第百二十五話 ステータス強奪
砂塵が舞う中、俺は衝撃を受けていた。
突然現れた金髪の男、奴が纏っていた魔力は魔神・・・それも大罪を司る魔神と同じかそれ以上だった。
だから本気で殴った。
それなのに、金髪の男は無傷。さらに片手で俺の拳を受け止めている。
「おいおい、挨拶も無しにいきなり殴ってくんなよ」
「っ、こいつ・・・」
男が手の力を緩めた隙に俺は一旦距離をとった。
「とうとう来たね、最後の大罪が」
駆け寄ってきたレヴィがそう言う。
これまで戦ってきた大罪を司る魔神は六人。
《嫉妬》の魔神レヴィアタン。
《怠惰》の魔神ベルフェゴール。
《憤怒》の魔神サタン。
《色欲》の魔神アスモデウス。
《傲慢》の魔神ルシフェル。
《暴食》の魔神ベルゼブブ。
そして残る大罪は一つ。
「俺は《強欲》を司る絶界の十二魔神の一人、マンモンだ。よろしくな」
「よろしくしたくねーわ」
強欲の魔神か・・・。
一体どんな魔法を使うんだ?
「ってあれ、ルシフェルから《傲慢》の魔力を感じない気がするんだが、気のせいだったり?」
「ルシフェルは魔剣に操られてただけで、今は魔神じゃない」
「へー、なるほどなぁ」
・・・なんだこの男は。
なんかこれまでの魔神とはまたノリが違うな。
「で、何しに来た」
「決まってんだろ。ジークフリード、お前をぶっ潰すために来たのさ」
「ちっ、めんどくせえ」
なんでそうなる。
考えてみれば、こんなにも魔神に絡まれたりするのは俺の固有スキルのせいなのかもしれないなぁ。
「ちょっと、何言ってんのさ。ボクのジークに手を出さないでよね」
「え、何?お前らデキてんの?」
「うるせえ!」
いやまあ、俺に抱きついてくるレヴィを見たらそう思うかもしれないけども・・・。
「気を付けてねジーク。強欲の魔法は厄介だよ」
「そうなのか」
「はは、実はもう使ってんだよねー、禁忌魔法」
ん?
今金髪の男・・・マンモンが妙な事を言った気がするのは俺だけか?
「凄いな、あんたの筋力」
「・・・は?」
あいつ、能力透視のスキルでも持ってんのか?
「おかげで筋力が合計一万以上になっちったよ」
「・・・」
おいおい、まさか。
嫌な予感がした俺は、能力透視のスキルを使ってマンモンのステータスを覗き見た。
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~強欲の魔神マンモン~
★ステータス★
レベル:350
生命:8800
体力:8650
筋力:6500
耐久:7100
魔力:8000
魔攻:4800
魔防:7000
器用:3000
敏捷:4500
精神:300
幸運:260
★固有スキル
《ジークフリード・筋力》
筋力+9999
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そして自身のステータスも見る。
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~ジークフリード~
★ステータス★
レベル:470
生命:8100
体力:9999
筋力:0
耐久:9150
魔力:9999
魔攻:6860
魔防:6400
器用:3500
敏捷:7200
精神:1400
幸運:-6200
★固有スキル★
・超力乱神
筋力を+5000する。
・全属性適性
全属性の魔力を扱えるようになる。
・状態異常無効化
全状態異常を無効化する。
・超不幸
幸運-6200
・能力透視
相手のステータスを見る事が出来る。
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「どうえええ!?筋力0だとぉ!?」
「だーーーはっはっは!お前の筋力は俺が頂いた!!」
奇跡的に固有スキル《超力乱神》のおかげで筋力は+5000されている。けど、これじゃあ魔神に通用しないぞ!?
「これが俺の禁忌魔法、《全てを奪う強欲なる手》だ。相手から一つだけステータスを奪い取ることが出来る」
「まじかよ」
「けど、もう他の奴から筋力は奪えない。奪えるのは一つのステータスにつき一人だけだ」
まてまてまて、まじでどうすんだよこれ。
「さぁて、思いっきり暴れようか」
「ぐっ・・・」
これまで俺が魔神に勝利できたのは、謎に高い筋力のおかげだ。けどこれがたったの5000しか無くなると・・・。
「ジークさん、伏せて!!」
「え───」
「《神気功弾》!!」
ルシフェルの声に従って伏せた瞬間、俺の頭上を光の弾が猛スピードで通過していった。
それはマンモンに直撃すると、輝きながら爆発する。
「ってえ、ルシフェルか」
「私が相手になるよ」
聖剣を構えたルシフェルが俺の前に出る。
「ははっ、いいね。本気で来いよ」
「ッ────」
ルシフェルが勢いよく地を蹴り、凄まじい速度でマンモンに斬りかかった。それを見たマンモンは目を見開き───
「《全てを奪う強欲なる手》!!」
禁忌魔法を発動した。
それと同時にルシフェルが青白い光に包まれ、勢いよく倒れ込む。
「っ!?」
「どうやらお前の長所はそのスピードみたいだな。だから・・・」
「うそ・・・敏捷が・・・」
マンモンのステータスに、新たなスキルが追加される。
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★固有スキル
《ジークフリード・筋力》
筋力+9999
《ルシフェル・敏捷》
敏捷+7200
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ちっ、多分ルシフェルの敏捷は0になっちまったはず。
これはまじでやばいぞおい。
「おい、お前は俺と戦いたいんだよな?」
「ああ、そうだ」
「ルシフェル、みんなを連れて王都に戻れ」
「そ、そんなっ・・・」
勝ち目がない。
俺を圧倒的に上回る筋力と敏捷を手に入れたこの魔神には。
「じ、ジーク、何言ってるの!」
「レヴィも逃げろ。断言しとく、勝ち目はゼロだ」
「っ・・・」
突然現れた最悪の魔神。シオン達まで巻き込むわけにはいかない。
「・・・なーんか勘違いしてるかもしれないけど」
「あ?」
「別に俺、お前らのこと殺したりしないぞ?」
・・・はぁ?
「俺は強いヤツと戦いに来ただけだ。誰かを殺すのは俺の主義じゃねーし」
「へぇ、本当だろうな?」
「あったりめーだ」
「俺以外に手は出さないのか?」
「おうよ」
「なら来いよ。相手をしてやる」
俺がそう言うと、マンモンは楽しそうに笑って魔力を纏った。
「じ、ジークさん!!」
「シオン、危ないから下がってろ!」
向こうから駆け寄ろうとしていたシオンにそう言い、俺はマンモンに向かって殴りかかった。




