第百五十三話 最奥を目指せ
「うーん、無いねぇ」
俺の前を行くレヴィが、周囲を見渡しながらそう言う。
現在俺達は、王都の下にあるよく分からない地下施設にいるんだけど、さらに下に行く為の道が見つからない。
「よし、床を殴って崩壊させるか」
「そんなことして、一撃で貫通しなかったらどうすんのよ。衝撃でここが崩壊するかもしれないし、リリス姉達に気付かれるわよ」
「でも、他にどうやって・・・」
「頑張って探しなさいよ」
アスモデウスに背中を押される。
なんだこいつは、昨日のことをもう気にしてないってのか?
こっちはお前の顔を見る度に恥ずかしくなるってのに。
「恐ろしいぜ・・・」
「何よ」
「独り言でーす」
昨日のあれは、何らかの作戦だったのかもしれない。
常日頃から俺を殺す為の計画でも立ててんのか?まさか、そうだとしたら昨日のあれは、口から直接毒を体内に入れようと───
「ご、ご主人様?少し顔色が悪いようですが・・・」
「そうだ、シルフィの頭を撫でて恐怖を紛らわせよう」
「あぅっ!?」
「なにイチャイチャしてんのよ!」
シルフィの頭を撫でたら、アスモデウスにしばかれた。
「んー、あれ?こんな所に結界が張られてるねー」
「ちょ、アスモデウス、怒ってます?」
「うるさいっ!」
「ジーク!ここに結界が張られてるよ!」
「え・・・」
とりあえず俺はレヴィの隣に駆け寄る。
彼女が指さす場所には、何の変哲もない壁がある。
「多分だけど、ここから先に進めるんじゃないかな」
「おおっ、まじか」
「結界破壊するよ」
レヴィが壁に触れ、魔力を注ぎ込む。すると、突然壁がまるでガラスのように砕け散り、先に続く道が現れた。
「すげぇ・・・」
「高位結界・・・多分リリスが張ったんだろうね」
「てことは、この先にリリスさんとシオンが居るってわけか」
奥からは尋常ならざる気配が漂ってくる。
これまでとは比べ物にならない激戦になることは覚悟しておいた方がよさそうだな。
「よし、じゃあキュラー、先に行くんだ」
「は?何を言ってるんだ貴様は」
「俺達の為に、散ってくれ」
「なんで死ぬ前提で先に進まねばならんのだ!!」
いやいや、俺達の盾といえばキュラーさんでしょ。
「まあ、今回は俺が先頭で進もう。耐久が一番高いから、ある程度壁になれるしな」
「それじゃあレッツゴーだね!」
さて、この先には何が待ち受けているのだろうか。
俺達は慎重に進み始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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◆◆WARNING WARNING◆◆
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〜ディアウルフ〜
レベル130
生命:8000/8000
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◆◆WARNING WARNING◆◆
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〜カイザードーベル〜
レベル129
生命:7290/7290
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◆◆WARNING WARNING◆◆
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〜ガイアドラゴン〜
レベル150
生命:9100/9100
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◆◆WARNING WARNING◆◆
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〜イビルフラワー〜
レベル128
生命:6990/6990
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早くもやばい。
ちょっと広い場所に出た瞬間、結構な数の魔物達が前方に現れた。ステータスを見れば、どの魔物もそこらへんの魔物とは比べ物にならないレベルの高さである。
「さーて、とりあえずぶっ飛ばすか」
邪魔すんのなら容赦はしない。俺は魔物の群れに向かって歩を進める。
「ウオオオオオオオン!!!」
まず、カイザードーベルとかいうやたらデカい犬みたいなやつが、大きく口を開けて飛びかかってきた。
とりあえず殴る。それだけでカイザードーベルの顔面は弾け飛んだ。
「ガルルルルル!!!」
他のカイザードーベルが唸り声を上げる。
因みに、このカイザードーベルは今殺した奴を合わせで計10体、イビルフラワーは計8体、ディアウルフが計3体、そしてガイアドラゴンが1体だ。
「ウオオオオオン!!!」
「ん・・・?」
一匹のカイザードーベルが吠える。すると他のドーベル達が一斉に飛びかかってきた。あいつがリーダー的なやつなのかもしれない。
「はッ!!」
「おっと、ルシフェルか」
突然ドーベル達が吹っ飛んだ。そして俺の隣に聖剣を持ったルシフェルが着地する。
「私も手伝うよ」
「ああ、助かるぜ」
「ギシシシシシシ!!!」
「うわっぷ!?」
油断した。イビルフラワーって名前の魔物が、すごい量の粉を飛ばしてきた。多分麻痺とかさせる粉なのだろう。
「まあ、俺には効かないけど」
「ギシシ────」
そう、固有スキルのおかげで状態異常にはならない。俺はイビルフラワーを一匹ずつ踏み潰していく。
「ルシフェル、大丈夫か?」
「うん、咄嗟に目を瞑って息を止めたからね」
なるほど、そういうやり過ごし方もあるのか。
まあ、固有スキルのおかげで状態異常にならないんですけど。って二回目だな。
「ウオオオオオーーーーン!!!」
「っと、こいつは確かディアウルフだったか」
すごいスピードでディアウルフが爪を振り回す。
なんて言ったらいいだろうか。うーん、二足歩行の巨大狼・・・みたいなやつだ。
「《幻糸展開》!!」
そんなディアウルフが一匹、俺の後ろから放たれた糸でぐるぐる巻きにされる。
「終わりです」
そして、そのディアウルフは全身から血を噴出して息絶えた。
「やるなぁ、シルフィ」
「え、えへへ、ありがとうございます」
いつの間にか強くなったもんだ。
「邪魔だ」
とりあえずシルフィの頭を一撫でし、残りのディアウルフを片付ける。あとはガイアドラゴンっていう魔物だけだな。
「グオオオオオオッ!!!」
「うおっ、うるせえな」
ガイアドラゴンが吠える。
見た目は亀みたいだけど、ドラゴンらしい。
「《海王轟鎌》!!」
そんなドラゴンは、レヴィが振るった水の鎌で真っ二つになり、あっさりと息絶えた。ふむ、甲羅の耐久度もその程度か。
「おいおい、なんという強さなんだ」
俺達を見ながらイツキさんがそう言う。
まあ、この程度なら相手にもならないわな。
「んじゃ、この調子で先に進もう」
まだまだ先は長い。
今倒した魔物達よりもさらに強い奴らが待ち構えている可能性は十分にあるけど、絶対に突破してみせる。




