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第百八十話 最果ての地で

そろそろ完結なんで、1日1話更新に戻します!


「っ──────」


気がつけば、俺の周りには誰も居なかった。

いや、一人だけ居るか。


俺の前には階段が。

それを駆け上がり、遂に俺はたどり着いた。


ここは、一体何処なのだろうか。

左を見れば地球の都市が、右を見ればフォルティーナの街が。その二つの世界の境界線のような場所が、今俺が立っている場所・・・か。


「・・・ふふ、来てしまいましたか」

「ああ。迎えに来たぜ、シオン」


そんな場所でただ一人、銀髪の少女が優しい微笑みを浮かべながら俺を見つめてくる。


時空神クロノス。

俺がフォルティーナに転生して初めて出会った少女の正体は、アルテリアスすら凌駕する神だった。


でも、そんなことはどうでもいい。


「帰ろう、シオン」

「・・・それが叶わない夢だということは、貴方も理解出来ているはずですが」

「いいや、実は全く理解出来てないんだよ」


俺がそう言うと、シオンは口元を押さえてクスクスと笑った。久々だからか、彼女の笑顔を見て妙に心が満たされる。


「相変わらずですね、ジークさんは」

「なんか、ルシフェルとかにもそんなこと言われたんだけど。いつも通りだねーとか」

「この状況でも何も変わっていない貴方を見て、少しだけ安心した気がします」


シオンが俺に背を向ける。


「今すぐに立ち去ってくれれば、他の方々を悲しませるような結末にはならないと思いますが」

「そんな結末にしない為に、今俺は此処に居るんだ」

「・・・」


彼女の表情は見えないけど、何故か少しだけ嬉しそうな表情をしてるんだろうなということは分かる。


「なあ、シオン。なんで二つの世界を衝突させようとしてるんだ?」


そんな彼女に俺はそう聞いた。


「新たな世界を創る為」

「え・・・」


俺に背を向けたまま、問いにシオンが答える。


「私がこんなことをしなくても、もうすぐ二つの世界は消滅する運命だった・・・そう言ったら、貴方は信じますか?」

「ち、ちょっと待て、どういうことだ?」

「つまり、世界衝突は元々避けられなかったということです」


・・・じゃあ、なんでシオンはそんなことしてんだよ。


「そのことに気付いたのは、今から数千年も前のこと。その時に行動を起こした私は、アルテリアスに敗北して肉体を失ってしまいましたが」

「・・・衝突する運命は避けられないってのは分かったけど、なんでわざわざ衝突を早めようとしてるんだ?」

「そうすれば、どこに空間の歪みが発生するかを事前に把握しておけるからです」


んん?

駄目だ、さっぱり分からん。


「その歪みから、私が新たな空間を生み出して、そこに新世界を創造するのです」

「新世界・・・」


つまり、勝手にぶつかられるとその空間の歪みがどこに発生するか分からないから、自分の意思で二つの世界を衝突させた場合に何処に歪みが発生するのかを計算しておいて、そこから新しい世界を創り出す・・・と?


「うーん、難しい話だなぁ」

「これはアルテリアスも知らないことですからね」

「でもよ、なんか安心した」

「え?」


シオンが振り返る。


「ワケのわからん理由で世界を滅ぼそうとしてたわけじゃなかったんだな。何もせずに完全に世界が消滅する道より、衝突する日を早めて新しい世界を創る道を選んだ・・・そういうことだろ?」

「・・・良く言えばそうですかね」

「でも、やっぱり間違ってるんじゃないか?」


俺がそう言うと、シオンが目を見開いた。確かにその方がいい、とか言うと思ってたのかな。


「急にシオンがそんなことしたら、今地上に居る人達はどうなる?何が起こっているのか知ることなく死んじまうんだぞ」

「それは・・・」

「衝突を回避する方法だって、みんなで探せば見つかるかもしれない。事前にそういうことが起こるって知っておけば、みんなで対策を練れるだろ?」

「・・・」

「何も出来ずに死んじまうなんて俺は嫌だ。どうせ死ぬのなら、最後の最後まで足掻いて死にたいね」


エステリーナやシルフィ達だって、きっとそう言うはずだ。それに、地上で戦ってくれている人達も。


「・・・その未来を選ぶというのなら、貴方は私を殺さなければいけませんよ」

「いいや、殺さない」

「ならばどうやって私を止めるというのですか?仮に私が敗北したとして、その後貴方はどう行動するのですか?」


シオンの身体から魔力が溢れ出す。それは、これまで相対してきた敵の中でも別格。全てを呑み込み、破壊してしまう・・・そんな魔力だ。


「さあな、それはさっぱり分からんよ。でも、シオンを連れて帰る・・・それは俺の中で世界を救うことよりも大切なことだ」


相手がどれだけ強かろうと、んなこと関係あるか。


「遊びに行こうって言ったのはシオンだぞ?無理矢理でも連れて帰って、絶対強制参加させるからな」


それを聞き、シオンが黙り込む。やがて彼女は頬を赤らめて微笑んだ。


「貴方は、どれだけ私の心を狂わせるつもりですか」

「え、何が?」

「ああ、そうか。ほんの少しの時間だったけれど、私にとっては忘れる事の出来ない・・・永遠よりも大切な一瞬だったんですね」

「シオン・・・」

「ですが、もう後戻りは出来ません」


シオンの身体が青白い光に包まれ、ふわりと浮かび上がる。


「思い出を全て捨ててでも、私は貴方をここで始末しなければなりません」

「っ、やるつもりか」

「神と人・・・どちらが上か、貴方に思い知らせてあげましょう」


次の瞬間、シオンの背から光り輝く双翼が生え、背後に巨大な魔法陣が出現する。その姿を見て、俺は思わず後ずさってしまった。


「我が名は時空神クロノス。世界に終焉と再生を齎す神です」


桁違いの魔力にプレッシャー。

これが、正真正銘本物の神の力か・・・。


それでも、ここで退くわけにはいかねえぞ、ジークフリード。


「いくぞ、シオン!!」

「さあ、共に見届けましょう。二つの世界の終焉を」

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