第百七十五話 怠惰の領域 【ジーク・シルフィ・エステリーナ】
襲い来る魔物達を殴って殲滅し続けること数分。
しばらく走っていると、前方に二人の人影が見えてきた。あれは・・・シルフィとエステリーナだな。良かった、無事だったのか。
「あ、ご主人様・・・」
「シルフィ、レヴィ達はどうしたんだ?」
「それが、私とエステリーナさん以外の皆さんが何処にも居なくて・・・」
ふむ、先に行ったのかな。
しかしだな、ルシフェルも居るのにそんなことするだろうか。
「とりあえず先に進んでみるか?もしかしたら、レヴィ達もどっかで見つかるかもしれないし」
「そうですね」
ということで、さらに進んでみることにした。
「それにしても、ここは一体どういう場所なんだろうな」
エステリーナがそう言う。
破壊と創造の神域・・・名前はカッコいいんだけど。
破壊しちゃってまた創造するのか。
いや、何を?うーん、考えるの面倒だな。
「ご主人様、どうしたのですか?」
「よし、シルフィを撫でよう」
「えっ、あぅ・・・」
なでなでした時の反応が可愛いから、毎回癒されるんだよなぁ・・・。
「まったく、こんな時に何をしているんだ」
エステリーナさん、そんなに呆れないで。
適度な癒しはやっぱり必要なんですよ、はい。
「・・・む?」
シルフィの耳が真っ赤になっている。多分恥ずかしがってるからだろうけど、俺達より長いからすぐ分かるな。うーん、なんかちょっと触ってみたい。
ツン
「ひゃあっ!?」
「おっと・・・」
あれ、エルフって耳触ったらそんな肩ビクゥッてなんの?
「ご、ご主人様、耳は・・・」
「ん?」
「自分で触るのは大丈夫なのですが、うぅ、他人に触られると、その・・・」
もんのすごい顔が赤くなってる。
ふむ、これは触らない方が良かった感じか。
「悪い、つい出来心で」
「い、いえ、大丈夫です・・・」
これからは触らないでおこう。
でも、反応は可愛いんだよなぁ・・・。
「イチャイチャしている場合かッ!!」
「すみません!!」
うおお、びっくりした。
てか、エステリーナもなんか顔赤いけど、どうしたんだ?
「っ、ご主人様」
「どうした・・・ってまじか」
シルフィの視線を追って振り返ったら、向こうからすっごい数の魔物がこっちに来てた。
「しかも、あいつも居やがる」
魔物の軍団の後ろの方から感じる魔力。
確か怠惰の魔神ラグナ・・・だったっけか。
「面倒だけど、いくぞ二人共」
「了解です」
「ああ!」
まず、目の前に走ってきたでかいゴブリンを殴って殺す。そして次に来たサイクロプスを殴って殺して・・・あ、うん、こいつら全員殴れば死ぬわ。
「《幻糸展開》!!」
「《炎をもたらす魔剣》!!」
エステリーナとシルフィも、このぐらいの相手なら大丈夫そうだな。てか、今更だけどさ、みんなバンバン魔法とか必殺技とか使ってるよね?
それに比べて俺は、ただ相手を殴ったり蹴るだけ。うーん、ちょっと必殺技が欲しくなってきたぞ。なんか恰好いい技名とかないかね。
「ううーん・・・」
何も思いつかねー。
もういい、俺の必殺技『パンチ』でいいや。
「フハハハ!!油断したな!!」
「むっ・・・」
急に首らへんにすごい衝撃が。
斧みたいなやつで殴られたみたいだけど・・・。
「・・・で?」
「ば、馬鹿な!?」
かなり数多いし、鬱陶しいな。
エステリーナとシルフィもしんどそうだし、ここは一気に殲滅するとしようか。
「魔力解放!」
「え────」
「大人しく全員消えろ!!」
魔力を纏って走る。
んで、俺の動きについてこれていない魔物達を殴って消し飛ばしていく。
魔力って便利だよなぁ。こいつら全滅させんのに、こんだけしか時間かからないんだもんよ。
「さ、流石ご主人様です!」
「相変わらずの強さだな」
「いやぁ、それほどでも」
ってそうだ、魔神は何処だ・・・?
「ふん、たったこれだけの相手を殲滅するのに、随分時間がかかるんだな」
「うるせえ、全然本気出してねーんだよ」
普通に立ってたわ。
眠そうに目を擦りながら、こっちを見ている。
「で、何の用だよ」
「決まってるだろ?わざわざ俺がお前を殺す為に、ここに来てやったんだ」
「そりゃどうも」
相変わらず凄い魔力だ。
けど、こいつは怠惰の魔神、動かせばある程度力を抑えられるはず。
「おい、レヴィ達は何処に居る」
「・・・俺に喋れと?」
「いいから喋れ」
「ふん、奴等はこことは違う空間に転移させられている。レヴィアタンはアンリの元へ、アスモデウスはシーナの元へ、そしてルシフェルはウルスの元へとな」
「なんだと?」
てことは、レヴィ達は相手の魔神と戦ってるってことか?
「そして、アルテリアスはハートオブウィッチとクロノスの元へと転移させられた筈だ」
「なっ・・・!?」
おいおい、まじか。
子供状態のアルテリアスが、ラスボス級二人のとこに居るだと?
「お前らは、何をしようとしてるんだ?」
シオンは、歴史を終わらせる・・・とか言ってたよな。それはつまり、世界を滅ぼすってことなのか?
「ふん、お前はそれを知ること無く此処で死ぬのだ」
突然景色が切り替わる。
周囲を見渡せば、何処かの建物の中に転移させられたってことが分かった。向こうにはエステリーナとシルフィも居る。
「俺は今、非常に眠いんだ。けど、わざわざ起きてやってる・・・」
「あ?」
「だから、ちょっとは俺を楽しませろよ、ジークフリード」
こいつ、舐めやがって・・・。
「改めて自己紹介しておこう。俺は怠惰の魔神ラグナ。この名をしっかり記憶して死に絶えろ」
「上等だこの野郎!!」
早くシオンのとこに行かなきゃならねーんだ。
本気でぶっ潰してやる。
〜ちなみに〜
エルフ族は耳が敏感です。
なので本当に心を許した人にしか触らせたりはしません。
シルフィはジークが大好きなので、驚きはしましたが怒ったりはしませんでした。




