番外編 ある日の夜
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私、シオン・セレナーデは、ある日黒髪の少年と出会った。
この世界で黒髪の人は少ない。自分も黒髪なのだが、彼を見た時何だか嬉しい気持ちになった。
そして彼を運び、寝かせた。
時折「み、味噌カツ!」とか「どっちかというとΩカップ」などという意味不明な寝言を呟いていたのだが、その事は目を覚ました彼には言っていない。
その後、村に魔神の1人が来た。
アルターと名乗った魔神は、私達が森に行っている間に村を焼き尽くし、村人達を皆殺しにした。
目的は私が持つ『ハデスの魔眼』。
そして、アルターが私の魔眼を抜き取ろうとした時、彼は駆け付けてくれた。
『無事か?』
そう言って彼が手を差し伸べてくれたあの時から、彼を見ると胸がドキドキするようになった。
これまで一度も味わったことの無い、不思議な感覚。
そして、2人で王都を訪れ、家を買った。
綺麗な家で、2人で過ごすにはちょっと大きい。
それからまだあまり日は経っていないけど、私は彼と共に過ごすこの何気ない生活が楽しくてしょうがない。
・・・昔から感情を表に出すのが苦手なので、いつも無表情だけど。
◇ ◇ ◇
「・・・?」
ある日の夜、ふと目が覚め、私は部屋を出た。
水でも飲んでもう一度寝よう・・・。
「・・・ジークさん?」
台所に向かう最中、置いてあるソファに寝転がって寝ているジークさんを見つけた。
「・・・」
何気なく彼の傍にしゃがみ込む。
とても気持ち良さそうに寝ているので、起こさない方がいいだろう。
「・・・」
ツンツン。
ほっぺたをつついてみる。
「んぐっ、やっぱり海老フライ・・・」
「・・・ふふ」
何度か彼の寝言を聞いているが、本当に毎回何の夢を見ているのだろうか。
幸せそうな顔をしているから、少なくとも嫌な夢は見ていないと思う。
「シオンも、そう思うだろぉ・・・」
「えっ」
自分の名前が出てきたことに驚き彼の顔を見るが、彼はまだ寝ていた。今のも寝言のようだ。
「・・・」
どうやら私は彼の夢の中に出て行ける程の存在にはなれているようだ。なんだか嬉しい。
「・・・寝よう」
なんだか彼を見ていたらすごく眠くなってきた。
早く水を飲んで寝よう・・・。
でも、その前に。
私は彼を起こさないように、そっと布団を掛けた。
「おやすみなさい、ジークさん」
そう呟いて、私は台所に向かった。
「・・・シオンさんまじ女神ぃぃ」
シオンが再び眠りについた頃、布団を掛けられたジークは布団にくるまりながらそんな事を呟いていた。
明日からは第二章的な部分を投稿していきます




