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第百三十五話 魔神狩り

「ふあぁ、ねむ・・・」


可愛らしい欠伸をしながら、一人の少女が布団の中から這い出てきた。そして鏡を見ながらボサボサになった水色の髪を水魔法で綺麗に整え始める。


「うーん、やっぱりジークのベッドじゃないと気持ち良く寝れないなぁ・・・」


彼女の名前はレヴィこと嫉妬の魔神レヴィアタン。現在レヴィはジークの家には居らず、魔界にある嫉妬の水魔殿に戻ってきていた。


ジークとマンモンの戦いが終わった数日後、部下であるキュラーからある話を聞いたからだ。


『憤怒の魔神領に何者かが攻め込み、憤怒の魔塔が消滅(・・)した』


もしかすると、この領土にも何者かが攻め込んでくるかもしれない。そう思い、レヴィは一度ここに戻ってきたのだ。


しかし、特に何も起こることはなく。


「とりあえず着替えよーっと・・・」


そう言ってレヴィは着ていたパジャマを脱ぐ。そしてタンスの中を漁り始めた。因みに彼女、基本服装にはこだわらない。


そんな時、部屋の扉が開く音が聞こえた。しかし服を選んでいる最中のレヴィは振り返らない。


「だれー?」

「いやぁ、ちょっと水色の髪の女の子を捜してるんやけど、何処に居るかしらん・・・って、居ったわ」

「は?」


顔を向ければ、自分と同じような髪型の少女がニコニコしながら立っている。その顔をレヴィは何処かで見たことがあった。


「あれ、まさか───」


次の瞬間、凄まじい衝撃と共にレヴィは吹っ飛んだ。そのまま部屋の壁を突き破り、幾つもの部屋を破壊しながら大広間でなんとか着地する。


「ちょっと、何すんのさ」

「あははは、軽い挨拶やで?」


崩壊した壁の向こうから、膨大な魔力を纏う少女が歩いてくる。その手にはいつの間にか巨大な槌が握られていた。


「君、魔神アンリカルナだよね?こんな所に何の用?」

「あっ、ウチのこと知ってるんや!嬉しいなぁ。まあ気軽にアンリって呼んでな」

「何の用って聞いてるんだけど」


レヴィの身体から魔力が放たれる。それを身に受けてアンリはニッコリ笑った。


「今からここをぶっ壊すって言ったらどうする?」

「決まってるでしょ、殺す」


まだ服選びの最中だったレヴィは魔力で漆黒のローブを創り出し、それを身に纏った。それは、普段レヴィが滅多に纏うことがない嫉妬の魔神としての正装である。


「あははは、まあその前に。ちょっとおしゃべりしようや」

「はあ?」


そんなレヴィを前にしても余裕を崩さないアンリは、近くに転がっていた椅子を起こしてそれに腰掛けた。








◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆






「ねえ、一つ聞いていいかな?」

「うん、ええよー」

「君ってさ、絶界の十二魔神ではあったけど、そこまで強くなかったよね?」

「うんうん」

「何の為にボクに喧嘩売りに来たの?」


レヴィには理解出来なかった。

自分の目の前にいる少女は、自分よりも遥かに格下だったのだ。

何故なら《大罪》を司る魔神ではないから。


そんな格下が自分に何の用なのだと。


「レヴィちゃんはさ、あの話聞いてる?」

「は?何の話かな」


いきなりレヴィちゃんと呼ばれた事に若干ムッとしつつも、レヴィはアンリに聞き返す。


「憤怒の魔塔が消えたって話やん」

「・・・まさか」


目の前にいる少女がさらに笑みを深める。それでレヴィは理解した。こいつが憤怒の領域に攻め込んだ張本人ということを。


「実は、一応ウチ()のトップみたいな方の命令で、面倒やけどあることをせんとあかんようになってなぁ」


アンリがゆっくりと立ち上がり、レヴィの目をじっと見つめる。


「まあ、簡単に言うと・・・魔神狩りかな」


そう言った瞬間、アンリは派手に吹っ飛び、壁に激突した。レヴィが自身の魔力でアンリを弾いたのだ。


「舐められたもんだね。君程度に殺られる程弱いつもりはないんだけど」

「あっははは、まだ気付かんのー?」


ガラガラと崩れる壁をどかしながら、アンリは槌に魔力を纏わせた。


「そーらっ、《破壊槌パワースタンプ》!!」


そして床に槌を叩きつける。その衝撃で大広間全体が崩落した。


「え、レヴィ様・・・!?」

「ちっ、全員退避しなさい!!」


下の階に着地したレヴィは、現れた自分を見て驚いている部下達にそう叫ぶ。しかしアンリは彼らを逃がさない。


「よいしょぉっ!!」

「ぎゃああぁぁぁぁ!?」


着地と同時に一気に跳躍し、逃げようとする魔物達に槌を叩き付ける。押し潰された魔物達の血と肉片が飛び散る中、アンリは楽しそうに笑った。


「あはははは!!誰が君程度ってぇ?」

「《水牢ウォータープリズン》!!」


そんなアンリを水が包み込む。


「《切り裂く水(ウォーターバイト)》!!」


さらにレヴィが放った魔法は動けないアンリを容赦無く切り裂いた。


「っはは、やるなぁレヴィちゃん」

「あんまり調子に乗らないでよアンリカルナ」


体勢を立て直そうとするアンリの背後から聞こえた声。急いで振り返ろうとするが、その前に彼女は吹っ飛び、顔面から壁にぶち当たる。


「れ、レヴィ様、何事ですか!!」


そんな時、崩れた天井からキュラーが飛び降りてきた。彼はレヴィの前に着地すると、慌てながらレヴィに怪我がないか確認する。


「キュラー、下がってて」

「し、しかしですね・・・」

「下がれ」


ギロりと睨まれ、キュラーの肩が跳ねる。

全く戦闘を楽しんでいない。主人が本気で相手を殺そうとしているのを彼は感じ取った。


「わ、分かりました・・・」


そう言ってキュラーはレヴィから離れる。それと同じタイミングで壁を蹴ってアンリがレヴィに飛びかかった。


「全然効かんなぁッ!!」

「《出でよ、大海の侵略者よ》」

「お・・・?」


レヴィの目の前に巨大な魔法陣が出現する。そしてそこから巨大な魔物が姿を現した。


「うっひゃあ、召喚魔法かぁ!」

「あの女を喰え、クラーケン」


まるで巨大な烏賊(いか)のような魔物クラーケンは、槌を構えるアンリに襲いかかる。


「焼いたら美味そうやなぁ・・・じゅる」


涎を拭き、アンリが槌を振りかぶる。そんな彼女にクラーケンの腕が絡み付いた。


「わっ、なんやこれ!?」


吸盤が引っ付いてアンリは身動きが取れなくなる。そしてクラーケンは容赦無く彼女を捕食した。


「・・・キュラー、今すぐ全員退避させて」

「レヴィ様?」

「巻き込まれても知らないよ?」


次の瞬間、クラーケンが無惨に弾け飛んだ。べちゃべちゃと臓器や血があちこちにぶつかり嫌な音を立てる。


「分かりました、どうかご無事で」


キュラーは自分に背を向ける小さな主に頭を下げ、そして勢いよく飛び去った。レヴィは彼を見送ることなくクラーケンを抹殺したアンリを睨む。


「うーん、レヴィちゃんは格下のウチがなんでこんなに強いんか知りたいみたいやなぁ」

「・・・」

「まだ分からんの?ウチが纏ってるこの魔力がどんな魔力なんか」

「・・・そういうことか」


レヴィの周囲を水が渦巻く。敵の正体がようやく判明した。アンリはもうただの魔神ではない。自分と同格の相手だ。


「じゃ、改めましてー」


対するアンリも全てを破壊する怒りの魔力を槌に纏わせ、


「新しく《憤怒(イラ)》の罪を司る魔神となりました、アンリカルナ・エルドラードです。よろしくなぁ、先輩!!」


そして高く跳び上がり、槌をレヴィに振り下ろした。

簡単な人物紹介


【ジークフリード】

・年齢17歳

・身長175cm

・体重67kg

・好きなもの、こと

昼寝、迷宮探索

・嫌いなもの、こと

仲間を傷付けるやつ

・魔法

不明

・初登場

プロローグ


この物語の主人公。

異常なまでに高いステータスを手に入れて異世界フォルティーナに転生した。そこで出会う少女達からことごとく惚れられているが、告白されるまで彼女達の恋心に気付いていない。






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