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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
日常は平和と共に
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第百二十話 エステリーナとご挨拶 前編

「あれ、エステリーナとイツキさん。どっか行くんですか?」


少し風が肌寒くなってきた今日、俺は普段着を着たロンド兄妹に声を掛けた。

この二人がペアで行動しているのは、大抵依頼に行く時なのだが、今日は別の理由があるように思える。


「ああ、実家に帰ろうと思ってな」

「実家?」

「明日には戻ってくる予定なんだが・・・」


エステリーナの実家かぁ。多分両親共に赤髪なんだろうけど。


「そうだ、ジークも来ないか?」

「へ?」


エステリーナの両親の姿を想像していた時、突然そんな事を言われて驚いた。


「お、おいエステリーナ、何を・・・」

「別にいいだろう兄上」

「しかしだな・・・」

「ふふ、勿論強制ではないぞ。普段世話になっているから是非両親に紹介したいんだ」


うーん、俺もエステリーナとイツキさんには世話になってるし、親御さんに挨拶はしときたいけど・・・。


(イツキさんイツキさん)

(なんだ)

(俺がイツキさん達の家にお邪魔したら、勘違いされるんじゃ・・・)

(そうなんだが・・・確かに世話にはなってるからなぁ・・・)


そう、突然娘が男を連れてきたら、父親は何を思うだろうか。

もしエステリーナの父親がイツキさん似だった場合、俺は終わる。


「父上も母上もとてもいい人だぞ」

「まあ、来るだけ来てみたらどうだ?」

「そうですね、じゃあ是非行かせてもらいます」


とりあえず準備だけしてこよう。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







馬車に揺られることおよそ二時間程。

到着したのは王都程ではないが、それなりに大きく、活気あふれる街だ。


この街の名は『エリーシア』。何より驚きだったのが、この街を治めているのが月光祭の時に出会ったシャロンの父だということだ。


「そういや、なんでエステリーナはシャロンと仲良しなんだ?」


この街のことを聞いた時、俺はエステリーナにそう聞いた。シャロンの実家はアラベスク家という大貴族。エステリーナは普通の家の出身らしく、どうして二人が知り合ったのかが気になったのだ。


「まだ私達が十歳の頃、シャロンが屋敷に忍び込んだ人攫いの男に連れ去られたことがあってな」

「ええっ!?」

「私がシャロンを連れ去った男を倒したんだ」


ど、どういうことだ?


「その男は黒い鞄を持っていて、すれ違いざまに中から呻き声が聞こえたんだ」

「ふむ・・・」

「それで私が中に誰か居るんですかって男に聞いたら、突然首を絞められて・・・逆に投げ飛ばして気絶させたらしい」

「す、すげえな」

「ふふ、それからシャロンの父親と私の父親が仲良くなって、私はシャロンの遊び相手として屋敷に立ち入ることを許可されたんだ」


・・・なーんか凄い話だな。


「おっと、話をしていたらもう着いたか」

「ふむ、久しいな」


突然エステリーナとイツキさんが立ち止まる。彼らの視線の先には俺の家と同じぐらいの大きさの住宅が。


「あれがエステリーナとイツキさんの?」

「ああ、早速行こうか」


エステリーナに続いてその住宅に向かう。

うわ、やっばい、なんか緊張してきた・・・。


コンコン。


エステリーナが扉をノックする。すると、中から足音が聞こえてきた。


「はーい・・・って、エステリーナじゃないの、それにイツキも!!」

「お久しぶりです、母上」

「もう、帰ってくるなら連絡くらいしてくれても・・・あら?」

「ど、どうも・・・」


中から現れたのは、赤い髪を短く切った、エステリーナによく似て美人な女性。この人がエステリーナのお母さんか。


「あらあらあら」


そんなエステリーナのお母さんは、俺を見て意味深な笑みを浮かべる。


「ジークフリードです。その、二人にはいつもお世話になっていて・・・」

「あらぁ、貴方がジークフリード君ね!!」

「え?」


この人、俺のこと知ってんのか?


「娘が送ってくる手紙に貴方のことが書いてあったのよ。まあ、娘が言う通りカッコいい子ねぇ」

「ちょ、母上!!」

「やーん、照れちゃって」


・・・待って、全然思ってた人と違った。

すっごい優しそうな人だった。


「いらっしゃい、ジークフリード君。どうぞ中に入ってちょうだい」

「あ、はい、おじゃまします・・・」


良かった、歓迎はされてるみたいだ・・・お母さんの方には。


「母さん、父さんは居るのか?」


イツキさんがお父さんにそう聞く。

あれ、エステリーナと違って母上って呼ばないんですね。


「勿論よ。ほら、この中に────」

「久しいな、エステリーナにイツキよ」


突然空気が変わった。

まるで辺りが暗くなったかのような錯覚に陥ってしまう程に、現れた赤髪の人物から放たれるオーラは凄まじい。


「少し話が聞こえたが、君が例の(・・)ジークフリード君だね」


あかん、これはあかんやつや!!!


「娘が世話になっているそうだね。ようこそ、ロンド家へ」

「ど、どどどどうも!!」


全身から汗が流れ落ちる。俺はエステリーナのお父様に向かって勢いよく頭を下げた。


どうか、生きて帰れますように・・・。


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