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第百三十七話 雪が降る日

「うえぇ、さみぃぃ・・・」


白い息を吐きながら、現在俺はギルドに向かっている。

この世界に来てから結構な時が経ったが、とうとう季節は冬である。昨日降り始めた雪は辺り一面に降り積もり、活気溢れる王都は真っ白な世界へと姿を変えた。


にしても寒い。さっきから薄着で走り回っている子供達を見る度に頭おかしいんじゃないかと思ってしまう程に寒い。


残念なことに、俺はまだ手袋もマフラーも何も買ってないので、ポケットに手を突っ込んでなんとか寒さに耐えている。


「む、おはようジーク。ギルドに行くのか?」

「おはようエステリーナ。ギルドに行きます・・・」


その道中、エステリーナに会った。マフラーと手袋を付けている彼女はいつもと違ってなんか女の子らしい。


「あぁー、遠いよギルド・・・」

「もしかして寒いのか?」

「逆に寒くないの?」

「ふふ、こういう時に火属性魔法は便利だぞ」


そう言って手袋を外し、エステリーナが手を差し出してくる。よく分からないけど俺はその手を握った。


「あ、あったかいな!」

「初歩魔法なんだが、自分の体温を上昇させる魔法があるんだ」

「はぁー、地味だけどすごいな」


あったかいなマジで。俺もその魔法覚えたい・・・。


「・・・ジーク」

「ん?」

「その、いつまで手を繋いだままなのかと・・・」

「あ、ごめん」


彼女を見れば頬が若干赤くなっている。単純に寒いからなのか、照れてるのか。俺は急いで手を離した。


「あ、べ、別に嫌だったわけじゃないんだ。寧ろ手を繋げて嬉しかったというか・・・」

「え、何か言ったか?」

「何でもない!」


エステリーナがなにやら小声でゴニョゴニョ言ってたけど、俺は鼻水をすすってたからよく聞こえなかった。


「そういやエステリーナもギルドに行く途中だったり?」

「あ、ああ、そうだ」

「んじゃ一緒に行こうぜ」

「っ・・・」


コクコクとエステリーナが頷く。よかった、これで嫌だとか言われてたら病んでたかもしれない。


「あ、やば・・・ぶえっくしょい!!」

「大丈夫か?」

「いやぁ、大丈夫大丈夫・・・」


くしゃみがでた。ほんと寒いから早いとこギルドに行くとしよう。


「その、よかったら手を・・・繋ぐか?」

「え」

「あっ、違うんだ!その、私は魔法のおかげであったかいだろう?だから、ええと・・・」

「いいのか!?」


めっちゃ嬉しいんだけど。俺は返事を待たずに彼女の手を両手で握る。うおお、あったかい・・・。


「今度手袋買わないとな。はは、助かるよ」

「うぅ、そうか・・・」


彼女、髪の毛と同じぐらい顔が真っ赤になってるけど、申しわけない・・・恥ずかしいだろうが我慢して欲しい。


「んじゃ、ギルドに行くか」

「あぁ・・・」


そして、俺はエステリーナの手を握ったままギルドを目指して歩き出した。


途中に何度も嫉妬した男達による雪玉攻撃を顔面に食らったのはかなり腹が立ったが、美少女の手を握るという行為に対して嫉妬する気持ちもわからんことは無いから、今回は許しておいてやろう。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「ギルド最高ッ!!」

「ちょ、ジーク・・・」


ギルドの中に入った瞬間、俺は叫んだ。外とは打って変わって超暖かい。多分あちこちにストーブみたいなやつがあるからあれのおかげだろう。


「今日はもう外に出たくない・・・」

「まったく、何の為に来たんだ」


エステリーナが呆れたような表情を浮かべてるけど、この温もりを知ってしまうともう出歩く気も失せるってもんだ。


「そういえば、シオン達はどうしたんだ?」

「シオンは風邪っぽいから寝てて、シルフィはシオンの看病、ルシフェルは雪に興奮して雪だるま作ってたな」

「ルシフェル・・・」

「なんか可愛かったぞ。みてみてーとか言ってさぁ」

「デレデレするんじゃない。レヴィは居ないのか?」

「レヴィは昨日から魔界に帰ってるぞ」


前に変態吸血鬼ことキュラーが言っていた、サタンの部下達を皆殺しにしたっていう少女の話をレヴィが聞き、もしかしたら自分の領土にも現れるかもしれないってことでレヴィは一旦魔界に帰ったのだ。


「ま、そのうち帰ってくるだろ。とりあえず適当にどっか座ろうぜ」

「え、依頼は・・・」

「まあまあ、ちょっとのんびりしていきましょうよ」

「はあ、仕方ないな」


とりあえず俺は空いている席を探してそこに腰掛ける。反対側にエステリーナも座った。

うん、もうこのままここで寝ようかな。


「おいジーク」


などと考えていた時、背後から男性の声が聞こえた。


「・・・なんでしょうか、イツキさん」

「貴様、エステリーナと手を繋いでいたらしいな」


背後にいたのは、エステリーナの兄であり超絶シスコンのイツキさん。何故か炎を纏わせた大剣を振りかざしてるけど何の用だろうか。


「いやぁ、繋いでなんかないですよ。なあエステリーナ」

「あ、え、そう・・・だな」


こらこら、なんで俯く。


「ふむ、妹の反応を見る限りどうやら本当に手を繋いだのだな」

「ははは、違うんですよマジで」


マジで・・・マジでめんどくさい。

この人はエステリーナの事になると話が通じない挙句、平気で殺しに来るから恐ろしい。大剣叩きつけるとか、俺じゃなかったら死んでるからね?


「俺はもう何年も手を繋いでいないというのに、貴様はぁ・・・」

「いやいや、待ってくださいよ。イツキさんも頼めばきっと手を繋いでくれますって。なあエステリーナ」

「え、なんで・・・?」


うわーい、イツキさんの顔が鬼みたいになってるよ!


「我が妹と手を繋いだ感想を言ってみろぉぉ・・・」

「超あったかかったです」

「殺すぞ貴様ぁ!」


なんでや!?

とりあえず俺は振り下ろされた大剣を受け止める。


「兄上、いい加減にしないか!!」

「しかしだな妹よ・・・」

「わた、私から手を繋ごうと言ったんだ!ジークが寒そうだったから・・・」

「なんだとッ!?」

「それの何が悪いんだっ!!」

「ぐっ・・・」


イツキさんがたじろぐ。

やがて魔剣に纏わせていた炎を消し、彼はその場で膝をついた。


「悔しい・・・」

「え、ちょ、泣いてます・・・?」


未だにこの人のエステリーナに対する愛はよく分からん。ほんと今後の人生どうするつもりなんだろ。


「ま、まあ、兄上はそっとしておこう」

「そうだな」


互いにこくりと頷き合う。

その直後、突然見知った男がこちらに駆けてきた。


「げっ・・・」


その男の名はキュラー。レヴィの部下で、彼女を愛してやまない幼女好きの変態吸血鬼である。


「っ、やっと見つけたぞジークフリード!」

「なんだよ」


またレヴィ様に手を出したなとか言われんのかなぁ。

けど、なんかいつもと様子が違うような・・・。


「レヴィ様が何者かに襲われたのだ!!」

「っ!!」


それを聞いて俺は立ち上がる。


「どういうことだ?」

「嫉妬の水魔殿で、昨日レヴィ様と巨大な槌を持った女が戦闘を行った。確実にレヴィ様が勝利したとは思うが、念のため貴様にも報告しに来たのだ」

「おい、なんでお前はレヴィの傍に居ないんだよ」

「レヴィ様に邪魔だと言われてな。あの状態のレヴィ様は私でも手がつけられんのだ」

「あの状態・・・?」


なんだよそれ。


「悪い、エステリーナ。ちょっと用事ができた」

「ああ、了解だ」


話を聞いてエステリーナもある程度察してくれたようだ。イツキさんには今の話は聞こえていなかったらしい。そっちの方が好都合だ。


俺は外が寒いということなど考えず、勢いよくギルドから飛び出した。今すぐ魔界に行き、レヴィの無事を確認しないと・・・。


「・・・え」


そんな俺は、遠くからこちらに歩いてくる人影を目にして動きを止めた。降る雪でよく見えないが、あの小柄な、水色の髪の少女は・・・。


「レヴィ!」


そう叫んで少女に駆け寄る。


「よかった、無事だったんだな」


そこにいたのはレヴィだった。彼女は俺の顔をじっと見つめると、何故か魔力を纏った。


「え────」


気付けば俺は派手に吹っ飛んでいた。降り積もった雪の上を転がりながら、勢いよく民家にぶつかる。


「っ、レヴィ・・・?」


なんだよ、どういうことだ?

レヴィは喋らない。いつもなら抱きついたりしてくる筈なのに・・・。


「・・・」


彼女の瞳が俺を捉える。それと同時に、明確な殺意が俺に向けられた。

簡単な人物紹介


【エステリーナ・ロンド】

・年齢17歳

・身長166cm

・体重それは秘密だ

・好きなもの、こと

迷宮探索、素振り

・嫌いなもの、こと

辛い料理、シスコンモードの兄

・魔法

炎魔法

・初登場

第四話


ジークが王都に行くまでの道中で出会った少女。火属性魔法を使いこなす魔剣士で、かなりの実力者である。真面目でとても頼りになるが、ジークの事になると年相応の女の子らしい反応を見せる。

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