第百四十五話 魔神大戦
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「そーれっと!!」
「ぎゃああああっ!!!」
王都西。
そこで憤怒の魔神アンリカルナは、巨大な槌を騎士達に振り下ろした。今ので一体何人死んだだろうか。
「く、くそっ、絶対に壁を突破させるな!!」
ここに集結した騎士団の数は合計10。
しかしどれだけ束になって立ち向かっても、アンリカルナが槌を振るうだけで数十もの騎士達が命を落とす。
「さーて、そろそろやな」
そして、アンリカルナが指を鳴らす。すると彼女の背後に数え切れない程の魔物が姿を現した。
「なっ・・・!?」
「あははっ、びっくりした?まあウチが召喚したわけじゃないねんけど、タイミング良く指鳴らしてみましたーみたいな?」
「舐めやがって・・・!」
「よーっし、じゃあ一発デカイのいくでー!!」
アンリカルナが槌に魔力を集める。そして呆然としている騎士達を飛び越え───
「よいしょぉぉ!!!」
槌を振るって壁を粉砕した。
「ほらぁ、死ぬ気で戦わないと、王都の中に魔物がなだれ込むで・・・?」
「う、うわあああ!!」
悪魔のようは笑みを浮かべるアンリカルナを見て、騎士達は叫びながら魔物達に突撃した。しかし魔物のレベルは全て100以上、ある者は爪で身体を切り裂かれ、ある者は噛み付かれて絶命していく。
「んじゃ、ウチは王都の中に居る人らを───」
「アンリカルナァァッ!!!」
「っ!!」
槌を担ぎ直し、王都に侵入しようとしたアンリカルナだが、突然何者かの魔法を受け、勢いよく吹っ飛んだ。
「・・・ははっ、久しぶりやなぁレヴィちゃん」
「せっかく気持ちよく寝てたのに・・・!」
現れたのは寝起きのレヴィ。
まだパジャマ姿の彼女を見て、アンリカルナは笑う。
「あっはっは!せめて着替えてきーや!」
「うっさい!」
「まあええわ。とりあえず楽しませてもらうで」
「今度こそ息の根を止めてあげる・・・!!」
そして、二人は同時に駆け出した。
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「ひぎゃああああ!!!」
「はぁー、不味いですねー」
一方ここは王都北。
あちこちに死体が転がっているこの場所で、一人の少女が生き残った騎士達を喰らっていた。
少女の名はシーナ。暴食の罪を司る魔神である。
「ふふふふー、せっかくこんなに沢山魔法を使ってあげてるのにー」
「い、痛い!!痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃ!!!!」
そんな彼女の前に倒れている騎士達は、全員頭を押さえながら絶叫している。
「次は脚を潰してみましょうかー。そうすればもっと美味しくなるかもしれませんねー」
「な、ならないっ!ならないからもうやめあぎゃあああああ!!!」
シーナが一人の男の脚を踏み潰す。そして顔にかかった血をぺろりと舐め、ため息を吐いた。
「うーん、全然変化なしですー。もう何しても無駄っぽいですねー。あとはこの子達に譲りますねー」
「え・・・」
突然シーナの周囲に恐ろしい数の魔物が出現する。それを見て騎士達は恐怖に顔を歪めた。
「ほらー、沢山餌が転がってますよー」
「ひっ、や、やめてくれぇぇぇぇ!!!!」
そして、魔物達は重症を負った騎士達に容赦なく喰らいついた。
あちこちから悲鳴が上がり、シーナは楽しそうに手を叩く。
「うんうん、残さず食べるんですよー」
「見つけたわよボサ髪女・・・!!」
「え───」
そんなシーナの前に、アスモデウスが降り立った。そしてシーナを睨みつけ、召喚した魔剣の切っ先を向ける。
「あら、あらららら。まさかアスモデウスですかー?」
「いい加減にしなさいよあんた。今すぐここから立ち去りなさい」
「それは無理ですー。逆に貴女が何処かに行ってくださいー」
「上等よこの寝不足女!!」
シーナが魔力を纏う。そんな彼女にアスモデウスは魔剣を振り下ろした。
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「っ、居た・・・!」
ルシフェルは、翼を羽ばたかせて王都南に向かっている。そして壁を越えた時、膨大な魔力を纏う男を見つけて彼女は急降下した。
「ククッ、来たか」
男はルシフェルの姿を確認すると、持ち上げていた騎士の首を握り潰す。そして後ろに放り投げた。
「なんてことを───」
それを見たルシフェルは、少し離れた場所に着地して男を睨みつけた。
「───え」
そして気付く。
彼の背から自分と同じ漆黒の翼が生えてるいることに。
「あ、貴方は・・・」
その男の顔に見覚えがあることに。
「久しいな大天使ルシフェル・・・いや、今は堕天使ルシフェルか」
「ど、どうして貴方が・・・」
「ククッ、魔剣に身体を乗っ取られていたというのは事実らしいな」
そう言うと男は何処からともなく一本の剣を取り出し、それを振るった。
「っ・・・!!」
放たれた不可視の斬撃を、ルシフェルは直感で回避する。
避けなければおそらく胴体が真っ二つになっていただろう。
「どうして貴方がここにいるの、ウルス・・・!!」
「ククッ、今は魔神ウルスだッ!!」
ウルスと呼ばれた男が魔力を解き放つ。
それによって巻き起こった風が倒れる騎士達を吹き飛ばした。
「ふはははは!!ずっとこの時を待っていたぞ、この手で貴様を殺すこの時をなぁ!!」
「な、何を言ってるの!?」
「先に言っておこう、貴様に大天使殺害という罪を着せたのはこの俺だ」
「え────」
それを聞いてルシフェルは動きを止める。
「さあ、ルシフェルよ。貴様の力をこの俺に見せてみるがいい・・・!!」
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「なっ・・・」
王都東。
そこにたどり着いたジークは、目の前の光景を見て絶句した。
数え切れない程の死体があちこちに転がっている。ジークはこみ上げてくる吐き気を抑え込みながら、なんとか歩き出した。
「ふむ、俺の相手はお前か」
そして、その男は現れた。
山積みになった死体の上に座り、見下ろしてくる男。
「おい、お前は誰だッ・・・!」
そんな彼を睨みながら、ジークはそう怒鳴る。
「俺はラグナ、一応魔神の一人だ」
「お前も大罪を司ってんのかよ」
「ああ、《怠惰》の罪をな」
めんどくさそうにラグナはそう言い、死体の山から飛び降りる。
「お前はジークフリードだな?はぁ、よりによって一番めんどうな相手が来るとは・・・」
「あ?」
「そこらに散らばっている人間のようになりたくなかったら、今すぐ俺の前から失せろ」
ラグナが魔力を纏う。
それはこれまでジークが相対してきた者の中でも別格の魔力。それを感じて、すぐにジークは敵が自分と同格か、それ以上の実力を持っていることを察した。
「おい、ラグナ・・・だったか?」
「二度も言わせるな、めんどくさい」
「俺からも言わせてもらうぜ。お前が死にたくないと願おうが、必ず叩き潰してやるよ」
「ほう、面白い」
凄まじい魔力と魔力がぶつかり合う。
やがて二人の姿は同時に消え、直後に大地に巨大なクレーターが出来上がった。
簡単な人物紹介
【アカリ・エチュード】
・年齢15歳
・身長158cm
・体重 れでぃにそういうこと聞いちゃだめ
・好きなもの、こと
静かな場所
・嫌いなもの、こと
密閉空間
・魔法
幻属性魔法
・初登場
第四十四話
ガルム、クラウンとパーティーを組んでいるかなり謎な少女。常にぼーっとしていているが、突然凄まじい発言をしたりして度々周囲を驚かせている。




