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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
嫉妬の宴〜魔神が来たりて厄を呼ぶ〜
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第十三話 奴隷市場での出会い

「・・・なるほどなぁ」


魔物の群れが王都に迫ったあの事件から三日後、俺は王都西にある奴隷市場を訪れていた。


特に理由があって来たわけじゃない。

なんとなくどんなものか気になったので来てみただけだ。


「・・・」


周りを見渡せばボロボロの服を来た様々な奴隷達が檻の中で鎖に繋がれている。

どの奴隷も目に光が宿っていない。


「やっぱ、ここは異世界なんだなぁ」


奴隷市場なんて、日本には無かった。海外に行ってもなかっただろう。そんなものが普通にあるこの世界。

俺が今ここでこんなのは間違ってると叫んでも、王都に住む人達からしたらよく分からないだろう。

やっぱり地球とこの世界は、似ていても全く別物なんだ。


「・・・ん?」


しばらく奴隷市場を歩いていると、ある建物を見つけた。中からは何やら声が聞こえてくる。それも1人じゃない、2人、3人、もっといるか。


「なんだろ」


気になったので俺は中を覗いてみた。


『さあ、次の奴隷だぁ!こいつは体力があってなぁ、1日中何しても大丈夫だと思うぜぇ!初期値段は金貨2枚、さあ買った買ったぁ!』

「・・・なんだありゃ」


どうやら奴隷を使って何かしているようだが・・・と、俺は壁に貼られた1枚の紙を見つけた。


『奴隷オークションやってます。貴族の娘など、他の奴隷とは違う者が欲しい人は是非ご参加ください』


・・・なんか、見てて気持ちいいものじゃないな。


『おっと、今のが最後かな?おめでとう、金貨15枚でペンタさんが買取りましたぁ!』


司会の声とともに歓声があがる。

先程紹介されていた奴隷は首に繋がれた鎖を引っ張られ、買い取った男に引っ張られていった。


『さあさあ、次の奴隷だ。えー、おっ、こいつは今回の目玉だね。エルフの少女だぁ!』

「エルフ・・・?」


司会の声に反応してしまった。

この世界にはエルフなんて種族もいるのか。


と、そんなことを考えていると奴隷の少女が引きずられてきた。

長い黄緑の髪はボサボサになっているが、長い耳はここからでもよく見えた。


『はっはっ、ここの人にはエルフなんて珍しいだろう?さあ、初期値段は金貨5枚、はい、買った買ったぁ!!』


司会の声と共に人々は口々に金貨の量を増やしていく。


「金貨19!」

「俺は金貨20だ!」


・・・なんか、嫌だわここ。

別に普通のことなのかもしれないけど、やっぱ俺はこういうの嫌いだ。


そう思って帰ろうとした時、奴隷の少女と目が合った。なぜこの距離で目が合ったと分かったのか。

それは判らないけど、確かに目が合っている。


「っ・・・」


まるで、救いを求めるかのようなその瞳。


ここで可哀想だからという理由で彼女を買い取ったとしよう。

それは傍から見たらだだの偽善である。

他にも奴隷は沢山いるのだ。その全てを可哀想だからといって買うことなど出来ない。


あーでも、ここであの子を見捨てたら俺、一生後悔する気がする・・・。


「あーくそ!」


もう知らん!

あとでシオンに何言われても知らんからなぁ!


『えー、金貨20枚以上の方は・・・いませんね。それではこのエルフの奴隷は─────』

「ちょっと待ったぁ!」

『え・・・』

「俺は金貨30枚だ!!」


俺はいざという時の為に袋に入れて腰にぶら下げていた金貨を握り締めて叫んだ。









◇ ◇ ◇








「────ということで、奴隷を買いました」

「・・・・・・」


家に帰った俺は、エルフの少女と手を繋ぎながらシオンにそう言った。シオンは目をぱちくりさせている。


「ほんと、ごめんなさい!」

「え、いえ、怒ってはいませんけど・・・」


俺が頭を下げるとシオンは慌てて手を振った。


「・・・別に、変なことをするつもりで連れて帰って来たわけではないんでしょう?」

「も、もちろんだ」

「ふふ、ならいいです。ご飯作っておきますね。先にお風呂に入れてあげてください」


優しい!やっぱりシオンは女神だぁ・・・。










「ほら、風呂入っといで」

「・・・」


現在俺はエルフの少女を連れて風呂の前に来ていた。しかし、何故かこの子は俺の服を掴んだまま動こうとしない。


「どうした?」

「・・・」


風呂嫌いなのかな?


「・・・あ、そういうことか」


なるほどなぁ、多分だけどそういうことだろ。


「大丈夫だって、俺はここで座っとくからさ、ほら、身体洗っといで」

「・・・」


俺が頭を撫でてやると、少女は服を脱いで風呂場に入っていった。もちろん俺は彼女のお着替えシーンを見たりなどしていない。


多分さっき彼女は俺がどっかに行ってしまうと思って怖かったのだろう。まあ、そりゃそうか。


「さて、気長に待つか・・・」


そう呟いて俺はその場に腰を下ろした。









しばらくして少女は風呂場から上がってきた。ボサボサだった長い黄緑色の髪はさっきより綺麗になっている。


「そこに着替え置いてるから。シオンのだけど」


少女のことは見ずに俺は棚を指さす。ここで後ろを振り返れば俺は負ける。


「・・・その、どうして私を?」

「お・・・」


その後、彼女が着替え終わるのを待っていると、突然彼女が声を掛けてきた。

透き通るような綺麗な声だ。


「やっと喋ってくれたな」


このままずっと喋らないかと思ったぞ、うん。


「まあ、何でかは俺もよく分からんけど、後悔はしてないよ」

「・・・ありがとう、ございます」


突然少女は泣き始めた。

ちなみにもう着替え終わってるので見ても問題はない。


「これから、どんな人に買われて、どんな事をされるんだろうって考えたら、毎日が怖くて・・・」


ポロポロと涙が床に落ちる。


「まっ、俺は君を奴隷扱いするつもりはないから安心してくれ。あ、俺はジークフリード。よろしくな」


自己紹介すんの忘れてた。


「・・・シルフィ・パストラールです」


涙を拭いながら頭を下げてくるエルフの少女シルフィ。

うん、他のおっさん共に買われてたら何されてたか分からんし、俺が連れてきてよかった。


「さて、シオンが飯作ってくれてるから食いに行こう」

「え、でも、私は」

「だーかーら、俺もさっきいた可愛い女の子も君を奴隷扱いするつもりないんだって。これからは普通に暮らせばいい」

「・・・」


ぽかーんとしているシルフィの手を引っ張り俺はリビングに向かった。










「どうも、シオン・セレナーデです」

「はじめまして、シルフィです・・・15歳です」


緊張しているのか少しテンパっているシルフィと、いつも通り無表情なシオンの挨拶だ。

てか、15歳だったのか。かなりちっさいから12歳とかそのへんかと思ってた。・・・いや、エルフだから俺達と寿命とかも違うかもしれないし・・・。まあ、可愛いからどっちでもいいや。


べ、別にロリコンじゃないんだからね。


「さて、食べようか。シオンの料理は美味いぞ」

「いいんですか?」

「ああ、腹いっぱい食べな」


俺がそう言うと、彼女は手を合わせてから料理を食べ始めた。


「・・・おいしい」

「だよなぁ、俺はこのスープが好きでだな・・・」


うん、やっぱりシオンのほうが料理できるんじゃないだろうか。


「明日はシルフィの服とか色々買いに行くか」

「えっ、そ、そんな・・・」

「まだ貯金はあるからな、遠慮しなくていい」

「でも・・・」

「・・・」


まったく、この子は。

俺はシルフィのほっぺたを軽く引っ張った。本気でやると引きちぎれる可能性があるのが俺のステータスの怖いところだ。


「あうぅーー」

「はは、なんか妹できたみたいだ」


シルフィのほっぺたで遊んでいると、ふとそんな事を思った。前の世界では俺は一人っ子だったからな。


隣に座っているシルフィの身長はかなり小さい。シオンよりも小さい。だから余計にそう感じるのだろうな。







◇ ◇ ◇






「もう、ジークさんったら、自分の部屋できちんと寝てくださいって言ったのに・・・」


その日の夜、シオンはリビングの床で寝ているジークを見つけた。


「・・・あ」


そして、ジークを起こそうとした時、彼にしがみついて寝ているシルフィを見つけた。

とても幸せそうな表情で眠っている。


「ふふ」


そんな光景を見て、ジークの選択は間違ってなかったんだな、とシオンは思うのだった。






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