る少女だった。


「まずい、助けないと!」


咄嗟に地を蹴り、跳躍。ほぼ一瞬で飛竜の真上まで到達し、自分の速度に驚きつつも、ジークは飛竜を蹴り落とした。


強化された蹴りは魔王クラスに劣る飛竜を容赦なく地面にめり込ませ、飛竜は暫く痙攣した後完全に沈黙する。


「大丈夫か!?」


追われていた少女が、腰を抜かしたように座り込む。そんな彼女に駆け寄り声をかけると、少女は暫くジークを見つめてから笑みを浮かべた。


「ありがとう、助かったよ」

「ああ、間に合って良かった」


手を伸ばして少女を立たせてあげると、身長はシルフィとほぼ変わらない事に気付く。肩より少し長い群青色の髪はまるで海のようで、童顔だがその大きな胸につい目がいってしまう。人間離れしたその可愛らしさは、ジークにまた新たな衝撃を与えていた。


「どうして襲われてたんだ?」

「あはは、お腹が空いたから卵を貰おうと思ったらバレちゃって。でも面白かったよ。飛竜に追われるなんて、滅多にない事だもん」


興奮気味に話す少女。ジークがポカーンとしていると、遅れてシオン達がやって来た。


「ジーク、彼女は……」

「あ、自己紹介が遅れたね。ボクはレヴィ、よろしく」

「俺はジークだ。こっちは───」


それから自己紹介を終え、ジーク達はレヴィを連れて王都へと戻った。どうやら空腹が限界のようだったので、何かご馳走してあげようと思ったのだ。


「いやあ、ここの料理は最っ高だね!ごめんねぇ、こんなにご馳走してもらっちゃって」

「おう、どんどん食えよ」


ジークがシオンと共にしょっちゅう訪れる料理店に連れていけば、幸せそうに次々と料理を口に運ぶレヴィ。彼女を見て周囲の客や従業員達も思わず笑みを浮かべており、ジークの頬も自然と緩む。


「そういや、お腹が空いたから飛竜の卵を食べようとしたって言ってたけど、レヴィは普段何をしてるんだ?」

「ボクは……んー、旅をしてる最中なんだ。だけどすぐに所持金を使い切っちゃってねぇ、それからは毎日食料を求めて走り回る生活だったよ」

「た、大変だったんだな」

「まあ、そのおかげで君達に出会えたからね。そう考えると飛竜の巣に行ったのは正解だったのかも」


にっと笑うレヴィは、まるで無邪気な子供のようだった。シオンやシルフィともすっかり打ち解けており、エステリーナとも楽しげに会話をしている。不思議な少女だなと、ジークは思った。


『それにしても、見事な容姿ですねー。特にその胸、所謂ロリ巨乳というやつでしょうかー』

「ぶっ!お、お前なぁ……」

「こんなのあっても邪魔なだけだよ?」


シオンとシルフィの表情が変わる。特にシルフィは、何故か自分の胸に手を当て泣きそうになっていた。


「ね、エステリーナ」

「え、まあ、その……」

「おやぁ?エステリーナは案外恥ずかしがり屋なんだねぇ。こんなに立派に育って……つんつん」

「ひっ!?」


ぐへへと、レヴィが変な声を出しながらエステリーナに絡む。段々彼女がどんな性格なのか分かってきた気がした。


「ま、あればその分誰かさんを誘惑するのには役立つけど」

「なっ……」

「あははっ、赤くなっちゃって。かーわいー」


見た目は小柄で幼く見えるが、年下扱いされている気がしてジークは何とも言えない気持ちになった。その隣では、シルフィがレヴィの胸を見ながら悔しそうに震えている。


「それで、レヴィさんは今後どうする予定なのですか?」

「うん?そうだなぁ、暫くは王都に滞在しようかな。ただ、お金が無いんだよねぇ」

「部屋なら貸すぞ?あと何部屋か余ってるとこがあるから」

「いいの!?」

「私も構いませんよ。ただ、夜は気を付けてくださいね」

「ボクは全然OKだよ?」

「OKじゃないです!そもそも、ご主人様はそんな人ではありません!」


ワイワイ盛り上がる女子三人。エステリーナはその手の話が苦手そうで、そこをレヴィに弄られていた。ジークは脳内に直接語りかけてくるアルテリアスをスルーしながら、当分騒がしくなりそうだなと苦笑した。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「レヴィさん、ご主人様から離れてください」

「えー、いいじゃん別にー」

「だ め で す」

「いだだだだっ!?」


店を出て外を歩いていたジークだったが、腕にぴったりと身を寄せてくるレヴィをシルフィが無理矢理引き離そうとして、その際レヴィがジークの腕をがっしりと掴んでいたので、腕が引きちぎれるかと思ってしまう程の激痛を感じたジークは悲鳴を上げた。


先程から、ずっとレヴィはこの調子である。出会ったばかりだが随分ジークを気に入ったらしく、こうして何かとくっついてくるのだ。


「くっそ、羨ましい……!」

「また新しい子を連れてやがるぞ……!」

「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪」


おかげで周囲から飛んでくる嫉妬の視線が常に全身へと突き刺さり、胃が痛い。エステリーナは美人騎士団長として元々有名であり、シオンとシルフィも可憐な容姿で人気急上昇中。そんな三人に加えて新たな少女を連れて歩いているのだから、ある意味この反応は当然とも言える。


「こら、レヴィ。ジークにあまり迷惑をかけるんじゃない」

「むあっ……」


そんな時、エステリーナがレヴィの首根っこを掴んでレヴィをひょいと持ち上げた。華奢だが凄まじい腕力である。


「ふっふっふっ、正妻の余裕ってやつ?」

「なっ!?ちち、違う!」

「あははっ、冗談だって」


手を離され、レヴィが顔面から地面に激突する。やった本人は若干焦っていたが、すぐに立ち上がったレヴィは笑顔のまま駆け出した。


「何というか、元気な子だな」

『ふふ、実は魔神だったりするかもしれませんよー?』

「はあ?そんな訳ないだろ」

『どうでしょう。確かに可愛らしい女の子ですが、時折妙な感じがするんですー。例えば、先程シルフィとエステリーナに引き離された時とか……』

「それは……まあ、引っ張られたりするのが嫌だったんじゃないか?」

『そうだといいのですけど……!?』


アルテリアスの声が裏返る。気が付けば、目の前に立つレヴィがジークの目を覗き込んでいた。それにはジークも跳び上がる程驚き、思わず尻もちをついてしまう。


「……大丈夫?」

「あ、ああ……」

「なーんかお話してるっぽかったからさ。どうしたのかなーと思って」

「ふ、普通に声をかけてくれると助かるかな」

「いやぁ、今のは絶対驚くと思ってね」


いたずらっぽく笑うレヴィに、シルフィが頬を膨らませながら駆け寄る。それから逃げるように走り出したレヴィは、誰がどう見ても魔神などには見えない。


「……ぷっ。珍しく変な声出したな」

『気の所為ですぅー!ジークだって、びっくりして腰抜かしてたじゃないですかー!』

「それこそ気の所為じゃないか?」


からかうようにそう言ってやると、アルテリアスの感情を表情するかのようにネックレスは点滅した。


「ジーク、大丈夫か?」

「おっと、ありがとうエステリーナ」


暫くアルテリアスの反応を見て楽しんでいたジークだったが、少し疲れた様子のエステリーナに手を差し出され、その手を借りて立ち上がる。どうやらレヴィに散々絡まれたらしく、何を言われたのか彼女の頬は若干赤い。


「はは、お疲れ様」

「同年代くらいの女性は皆ああいう話をするのだろうか……私が遅れているのかな」

「ま、そういう所がエステリーナの魅力なんじゃないか?」

「……それは褒めているのか?」


じーっと見つめられ、ジークは目を逸らす。まあ、今の言葉に偽りはない。実際、純粋でそういう話があまり分からないというのは、ジーク的には可愛らしいポイントである。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







「へえ、特務騎士団……ね。面白そう、ボクも入っていい?」

「駄目だ、危ないよ。魔王クラスと戦う時だってあるからな」


自宅に到着し、そのままエステリーナにも手伝ってもらいながらレヴィの部屋を用意したジーク達。それから菓子を食べて話をしていると、レヴィが特務騎士団に興味を示した。


しかし、入る事は許可しない。シオンとシルフィはエステリーナも認める程の実力者だが、レヴィに関してはどれだけ戦えるかが分からない。なのでジークが駄目だと言えば、レヴィは不満そうに頬を膨らませた。


「ボクだって戦えるもん!」

「とは言っても、それを認めるのはイツキさん……第一騎士団長だからな。あの人にレヴィの実力を見てもらわないと、何とも……」

「ふーん?だったらその人を呼んでよ」

「え?」

「認めさせればいいんでしょ?シオンやシルフィが良くて、ボクだけ仲間はずれにされるのは嫌だな」

「でもお前、またいつか旅に出るんじゃ……」


ムーっと見つめられ、ジークは肩を竦める。ただ自分達と一緒にいたいからという理由で騎士団に引き入れるのは駄目だと思うが、イツキに実力を見せるだけなら構わないだろう。


「それじゃあ私が兄さんに話をしよう。レヴィ、ついてきてくれるか?」

「りょうかーい!ジークは来ないの?」

「ご主人様は私と買い出しです」

「そっか。じゃあ楽しみに結果を待っててよ」


そう言って、レヴィがエステリーナと共に家を出た。かなり自信があるようだったが、果たしてどうなる事やら。


「ご主人様、そろそろ出かけますか?」

「ああ、シオンはどうする?」

「誰かさんが書き忘れていた報告書を完成させなくてはならないので」

「うぐっ、そうだった」

「冗談ですよ。こういう仕事は私に任せてください」

「シオン……ありがとう」


素直に礼を言われて照れてしまったのか、プイっとシオンが顔を背ける。そんな彼女に苦笑しながら、ジークはシルフィと共に食料品などの調達に向かった。


最初シルフィは一人で大丈夫と言っていたが、心配だったジークが説得して同行する事になったのだ。これが子を授かった親の気持ちというものだろうか。


「さてと……」


暫くして百貨店へと到着したジークは、食材売り場で比較的安値の食材を探した。騎士団からお金を受け取っているとはいえ、あまり使いすぎるとすぐに無くなってしまう。


「安いもの……安いもの……」


シルフィも、真剣に食材を選んでくれている。と、そこでジークはある事を思いついた。家ではそれぞれに小遣いを渡しており、ジークも自分の分がまだ余っている。それを今使おうと思ったのだ。


「悪い、シルフィ。ちょっと用事ができたから、今から言う食材を買っておいてくれないか?」

「はい、分かりました」


仕事が貰えて嬉しいのか、むんっとやる気を見せるシルフィ。そんな姿が可愛らしかったので頭を撫でた後、ジークは残りの食材を伝えて百貨店内にある服飾品売り場へと向かう。


『あらー、シルフィにプレゼントですかー?』

「ああ、頑張ってくれているからな。今回はシオンとエステリーナ、レヴィにも買うつもりだ」

『ちょっと待ってください、一人忘れているじゃないですかー!』

「え、誰?イツキさんかノエルさん?」

『わ た し で すぅーっ!』

「いや、お前自身がネックレスなんだし……」

『関係ないですー!私だけ何も買わないなんておかしいですー!不平等ー!女神差別反対ー!』

「わ、分かった分かった。買うから落ち着けってば」


時折子供っぽい所が困る。ただ、駄々をこねている子供のようだったので、ジークはやれやれと息を吐きながらもアルテリアスの分まで購入する事にした。


「どれにしようか……」


まずは、一番頑張ってくれているシルフィへの贈り物。ただ、こういうものを買った経験が無いので、早くも困ってしまう。そんな彼の悩みが分かったのか、アルテリアスが口を開いた。


『皆さん、貴方からの贈り物なら何でも喜んでくれますよー。その人に似合いそうだと思うものを購入すればいいのですー』

「ふむ、それなら」


少し悩んだが、ジークは翡翠色の魔結晶が埋め込まれたネックレスを手に取った。それからレヴィには同じく蒼色の魔結晶が埋め込まれたネックレス、エステリーナには髪を束ねる用のリボン、シオンが前に欲しがっていた、魔除けの効果があるブレスレットを購入し、財布の中身がすっからかんになりながらもジークは食材売り場へと戻る。


どうやらシルフィは買い物を済ませたようで、両手に袋を持って入口前で待機していた。やはりと言うべきか、何人かの男達に絡まれていたので追い払ってから袋を受け取る。


「わ、私も持ちます!」

「え……じゃあ、片方は持ってもらおうかな」

「はい。ところでご主人様、一体どこに行っていたのですか?」


そう言われ、ジークは先程購入したネックレスを取り出した。それを見てシルフィはキョトンとしていたが、自分の首にそれが付けられた直後に目を見開いて動揺する。


「ご、ご主人様、これは……!?」

「日頃のお礼って事で。シルフィに似合うと思ったんだ」

「こ、こ、こんなものを受け取ってもいいのですか!?私など、大した働きは……!」

「いやいや、めちゃくちゃ助かってるよ。いつもありがとうな、シルフィ」

「っ〜〜〜!」


頬を赤く染めながら、嬉しさを隠し切れていないのか頬が物凄く緩んでいるシルフィ。そんな反応を見れば、今回の贈り物が大成功だったとすぐに分かる。


「ありがとう、ございます。一生大事にします!」

「はは、それは嬉しいな」

『ち、ちょっとー、私への贈り物は?』

「あ、忘れてた」

『最低ですぅー!』






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「ば、馬鹿な……」


以前ジークと手合わせをした修練場で、イツキは呆然と視線の先に立つ少女を見つめていた。


最初は確かに手加減していた。しかし、すぐに彼は意識を切り替えた。手を抜けば(・・・・・)死ぬ(・・)───そう思い、恐らくシルフィとほぼ同じくらいの年齢である少女を相手に、ジークを相手にした時以上の魔力を解き放ったのだ。


それでも、結果は惨敗。手も足も出ないとは、まさにこの事。一撃たりともこちら側の攻撃は掠りもせず、圧倒的な猛攻を前にイツキは敗北した。


「兄さん、怪我は……!?」

「いや、大丈夫だ。それよりも……」


駆け寄ってきたエステリーナの手を借りて立ち上がり、眠そうに欠伸をする少女───レヴィに頭を下げる。


「格下などと思い、すまなかった。君は間違いなく、俺よりも強い」

「に、兄さん……」

「大丈夫だよ、ジーク達以外には言わないからさ。エステリーナのお兄さん、王国で一番強い騎士なんでしょ?ボクみたいな女の子に負けたって知られたら、色々大変な事になりそうだし」

「むぅ、それは……」

「ま、いい運動にはなったよ。今回ので色々分かった事もあるからねー」


腕をぐるぐる回しながら、レヴィがイツキとエステリーナの横を通り過ぎる。その際、一瞬だがエステリーナは見た。レヴィが浮かべる、背筋が凍るような笑みを。


「王国騎士団もこの程度、か。やっぱり思う存分やり合えそうなのはジークだけだね……」


そんな呟きが、兄妹に届く事はなく。

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