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第百八十三話 空間激震

視界が戻る。それと同時に自分の身体を確認。

全身の傷は癒えており、切り落とされた右腕もいつも通り生えている。


「あ、有り得ない、一体何が・・・」


そんな俺を、シオンは信じられないものを見るかのような目で見つめていた。そして────


『さあ、ガンガン攻めましょう!』

「さっきの最後の別れ感は何だったんだよこんちくしょう!!」


頭の中でアルテリアスの声が響く。

俺と一体化したらしい女神様は、さっきから俺の中でテンションがやたら上がっている。


『だから死ぬわけじゃないと言ったでしょう?』

「はぁ、恥ずかし」


とりあえず、俺の中にアルテリアスが居るってのは感覚で分かる。それに、膨大な魔力が身体中を駆け巡っているというのも。


「ど、どうして傷が回復して・・・」

「なんつーか、イマイチ俺もよく分かってはいないんだが」


アルテリアスと一体化・・・ねえ。ということは、俺は女神になっちゃった感じなのか?


『ぷぷっ、私の服着ます?』


おいこら、俺の心の声に反応するんじゃない。


『さて、お喋りもこのぐらいにしておきましょうか』


ふむ、そうだな。


「とりあえず、復活させてもらったぜ」

「くっ、その魔力・・・アルテリアスか!!」


シオンが魔剣を召喚する。そしてそれは、先程と同じように見えなくなった。


「二度も貴方を殺すことになるとは・・・」

「いいや、もう死ぬつもりはない」

「はあッ!!」


振るわれた魔剣から、不可視の斬撃が放たれたのを感じる。けど、今の俺なら・・・!


「なっ!?」


斬撃を躱し、シオンとの距離を詰める。


「砕けろ!!」


俺とシオンの間には結界がある。それを破壊する為に、俺は魔力を纏った拳を全力で突き出した。


「ふふ、無駄ですよッ!!」

「な・・・ぐあっ!?」


しかし、結界にはヒビ一つ入らず、逆にシオンに腹部を殴られて俺は吹っ飛ばされた。


「少し力を得ただけで、私に勝てると思うなんて・・・なんて傲慢なのでしょう!!」

「このっ・・・」

「誰かの力を借りなければ貴方は何も出来ない!!貴方は毎日を怠惰に過ごしていたのですか!?」

『ジークフリードさん、防御を!!』


アルテリアスの声が響くが、この体勢じゃ無理だろ・・・!


「日常を壊された事に憤怒することもなく、私を連れて帰るですって!?」

「があああっ!?」


放たれた雷魔法を至近距離で受けた直後、背中に走る衝撃。地面に激突したのか。


『もっと全ての力を解放するイメージを持ってください!』


ああ、分かってるよ・・・!


「いい加減しつこいんですよ!!」


シオンが腕を振った直後、急に俺の肩から血が噴き出した。見えない魔剣・・・厄介過ぎんだろ。


「連れて帰るですって!?ここまでした私に、まだ居場所があるとでも!?」

「あるに決まってんだろ」


もっと力が必要だ。

シオンの結界を砕く為には、もっと強大な力が。


「俺はもう一回シオンが作った朝ごはんが食いたい」

「は・・・?」

「机に突っ伏して寝てる俺に布団を掛けてくれたりしてたのは嬉しかったなぁ」

「な、何を言って・・・」

「そんな日々がどれだけ大切だったか、俺は嫌というほど思い知らされたよ。だから、それを取り戻す為に俺は此処に居る。何回でも言うぞ・・・意地でも連れて帰るからな!!」

「こ、の・・・ッ!!!」


その直後、彼女の魔力が跳ね上がった。

もう何処が限界なのか想像もつかないけど、今度こそ彼女の心に届かせてみせる。


「アルテリアスッ、貴女はどこまで余計なことをすれば気が済むのですかッ!!!」

『ええ、私のせいですか!?』


うおお、アルテリアスがガチでビビってるのがなんとなく分かる。それ程の魔力をシオンは放っているのだ。


「貴女がジークさんをフォルティーナに転生させなければ、あの時私がジークさんを見つけなければ、あの時ジークさんについて行かなければ・・・ッ!!!」


てか、これはヤバ過ぎると思う。

周りを見れば、空間にヒビが入り始めてるし。


『ジークフリードさん、恐れることはありません』


ん・・・?


『貴方は一人ではありません。私と、皆さんの想いはきっと貴方に届いているはずです』


ああ、そうだな。俺にはみんなが居る。


『だから、負けないで』

「おうよ」


魔力が湧き上がってくる。俺はそれを拳に纏わせた。


「いくぞシオン!!」


地を蹴り、シオンに接近する。

一瞬反応が遅れたシオンが魔剣を振るったが、それを躱して俺は全力で結界を殴った。


しかし、それでも結界は壊れない。


「何度も何度も・・・」

「っ・・・!」


シオンの魔力が再び跳ね上がる。

彼女の瞳はさらに蒼く輝き、俺をギロりと睨みつけてきた。


「人間如きがァッッ!!!」

「くっ!!」


咄嗟に後方に跳ぶ。その直後、寸前まで俺が立っていた場所が爆発した。


「シオンも本気か・・・!」

「はああああッ!!!」


空から雨のように雷が降り注ぐ。それをなんとか防ぎながら、俺はシオン目掛けて魔力を放った。しかし、結界は無傷。


「くそっ、どうやったらあの結界を破れんだよ」

「《ノヴァエクスプロージョン》!!」


この魔法はさっきの・・・っておいおい、まじかよ。


「反則だろ・・・!!」

「もう一度死に絶えろッ!!!」


何十個もの火球が俺に向かって迫ってくる。もう出し惜しみしてる場合じゃないなこれは。


「どうせならこれで・・・」


ありったけの魔力を腕に集める。


「結界ごと消し飛びやがれ!!」


そして、それを一気に解き放った。俺の魔力と大量の火球がぶつかり合う。やがて俺の魔力は全ての火球を呑み込み、シオンの結界と衝突した。


「よっしゃあ!!」


シオンを守っていた結界が粉々に砕け散る。それと同時に彼女が黒い風を放つ。


「《国崩しの厄災風(ディザスターストーム)》!!!」

「ぐっ、だあああッ!!」


吹き飛ばされないように踏ん張り、全力で走る。

ここを逃せばもうチャンスは無いだろう。俺の持つ全ての力をこの一撃に込める・・・!


「なっ・・・!?」


俺が放った魔力は、シオンの背後にずっと浮かび上がっていた魔法陣を消し飛ばした。同時にシオンの魔力が減少していくのを感じる。やっぱり、魔法陣を最初に見た時から何かあると思ってたんだよな。


「よし、これで」

『ジークフリードさん、避けて!!』

「え─────」


アルテリアスの声が響いた直後に腹部に走った激痛。

完全に油断した。シオンの魔剣が俺の腹部を貫いていたのだ。


「ふふふ・・・」


背筋が凍る。

目の前でシオンが浮かべている笑みは、自分の勝利を確信したような・・・そんな笑みだ。


『は、ハデスの魔眼の力が戻って・・・!?』

「ぐっ・・・」


まじかよアルテリアス。

てことは、時間を止めたり早めたりする力が使いたい邦題に加えて、今まで失われてたシオンの全魔力が元に戻ったってことかよ。


「終わりですよ、ジークさん」

『だ、駄目だ、これは貴方では防ぎようがありません・・・!』


くっそ、どうすんだこれ!


「全ての時よ、我が力の前でその役目を終えるがいい!!」

「シオン─────」


次の瞬間、凄まじい魔力をシオンが解き放った。


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