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第百六十五話 最後の休息 中編

「あれ、何してんだシルフィ」

「ご主人様・・・」


レヴィの部屋から出た後にリビングに向かうと、そこには机を拭いているシルフィが居た。

今朝も床を掃除したり机を拭いたりしてたと思うんだけど・・・。


「これが、私にとって最後の掃除になるかもしれませんから・・・」


そう言いながら、彼女はもう既に綺麗になっている机を、何度も何度も拭き続ける。


「・・・はい、掃除中止」

「え、ご、ご主人様・・・?」


そんなシルフィから雑巾を奪う。突然そんな事をされたからか、シルフィは驚きながら俺を見つめてくる。


「どんな事かあっても、必ず全員で戻ってくるんだ。これが最後になんかなるわけないだろ」

「ご主人様・・・」

「まあ、ちょっと死亡フラグっぽいけど、そんなもんは俺がへし折ってやる」


そう言ってやると、シルフィの頬が赤くなった。


「そうですか・・・ふふ、そうですよね」


うーん、ちょっとカッコつけ過ぎたか?てか、よく考えたらシルフィは死亡フラグとか知らないだろ。


「必ず、シオンさんも連れてここに戻ってきましょう」

「ああ、必ずな」


軽くシルフィの頭を撫で、そのままリビングから立ち去ろうとした時、突然後ろから服を引っ張られた。


「・・・?」

「あ、も、申し訳ございません!」

「いや、別にいいけど・・・どうした?」

「そ、その、ええと・・・」


珍しくシルフィが俯いて慌てている。

やがて彼女は覚悟を決めたような表情で顔を上げた。


「だ、抱いてもらっても・・・いいですか?」

「へっ!?」


流石に驚いた。

まさかシルフィからそんな事を言われるとは。


「・・・」


よく見れば、シルフィの身体は僅かに震えている。

きっと怖いんだろう。そりゃそうだ、世界を滅ぼせる程の敵のもとに向かおうとしてるんだから。


でも、多分俺の前だから弱音を吐こうとしないんだな。


「よし、どんとこい」

「え───」

「よいしょ。お、あったかいな」

「っ!!」


そんなシルフィの小さな身体を、俺は抱き寄せる。

これで、少しでも彼女の恐怖が和らげばいいんだけど。


「・・・」


しばらく互いに身を寄せ合い、もう満足したのかシルフィは俺から身体を離した。


「・・・ありがとうございました」


そんな彼女の顔は、耳まで真っ赤になっている。


「私、精一杯頑張ります。少しでもご主人様の力になれる様に」

「ああ、頼りにしてるぜ、シルフィ」

「はいっ!」


もう彼女の身体は震えていない。

最後に俺は、シルフィのサラサラな髪を撫でてやり、玄関へと向かった。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「はッ!!」


おお、やっぱり居た。

外に出ると、エステリーナが剣で素振りをしていた。因みに今は誰も外出していないから、剣を振っても危なくない。


「む、ジークか」

「わり、邪魔したか?」

「いや、そろそろ休憩しようかと思っていたところだ」


そう言い、エステリーナは汗を拭きながらこちらに向かって歩いて来る。まだ冬だから、それなりには寒いんだけども運動すれば暑くなるんだな。


「調子はどうだ?」


そう聞いてみる。


「ふふ、バッチリだ」

「そうか」


いつの間にか、俺達は並んで座り、空を見上げていた。


「まさか、この世界とは異なる世界が存在するとは思わなかった」

「ああ、俺もだ」

「あちらの世界でも、沢山の人々が暮らしているんだ。必ずシオンを止めなくてはならないな」

「結構責任重大だよな」

「ジークは世界を救う事よりも、シオンを救う事を考えているだろう?」


おっと、気付かれてたか。


「はは、まあ、世界を救う事も大事だけど、それ以上にシオンを取り戻すことの方が俺の中で大事なのかもな」

「そうか・・・」


しばらくエステリーナが黙り込む。そして、少しだけ頬を赤く染め、俺を見つめてきた。


「なあジーク」

「ん、どうした?」

「その・・・ジークは私の事を、どう思っているんだ?」

「どうって・・・言い出したら止まらないけど」

「え・・・」

「まず超可愛いだろー?」

「っ!?」


エステリーナの顔がさらに赤くなる。


「それからだな・・・」

「ま、待った、もういい・・・」

「何で?」

「ま、満足した・・・」


おおう、なかなか可愛らしい反応ですな。

普段は凛としているエステリーナが、こんなふうに照れたりしているのを見ると、いつもよりもさらに可愛く見える。


「あの、ジーク」

「ん?」

「無事に戻ってこれたら、伝えたい事があるんだ」

「伝えたい事?」


何だろうか。

よく分からないけど、それ結構な死亡フラグじゃないか?


「おう、楽しみにしとく」


けど、そんなフラグは全部折る。


「ふふ、ありがとう。そろそろ素振りを再開するよ。ルシフェル達の所にも行ってやってくれ」

「りょーかい」


伝えたい事とは一体何なのだろうか。

それを彼女から聞く為にも、全員でここに戻ってこよう。


そう思いながら、俺は歩き出した。

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