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第百四十三話 やがてその時は訪れる

「相変わらず不思議ね、どうして空からこんな白いものが降ってくるのかしら」


アスモデウスが窓の外を見ながらそう言う。

そんな彼女にレヴィが笑顔で駆け寄っていく。


「雪って触ったら死ぬんだよ!」

「ええっ!?」

「こらこら、嘘を教えるでない」


アスモデウスが我が家に来てから数日が経ったが、過去に数回人間界に来たことがあるという彼女、実は暖かい時の人間界しか知らないらしく、雪というものを初めて見たらしい。


ルシフェルと二人で雪だるま作ってたのはちょっと可愛かったな。


「ふむ・・・」


俺は机に置いてある一枚の紙のようなものを手に取る。

そこには、笑顔で雪だるまを作っているルシフェルと、寒そうに手を擦り合わせているアスモデウスが写っていた。


そう、写真である。


「まさかこの世界にもあるとはなぁ・・・」


『魔導撮影機』

この前、別の街からやって来た商人から買ったものだ。

スイッチを押すと、埋め込まれた魔法の水晶が風景を写し取り、中に入っている紙に印刷する・・・みたいな感じのものだったと思う。全然よく分からんけど。


古代遺産アーティファクト』と呼ばれる古代文明の遺産を解析して造られたものらしく、まだ王国では数十台程しか出回っていないそうだ。だからめちゃくちゃ高かった。しかし過去に何度も魔神を倒して金貨を手に入れているので、特に考えることなくそれを購入、そして現在使いまくっている。


だって、思い出残しときたいですもん。


「ねえねえ、雪に倒れ込むやつやろうよ!」

「嫌よ。寒いの苦手だって何度も言ってるじゃないの」


・・・パシャリ


「ちょ、何してんのよ」

「あー、写真だ!いぇーい!」


なんとなく写真を撮ると、遅れてレヴィがピースしてきたのでもう一度パシャリ。


この世界のカメラ、充電とかしなくていいところが素晴らしい。中に紙を入れればいいだけだしな。


「ほんとすごいよね、それ。その時の光景をずっと残しとけるなんてね」

「ああ、買ってよかったよ」


そう言ってなんとなく横を見る。

俺の視線の先には、おまけで付いてきた写真立てにおさめられている一枚の写真が。


そこには、沢山の人が写っていた。


イツキさんと並んでいるエステリーナ、ルシフェルはシルフィと一緒にピースしていて、写真に写りたがっていないアスモデウスは、姉のリリスさんに引っ張られている。キュラーは端の方にギリギリ写っており、レヴィに抱きつかれ、転けそうになっている俺は写真の正面に居て、そんな俺を見て隣にいるシオンが笑っている。


俺が一番気に入って大切にしている、俺の家の前で撮った集合写真だ。因みに階段を使ってるから、ちゃんと全員写っている。


「・・・」


こうやってみんなで笑ってられる日々が、いつまでも続けばいいのになぁ。


この写真を見る度に、俺はそう思うのだった。






◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆







「さて、全員集まったな」


とある女が、遥か遠くを見つめながらそう呟く。

ここはSSS迷宮天獄山山頂。

そこに、魔神達が集結していた。


「いやぁ、いよいよやな!またレヴィちゃんと戦えるかなぁ」

「ふふふー、私はアスモデウスとジークフリードを食べたいですー。お腹空きましたー」


巨大な槌を肩に担いでいる少女、憤怒の魔神アンリカルナが笑いながらそう言う。そんな彼女の隣では、暴食の魔神シーナがここに来るまでに捕獲した魔物を弄んでいる。


「ふあぁ、眠い。早く終わらせて寝させてくれよな」


少し離れた場所で、欠伸をしながらオレンジ色の髪をもつ男が壁にもたれかかりながらそう言った。それを聞いてアンリが笑う。


「あっはっは、一日何時間寝るつもりなん?」

「一日中寝てられるが?」

「体に悪いと思うけどなぁ」

「俺は寝る程強くなるんだよ」


さらに、そんな二人のやり取りを、漆黒の翼を羽ばたかせながら見つめている黒髪の男がいる。


「ふん、心配しなくとも、少しの時間で全て終わるだろう」

「ほんと、自信に満ち溢れてますねー」

「それが俺だからだ」


そう言うと、黒髪の男は遠くを見つめている女に声を掛けた。


「おい、魔女の心臓(ハートオブウィッチ)よ。そろそろ時間ではないのか?」

「ふっ、そう慌てるな」


魔女の心臓と呼ばれた女が笑い、指を鳴らす。すると、何処からともなく彼女の手元に黒いローブが現れる。それを彼女は羽織り、フードを深く被った。


「いよいよこの時が来た。これは全ての始まり、終焉の序章だ。偉大なる神の為、人間共に裁きの鉄槌を。目標は王都、各自四方向から奴らの注意を逸らせ」

「了解でーっす!!」


それを聞いて真っ先にアンリが山から飛び降りる。続いて黒髪の男も翼を羽ばたかせて飛び去った。


「さてー、私達も行きましょうかー」

「面倒だ」


さらにシーナとオレンジ髪の男も山から降りて行く。

そんな彼らを見つめながら、フードを被った女は楽しそうに笑った。


「さあ、大切なものを守る事が出来るのか・・・私に見せてみるがいい、ジークフリード」

簡単な人物紹介


【イツキ・ロンド】

・年齢19歳

・身長178cm

・体重75kg

・好きなもの、こと

エステリーナ

・嫌いなもの、こと

エステリーナに近寄る男共

・魔法

炎魔法

・初登場

第二十一話


炎を纏わせた大剣を自在に振るう、エステリーナの兄。普段は頼りになる男だが、妹であるエステリーナの事が大好きな重度のシスコン。なので妹に近付く者には容赦しない。

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