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第百七十六話 怠惰の寝殿 【ジーク・シルフィ・エステリーナ】

「くっ!!」

「きゃあっ!?」


凄まじい衝撃波が空間を震わせる。

吹き飛ばされないように、なんとか踏んばるシルフィとエステリーナの視線の先では、目にも止まらぬ戦いが繰り広げられていた。


「おらァ!!」

「《見えざる念力の壁サイコキネシスウォール》」


ジークがラグナに蹴りを放つが、突如として出現した透明な壁に防がれる。


「ちっ、アカリの魔法か・・・!?」

「その程度で俺にダメージを与えられると思わないことだ」


一度距離をとったジークは、ある少女のことを思い出した。


アカリ・エチュード。


火山の迷宮で出会ったその少女は、この魔神ラグナと同じ魔法を使っていた。しかし、同じ魔法でも強度は全く違う。


「ふん、幻属性のたかが中級魔法すら破れないのか?」

「上等だてめえ!!」


ジークが拳に魔力を集め、目の前の透明な壁を殴る。その衝撃で、壁は粉々に砕け散った・・・が。


「なっ・・・!?」

「念力の壁五十層だ」


その先には、何十枚もの障壁が張られていた。


「《巨兵錬成きょへいれんせい》」

「おいおい・・・」


さらに、ラグナが魔法を発動すると、砕けた瓦礫が巨大なゴーレムへと姿を変える。


「さあ、その男を叩き潰せ」

「くそっ!」


振り下ろされたゴーレムの鉄拳を躱し、ジークは勢いよく跳躍する。そして、ゴーレムの顔面を殴りつけた。


だが、それはラグナが展開した障壁によって阻まれる。


「何枚造れんだよ!!」

「余所見をしている場合か?」

「っ、ぐお────」


空中でゴーレムに鷲掴みにされ、ジークは床に叩きつけられた。さらに、ゴーレムはジークを踏み付ける。


「その程度か、ジークフリード。寝ながらでもお前を殺せるんじゃないか?」

「調子に乗ってんじゃねえ」


次の瞬間、ゴーレムが粉々に砕け散った。

それとほぼ同時、ラグナを守っていた壁が全て消滅する。


「なっ・・・」

「これが寝ながらでも躱せるか!!」


ジークの蹴りをラグナは受け止めたが、パワー負けして後方に吹っ飛んだ。


「・・・」


ビリビリと痺れる手のひらを見つめ、ラグナは黙り込む。


「ちっ、今ので仕留めきれないか」


一方ジークは軽く驚いていた。

それなりに全力で放った蹴りを受けたラグナの腕は消し飛んでいない。それだけ敵が強いということだ。


「なるほどな、ハートオブウィッチが危険視するわけだ」

「あ?」

「いいだろう、怠惰の魔法の真髄を見せてやる」


そう言うと、ラグナは膨大な魔力を放ち始めた。

そして───


「《停滞する怠惰の領域(アケディアゾーン)》!!!」


解き放たれた禁忌魔法が、時の流れを遅くする。

待っていた砂埃も、空間の歪みも、ジーク達の動きでさえも。


「まじか・・・!!」

「ベルフェゴールではお前の動きを止めることは出来なかったらしいが、今の俺はお前の動きなど簡単に止めることが出来る」

「やべっ・・・」

「この魔法を受けたが最後、逆らうことの出来ない時の流れに囚われながら、無様に死に絶えるがいい!!」


透明な刃をラグナが放つ。それは、動きが極端に遅くなったジークの身体を容赦なく切り刻む。


「ぐっ!!」

「ハハハッ!!どうした、反撃ぐらいしてきたらどうだ!!」


鮮血が舞う。

それさえもがゆっくりと床に向かう。


「ご、ご主人様!!」


それを見たシルフィがその場から動こうとするが、一歩踏み出すのに相当な時間を要してしまう。


「大丈夫だ!!危ないからそこに居ろ!!」

「で、でも・・・」

「こんなもん全く効いてないから!!」


それを聞き、ラグナが笑う。


「その割には全身傷だらけのようだがな!!」

「ただの擦り傷だっつーの!!」


ジークが魔力を解き放つ。


「なっ!?」


それを身に受けて、ラグナは驚愕の表情を浮かべた。


「馬鹿な、ステータスが跳ね上がって────」


次の瞬間、ラグナは天井に激突して血を吐いた。彼の真下では、拳を突き上げたジークが不敵に笑っている。


「だいぶ前にレヴィが言ってたような気がするけど、自分より強いヤツには効かないんだっけ?」

「ぐっ・・・!!」


着地したラグナは、一度ジークから距離をとって魔力を纏い直した。


「俺の禁忌魔法が、お前程度に破られただと・・・?」

「そういうことだな。魔力を温存しときたかったから、他の方法で何とかしようと思ってたんだけど」


案外ケロッとしているジークを見て、エステリーナはほっと胸を撫で下ろし、シルフィは目を輝かせる。


「さて、もう打つ手なしか?早く先に進みたいから、大人しくくたばってくれよ」

「・・・」

「無視か。なら、サクッと─────」


そこでジークが感じた違和感。

ラグナの足元から、何処かに向けて魔力が流れ出している。


「っ!シルフィ、エステリーナ、そこから離れろ!!」

「え───」


次の瞬間、二人の足元から巨大な魔物が出現した。スライムのような身体から、大量の触手が生えている気味の悪い魔物は、その触手をシルフィとエステリーナに巻き付ける。


「うっ!?」

「これは・・・!?」


さらにその魔物は、巻き付けた触手から二人の魔力を奪い取り始める。シルフィが幻糸を創り出そうとしても、エステリーナが炎を放とうとしても、魔力そのものを吸収されてしまい、魔法が使えない。


「おっと、動くなよ」


そんな二人を助けようとしたジークを、ラグナが呼び止める。


「お前が動けば、あの女達を殺す」

「なっ、てめえ・・・!!」

「卑怯だ・・・とでも言いたそうな顔だな。それがどうした?俺は怠惰の魔神、わざわざお前如きの為に動くのなど面倒だ」


そう言うと、ラグナはジークに魔法を放った。その場から動けないジークは、その攻撃を受け止める。


「ぐっ・・・!」

「ハハハハッ!!どうだ、仲間などただの足でまといだろう!!」


それを聞き、シルフィとエステリーナの顔色が変わる。


「本当は邪魔で仕方ないんだろう!?お前はそんな足でまとい共の為に、命を懸けるというのか!!」


その通りだと、シルフィは抵抗するのをやめた。

しかし、


「ああ、二人共、俺の大切な仲間だからな」


その一言で、シルフィは再び身体を動かす。


「私だって・・・いつまでもご主人様に、ご迷惑をおかけする訳にはいかないんです!!」


シルフィが無理やり身体を捻り、懐から取り出したダガーを魔物に向けて投擲した。


勢いよく手から放たれたそれは、魔物の身体に深々と突き刺さる。


「ギィギエエエエエ!!!」


二人に巻き付いていた触手の力が緩む。

その隙に、エステリーナは触手から逃れて炎を魔剣に纏わせた。


「はああッ、《焔王裂翔斬えんおうれっしょうざん》!!!」


そして、彼女が放った斬撃は、魔物の身体を真っ二つに切断した。


「ジーク、今だッ!!!」

「よっしゃあ!!」


エステリーナの声を聞き、ジークはラグナを全力で殴る。


「がっ、ば、馬鹿な・・・!?」

「俺の仲間はな、別に足でまといなんかじゃないんだよ!!」


さらに連続で拳を打ち付けられたラグナは、抵抗する間もなく吹っ飛ぶ。


「ぐっ、ジークフリードォォォ!!!」

「さて、これで終わりだ。そんなに眠いんなら、一生寝てろ!!」


膨大な魔力がジークの腕に集まっていく。それに気付いたラグナは、急いでその場から離脱しようとしたが────


「じゃあな、魔神ラグナッ!!!」

「ぐあああァァァァ───────」


放たれたジークの魔力に身を焼かれ、寝殿の壁ごと消し飛んだ。




ーーーーーーーーーーーーー

~ジークフリード~


★ステータス★


レベル:500

生命:8943

体力:9999

筋力:9999

耐久:9670

魔力:9999

魔攻:7550

魔防:7125

器用:3873

敏捷:7860

精神:1610

幸運:-5000


★固有スキル★


・超力乱神

筋力を+5000する。


・全属性適性

全属性の魔力を扱えるようになる。


・状態異常無効化

全状態異常を無効化する。


・超不幸

幸運-5000


・能力透視

相手のステータスを見る事が出来る。




ーーーーーーーーーーーーーー



「おっと、レベルアップか」


自身のステータスを確認したジークがそう呟き、二人の方を振り返る。


「いぇい、終わったぜ」

「ご主人様ぁ!!」

「どぅえ!?」


そんな彼に、突然シルフィが抱き着いた。


「申し訳ございません!!私のせいでご主人様が怪我してしまって・・・でも、ご無事で良かったですぅ!!」

「ちょちょ、泣くなシルフィ!」


対応に困りながら、ジークはエステリーナに顔を向ける。


「た、たまには許してやってくれ」

「そう・・・だな」


エステリーナにそう言われ、照れながらもジークはシルフィの頭を撫でた。

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