表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/293

第百四十六話 フードの人物

「あ、兄上、あれは・・・!」

「チッ、一体何処から入り込んだんだ!」


各地で戦闘が始まった頃、市民の避難を手伝っていたエステリーナ達は、突然姿を現した魔物達に驚き足を止めた。


「とにかく倒してしまいましょう」


そう言ってシルフィが魔物の群れに駆けていく。


「《幻糸展開げんしてんかい》!!」


放たれた糸は魔物達に絡みつき、動きを完全に封じ込める。さらに動けば動くほど糸が身体に食い込み、その箇所から血が流れ出る。


「エステリーナさん!」

「ああ、任せろ!!」


さらにエステリーナが身動きのとれない魔物達に向かって炎を放つ。


「《炎をもたらす魔剣(フレイムブリンガー)》」


そして、そこにイツキの炎も合わさり、魔物達は跡形もなく消滅した。


「ふう、なんとかなったか」

「急がねばならんな。他の地区にも魔物が侵入しているかもしれん」

「そうだな。行こうシルフィ」

「ええ・・・」


シルフィは周囲を見渡し、一人の少女の姿を思い浮かべた。


何処を捜してもシオンが居ない。


ジークは、彼女は先に市民の避難を手伝っていると言っていた。しかし見つからないのだ。もしかしたら、魔物に襲われてしまったのかもしれない。

そう考える度に寒気がする。


「ううん、きっと無事ですよね」


そうであると信じ、シルフィはエステリーナ達のあとを追った。







◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆





少し戻り、シオンとジークが別れた直後。

シオンは周辺に住む人々を避難場所に誘導していた。


「皆さん、落ち着いて行動してください!!」


そう声を張り上げる。普段は大人しい彼女だが、今は恥ずかしがっている場合ではない。


「きゃああっ!」

「ま、魔物だぁ!!」

「え・・・」


そんな時、突然向こうの方からそんな声が聞こえた。

こんな場所にまで魔物が入り込んできているというのか。


「くっ・・・!」


シオンは一旦その場から離れ、声が聞こえた方へと走った。


「ガルルルルル!!」

「ひいいい!」

「っ、ウインドスピア!!」


家の角を曲がった時、狼のような魔物に襲われている男性を見つけ、シオンは風魔法を放つ。それはまるで槍の如く、魔物の身体を貫いた。


「大丈夫ですか?」

「あ、ああ、助かったよ」


腰を抜かしている男性に手を差し伸べ、立ち上がらせる。そしてシオンは避難中の人達がいる場所を的確に伝え、別の場所へと足を運んだ。



ズドオオオオオオン!!!!



「っ!?」


突然凄まじい音が鳴り響き、足元がグラグラと揺れた。遠くを見れば、東の方から煙が上がっているのが月明かりのおかげで確認出来る。


まるで戦争だ。

皆が寝静まった時間に四方向からの奇襲。騎士団の人達やジーク達が戦っている筈だが、一体どれ程の被害が出たのだろうか。


「・・・私だって、やれることをやらなくちゃ」


そう呟き、シオンが後ろを振り返る。


「ふっ、見つけたぞ・・・シオン・セレナーデ」

「ッ─────」


一体いつ現れたのだろうか。

彼女の後ろには、黒いフードを被った人物が佇んていた。


「だ、誰ですか!!」

「そう警戒するな」

「このっ・・・!!」


シオンは本能でこの人物が敵であることを理解し、風魔法を放った。しかしフードの人物が軽く手を振ると、魔法は突然消滅する。


「なっ・・・」

「大人しくしろ。手荒な真似はしたくはない」

「《山崩しの暴風(タイラントストーム)》!!」


上位風魔法を唱えると、発生した竜巻がフードの人物を呑み込む。しかし数秒後、荒れ狂う暴風は一瞬で消し飛ばされた。


「そ、そんな・・・」


シオンは悟る。目の前にいる人物と自分の実力差を。自分程度では絶対に敵わないと。


「・・・それでも」


目の前にいる人物が敵なのならば、逃げるわけにはいかない。


「・・・まだ抵抗しようというのか」

「《破壊嵐(レイジストーム)》!!」


ありったけの魔力を込め、魔法を放つ。

しかしフードの人物は、あらゆるものを砕く嵐の中を平然と歩き始める。


「もう別れは済ませているか?」


そして、


「え────」


シオンは見た。

目の前まで歩を進めてきた人物の顔を。


「な、なんで・・・どうして───」


そこでシオンの意識は途切れた。









◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




王都南────


「ハーーーハッハッハッハ!!!その程度かルシフェルよ!!」

「くっ・・・」


圧倒的な力の差で、ルシフェルは追い詰められていた。

太股を深く切り裂かれ、激痛に耐えながら膝をつく。敏捷はルシフェルの方が上だが、ウルスが剣を振るうだけで簡単に弾き飛ばされ、近づく事さえままならない。


「どうして・・・」

「ん?」

「どうして、大天使の貴方がここに居るのっ・・・!!」


そう言われ、ウルスは空を見上げる。


「自ら堕天したのだ」

「え・・・」

「元々あのような場所に居るつもりもなかったからな」


そして、ウルスが剣の切っ先をルシフェルに向ける。


「もし、俺と共に天界を滅ぼすと言うのなら、殺さないでおいてやるが・・・」

「なんでそんなこと・・・」

「さあ、貴様はどちらを選ぶ?生き残る為に故郷を滅ぼすか、故郷を守る為に命を散らすか」


ルシフェルは震えた。

元天使が天界を滅ぼそうというのだ。天界には数え切れない程の天使達と、彼らを束ねる大天使が居る。

そんな場所に攻め込めば、魔神であろうと無事では済まない。


「そんなこと・・・させない!!」


勢いよく立ち上がり、翼を羽ばたかせてルシフェルがウルスに斬りかかる。不意をつかれたウルスは、驚きつつも聖剣を受け止め、そして。


「そうか、残念だ」


ウルスが放った一撃はルシフェルの聖剣を砕き、彼女の身体を深々と切り裂いた。

簡単な人物紹介


【クラウン・ラフスキー】

・年齢17歳

・身長176cm

・体重 73kg

・好きなもの、こと

槍の手入れ

・嫌いなもの、こと

暑い場所

・魔法

現在不明

・初登場

第四十四話


アカリ、ガルムとパーティーを組んでいるお調子者な少年。槍を扱い、アカリとの連携攻撃が得意。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ