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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
日常は平和と共に
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第百二十一話 エステリーナとご挨拶 後編

「あ、あのですね、エステリーナとは共に依頼を受けたり迷宮に行ったりするだけの関係でしてね・・・」

「・・・本当にそれだけか?」

「は、はい!」

「・・・手を出したりしていないだろうな」

「滅相もないですッ!!」


やばい、ほんとにやばい。

さっきから俺の正面にいるエステリーナのお父様からの視線が怖すぎる。


「確か君は魔神を倒す程の実力を持っているそうだな」

「は、はい、一応・・・」

「それは事実なのだろうな」

「もちろんであります!!」


この世界に来て、初めて命の危機を感じたのはアビスカリバーと戦った時。それでも相手は魔神だった。

今俺の前にいるのはエステリーナの父、人間だ。


なのに汗が止まらないし、手足も若干震えている。ステータスは俺の方が高いと思うが、ほんとに殺される気がするのは何故か。


「父上、ジークの実力は本物です。私は彼に何度も命を救われています」

「俺も今年の魔闘祭でこいつに負けているしな」

「ふん、ならお前はその程度の実力だということだ、イツキ」

「なんだと!?」


机を叩いてイツキさんが立ち上がる。

ちょっとぉ、俺のせいで雰囲気悪くなってんじゃないっすか。


「二人共落ち着いて。まだ自己紹介をしてなかったわね。私はエステリーナとイツキの母のソフィです」

「ど、どうも」


どうやらエステリーナのお母さんはソフィという名前のようだ。なんか名前で優しそうって分かるな。


「それで、この人が夫のクレス」


ソフィさんがエステリーナの父・・・クレスさんの頬っぺたをぷにぷにし始めた。まって、暴れ出すんじゃねーのかこれ。


「こら、やめんかソフィ」

「うふふ、照れてるのかしら」

「フッ、馬鹿言え」


ぷ、ぷにぷにされてちょっと嬉しそうだ!!


「チッ、何をイチャついてやがる。ちょっと来い、ジーク」

「え、あ、ちょっ・・・」


ぷにぷにされているクレスさんを眺めていると、突然立っていたイツキさんに部屋の外まで引っ張られた。


「なんですか?」

「分かったか?あいつがどんな男なのか」

「え、まあ、ソフィさんとはラブラブなんだなと」

「そうじゃなくてだな・・・」


イツキさんは頭を掻くと、面倒くさそうにため息をついた。


「あの男はエステリーナのことを溺愛している。それに比べて俺は昔からあまり好かれていなくてな」

「・・・イツキさんもエステリーナのこと大好きですよね」

「当たり前だ」


うわー。クレスさんに似たのかもなぁ。

けど、確かにイツキさんとクレスさんは仲が悪そうだ。


「しかも考えがいちいち古臭いし、言葉遣いも古臭い。だがあれでも一応剣術の達人、俺とエステリーナは昔からあの男に剣術を教わってきたんだ」

「だから二人は強いんですね」

「今でもあの男には勝てるかどうか分からんがな」


まじかよ。じゃあクレスさんのレベルは下手したら200以上か。


「とにかくだ。あの男の前で余計なことは言うなよ。特にエステリーナに関係することだ」

「そ、それはまあ・・・」

「もし劇の最中に娘さんの胸を揉んだなどと言ってみろ、この街はお終いだぞ」

「言うわけないでしょうが!!」







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






ジークとイツキが部屋を出ていった後、残されたエステリーナ達はジークについて語り合っていた。


「単刀直入に言おう、エステリーナはジークフリード君に惚れているのか?」

「ふあっ!?」

「そうでなければ世話になっているからといって、わざわざ男を連れてこないだろう」

「うっ・・・」


父にそう言われ、エステリーナの顔が赤くなる。


「・・・まあ、確かに良い少年だな」

「え?」

「何故か怖がられていたが、彼が身に秘めている力は俺を遥かに上回っている」

「・・・」


エステリーナがクレスをぽかーんと見つめる。父が他人を褒めることなど滅多にないからだ。


「うふふ、ようやくエステリーナも恋をしたのね。お母さん嬉しいわぁ」

「少し寂しいのだがな」

「・・・?・・・!?」


いつも通りニコニコしているソフィはわかるが、父の態度がいつもと違うことにエステリーナは戸惑う。


「ふふ、一目見ただけでジークフリード君を認めたってことかしら?」

「フッ、そんなところか」

「あ・・・」


つまりはそういうことだ。

普段なら娘に近寄る男達を許さないクレスだが、ジークになら任せられると少しの間会話しただけで感じ取ったという。


「まあ、もし娘を泣かせるような奴ならば容赦はしないがな」

「泣かされたことなどありません・・・」


別に父がジークに対して悪い印象を抱いていたわけではないということを知り、エステリーナはほっと胸をなでおろす。

丁度そんなタイミングでジークとイツキが部屋に戻ってきた。


「ふむ、戻ってきたな。それでは君が娘に相応しい男かどうか、朝までじっくり語り合うとしようか」

「ええっ!?」

「ち、父上、何を・・・!?」


先程までとは違ってニヤリと笑うクレスを見てジークは困惑する。しかし、怒ったりしているわけではないと知り、若干恐怖を覚えながらも彼は椅子に座った。





それから、ジークは本当に朝までエステリーナとの関係について聞かれ続けるのだった。









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