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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
嫉妬の宴〜魔神が来たりて厄を呼ぶ〜
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第十七話 出現!嫉妬の魔神

「・・・?」

「どうかしましたか?」

「いや、何か嫌な予感がする」


水神の迷宮を奥に進みながら、とても嫌な予感がしていた。

エステリーナとシルフィが心配だ。早く見つけないと。


と、次の瞬間。


「うおっ!?」

「きゃあっ!!」


迷宮が激しく揺れた。それのせいでシオンが足を滑らせて転んでしまう。


「大丈夫か?」

「は、はい、なんとか」


シオンの腕を引っ張って立たせてやる。

なんだったんだ今のは。


「ん・・・?」


何か聞こえる・・・、これは。


「戦闘音だ」

「え、よく聞こえますね」

「近くにエステリーナ達がいるかもしれない。行こう」


無事でいてくれよ、二人共・・・。







◇ ◇ ◇





「うぐ・・・」

「うぅ・・・」

「あははは、弱いねー。その程度でボクに勝てると思ってたのかな?」


圧倒的過ぎた。


何をしても攻撃が届かない。エステリーナが炎を纏った剣を振り下ろしても魔神レヴィアタンの前に現れた水に止められ、シルフィの糸とダガーによる攻撃も一撃も命中しなかった。


そして、レヴィアタンが放ったたった一撃の魔法で二人は戦闘不能に陥ってしまったのだ。


「ば、化け物め・・・」

「あはは、それは褒め言葉かなー?」


レヴィアタンがゆっくりとエステリーナに近付いていく。


「まあ、あの人が来るまでのいい暇つぶしにはなったよー」

「あの人・・・?」

「ボクがわざわざ適当に迷宮造ったのも、彼に会うためなんだぁ」


エステリーナは混乱した。

この少女はAクラスの迷宮を適当に造ったと言ったのだ。

それに、彼とは一体誰なのか。


「一体、誰に会うために・・・」

「君達もよく知ってる人だよ」


それを聞いてエステリーナとシルフィの頭の中に一人の少年の姿が浮かんだ。


「まさか・・・」

「そう、ジークフリード!」

「ッ!!」


レヴィアタンがそう言った瞬間、シルフィがものすごいスピードでレヴィアタンに飛び掛った。


まだ動けるとは思っていなかったのか、レヴィアタンは少し驚いたような表情を浮かべる。


しかし、


「無駄だってば」

「っうぁ!?」


攻撃が届く前にレヴィアタンが放った魔法がシルフィを吹き飛ばした。

完全な不意打ちをあんなにも簡単に・・・。


「さて、そろそろ死んでもらおっかなー」

「くっ・・・」


シルフィはまだ立ち上がろうとしているが、力が入らないらしく、歯ぎしりしている。


「あはは、じゃあねー」

「ご主人様っ・・・!」


レヴィアタンがフロア全体に魔法を放った。

二人を押し潰すかのように現れた水は、勢いよく二人を──────


「よっと、無事か?」

「え、ご、ご主人様・・・?」

「ジークっ!」


呑み込めなかった。

何故なら、突然現れた少年が倒れていた二人を抱えて安全な場所に連れていっていたからだ。









◇ ◇ ◇







「ふふ、ふふふふふふふ」


なんとか二人が魔法を食らう前に超ギリギリの安全地帯に連れていくことに成功した俺を見て、水色の髪の小さな少女が突然笑い出した。


「・・・お前、魔神だな」

「ふふふ、そうだよ。レヴィアタンっていうんだぁ」

「俺はジークフリードだ」

「知ってる」

「なぬっ!?」


まさか、魔神に名前を覚えられてるとは。

あ、なるほど。アルターぶっ殺したからか。


「で、何で魔神様がこんなとこに?」

「この迷宮はボクが造った迷宮だからねー」

「へえ、すげえな」

「でしょー」


そんな俺達の会話を聞きながらシオンとエステリーナは信じられないものを見るかのような目で俺を見ている。

シルフィは流石はご主人様とか言ってるが。


「何が目的だ?」

「君と戦ってみたかったんだ」


そう言うとレヴィアタンは魔法を放った。水がまるで銃弾の如く俺に迫る。が、俺に当たった瞬間弾けて消えた。


「へえ、それが噂の耐久力に魔防かぁ」

「噂になってんのか」

「そりゃあ一応魔神を倒した人間だもんね。注目はされるでしょ」


なるほど、人気者は辛いぜ。


「むふふ、でもここで戦うつもりは無いんだー」

「あ?」

「《いでよ、水鳴の冥獣達》」


その時、突然レヴィアタンの前に2体の魔物が現れた。

水色の毛を生やしたまるで巨大な狼のような魔物である。


「王都で待ってるよん」

「は?え、おまっ」


そんな事を言ってレヴィアタンは消えた。あいつ、まさか・・・。


「グルルルルル」


やばい、早く王都に戻らないと大変なコトになる。

その前にまずこの狼さんを倒さなければ。


「ジークさん、ここは私達に任せてください」

「な、でも・・・」

「大丈夫です、先に王都に戻ってください」


真剣な表情でシオンにそう言われ、俺は言葉に詰まった。

多分この魔物、かなり強い。それが二匹いるんだ。


「・・・分かった」


でも、彼女達なら何とか勝てる筈だ。


「ふむ、それで、どうやって外に出るんだ?」

「ん?ああ、それはだな」


どんだけ下に落ちたのかは知らん。けど、多分出れるだろ。


「三人共離れててくれ」

「・・・?」


シオン達が俺から距離をとったのを確認して、


「ふんッ!!!」


俺は本気で跳んだ。異常なまでに高い耐久力、そして筋力のおかげで俺は天井を突き破り、とんでもない速度で地上に向かう。


そして。


「っしゃあ!」


何回天井をぶち破ったかは分からないが、俺は迷宮の外に飛び出した。


あとは、全力で泳ぐか。

俺は勢いよく湖に飛び込んだ。













「・・・」

「・・・」

「流石ご主人様ですね!」


残された彼女達は、魔物と戦うことを忘れてぽっかり空いた天井の穴を眺めていた。



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