第百六十八話 破壊と創造の神域
「ッ─────」
突然景色が切り替わる。
それと同時に凄まじい魔力を肌に感じた。
「ここは・・・」
辺り一面グニャグニャと歪んだ不思議な場所。
立っている足場は少しだけ透けている。
「どうやら、無事に転移出来たようですね」
「アルテリアス・・・」
「時空の狭間によく似ていますが、ここが破壊と創造の神域です」
「そうか」
俺の視線の先には、巨大な黒い扉が佇んでいる。
何故かは分からないけど、あの先にシオンが居る気がした。
「よし、そんじゃあ行くか」
もう時間は残されていない。
一刻も早くシオンを止めないと手遅れになってしまう。
でも、その前に少しだけ・・・。
「えー、みんな」
俺は後ろを振り返り、どうしたのかと俺を見つめてくるみんなに声をかけた。
「この戦いが終わったら、どっか遊びに行こう」
「え・・・」
シルフィが驚いたような表情を浮かべる。
「各自行きたい場所を考えておいてくれ。多数決でもして目的地を決めようじゃないか」
「じ、ジーク、何を言ってるんだ?」
エステリーナにそう言われる。
まあ、確かに今言う事じゃないってのは分かってるけど・・・。
「もちろんシオンも一緒にな」
俺がそう言うと、ようやくみんな俺が何を言いたいのか理解したようだ。
「だから、絶対全員で生きて帰ろうぜ」
完全に死亡フラグだ。
でも、そんなことは関係ねえ。
「ふふ、そうですね」
「当然じゃない」
ルシフェルとアスモデウスが笑みを浮かべる。
「よーし、頑張るぞー!」
「ちょ、レヴィ・・・」
レヴィはそんな事を言いながら抱きついてきた。
「ふふ、頼もしい人達ですね」
「だろ?お前も頼りにしてるぜ、アルテリアス」
「も、もう、だから子供扱いしないでくださいってば・・・」
アルテリアスの頭を撫でると、彼女は顔を赤らめて俯いてしまった。うん、子供にしか見えないんだもん。
「さーて、そろそろ行くとしますか。気合いと根性で俺達の日常を取り戻すぞ!!」
「「「おおっ!!!」」」
いつまでもここに居ることは出来ない。
俺は覚悟を決め、扉に向かって歩き始めた。
「・・・レヴィさん、カッコつかないからちょっと離れてもらえます?」
「えー、扉まではこのままでお願い」
「はぁ、こんな時でもいつも通りなのね、あんたら」
歩き始めたのはいいけど、レヴィが俺に抱きついたまま離れてくれない。だからそのまま引き摺って歩いてたんだけど、そんな俺達を見てアスモデウスが呆れている。
「だが、これがジークだからな」
「あはは、逆に安心しちゃうというか」
エステリーナとルシフェルにそんな事を言われた。
ちょっとぉ、これラスダン突入前だからね?もっとシリアスな感じでいきましょうよマジで。
「が、頑張りましょうね、ご主人様!」
「もうね、ほんと俺の癒しだよ」
「えぅ・・・」
シルフィの頭を撫でる。
こんな女の子に頑張ろうとか言われたら、そりゃ頑張っちゃうわ。
「まったく、貴方達は・・・」
前を進んでいたアルテリアスが、巨大な扉を開く。
扉の先は真っ白で何があるのか分からない。
「それでは、行きましょう」
そして、アルテリアスが扉の先に進む。すると彼女の身体が光に包まれ、俺達の前から消えた。
「よし、ジークさん、絶対勝とうね!」
「おうよ」
続いてルシフェルが扉の先に飛び込む。
「ジークフリード、無事に帰れたらあたしの話聞きなさいよ?」
「あれ、また呼び方戻ってるじゃないか」
「うるさいわね。だ、だから死なないでね」
アスモデウスも扉の先に消えていった。
なんだよ、可愛いやつだな。
「今度こそアンリカルナと決着をつけなきゃ。ジーク、帰ったら結婚しようねー!」
おおう、結婚だと!?
俺が驚いている間に、レヴィも扉の先に進む。
「じ、ジーク、私だって伝えたい事があるんだからな」
「おう、楽しみにしとくぜ」
何故か顔が真っ赤なエステリーナがそう言って走っていく。
「ご主人様、無理はしないでくださいね?」
「シルフィもな」
少しだけ心配そうな表情を浮かべていたシルフィもエステリーナに続いた。
残ったのは俺とアルテリアスだ。
「さーて、俺達も行くか」
「はい、ジークフリードさん」
そして、俺とアルテリアスも扉の先に進んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「え─────」
扉の先には、俺の前に進んでいったシルフィやエステリーナ達は居なかった。
周囲を見渡しても、俺だけしか居ない。
「まじか」
全員で進んでいくつもりだったのに、まさかの出だしで離ればなれになっちまうとは。
「俺だけ一人にさせられたってのか?」
それだと良いんだけど、もしシルフィが孤立してしまってるとしたら・・・あああああ!!!
「くっそ、とりあえず進んでみるか」
何処かで合流出来るかもしれないし、ここでじっとしているわけにはいかない。
焦る気持ちを抑えながら、俺は歩き始めた。
けど、何も起こらない。
どこを見ても歪んだ不思議な空間が視界に映るのみ。
あーくそ、みんなは無事だろうか。
「・・・ん?」
そんな時、突然鳥肌が立った。
同時にあらゆる場所に黒い渦が出現する。
「おいおい、マジか」
そこからとんでもない数の魔物達が姿を現す。
流石にこれは多過ぎるだろ。
「いいぜ、相手してやるよ」
けど、こんなとこで止まってられるかっての。
出来るだけ魔力を温存しながら全滅させるしかねえか。
~ちなみに~
アルテリアスが使用しようとした魔法
『森羅万象』は、フォルティーナ全域に被害が及ぶ程の威力を誇ります。




