第百十六話 レヴィの恐怖体験 前編
今章はかなーり平和です
「おはよーーーーーーー!!!」
「だーーーっ、うるさい!!!」
とある晴れた昼下がり。
久しぶりにスヤスヤと眠っていたのだが、耳元で凄まじい声が発せられて俺は飛び起きた。
「レヴィお前なぁ・・・」
「あはは、おはよ」
横を見ればニコニコ笑いながら俺を見ているレヴィが居る。
「もうお昼だよ?いつまで寝てるのさ」
「たまには寝かせてくれよ・・・」
今日はとんでもなく眠い日だ。俺はもう一度ベッドに寝転がった。
「あー、また寝ようとしてる」
「おやすみ」
「起きろーーー!!!」
「ぐおっ、おま────」
しかしレヴィが俺に飛び乗ってきた衝撃でベッドが、床が真っ二つに割れる。
「・・・」
「あらら、また修理だね」
「こんのアホ!!」
「いたいっ!」
完全に目が覚めてしまった。俺はレヴィの頭を軽く叩き、のそのそと起き上がる。
「とりあえず顔洗ってくらぁ・・・」
そして俺は一階に向かった。
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「おはようございます、ジークさん」
「おはようシオン・・・ってどうかしたのか?」
一階に下りると台所にシオンが居たのだが、なにやら痛そうに右目を押さえている。
「あ、その、魔眼のせいなのかは分からないんですけど、なんだかズキズキして・・・」
「大丈夫なのか?」
「はい、痛みは引いてきているので・・・」
「そうか、無理はすんなよ?」
ちょっと心配だな。今までシオンが目を押さえて痛がるとこなんか見たことなかったし。
「もう少しで料理が出来るので、少し待っててください」
「なんか手伝おうか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
そう言ってシオンが微笑む。ならここは任せて顔を洗うか。
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「あ、おはようございます、ご主人様」
「よう、シルフィ」
その後、顔を洗って歯を磨き、服を着替えてリビングに向かった俺のもとにエルフ族の少女シルフィが駆け寄ってきた。
「え、あの、ご主人様・・・?」
「はっ、つい・・・」
シルフィの声で我に返る。
いつの間にか無意識に彼女の頭を撫でていた。こんな小柄な美少女の笑顔を見ていると、誰だってこうしてしまうだろう。
「・・・」
チラリと彼女を見てみると、恥ずかしそうにしながらもどこか嬉しそうだ。
「ってなんか恥ずかしくなってきた」
俺はシルフィの頭から手を離して頬を掻いた。
魔神ベルゼブブを倒し、シルフィに告白されてからひと月が経った。あれから特に何かが起こるわけでもなく、俺達は平和に過ごしている・・・などと言っていたらまた何かが起こるんだろうけど。
まさかシルフィにまで好意を抱かれているとは思わず、あの時の俺は大変テンパった。告白された次の日なんか、照れてギクシャクしちゃったしな。
「ご主人様、どうかしましたか?」
「ああいや、シルフィは可愛いなと思ってな」
「えっ!?」
おっと、つい心の声を口にしてしまったぜ。
「そ、そんなことは・・・」
ゴニョゴニョ言いながらモジモジするシルフィ。そういうところがとんでもなく可愛らしい。
「二人共、ご飯ですよ」
「あ、おう」
そんな時、後ろからシオンに声をかけられて振り向くと、綺麗な銀髪を弄りながら少女が座っていた。
「ってルシフェル、いつの間に・・・」
「おはよ、ジークさん」
相変わらずのエンジェルスマイルでこちらを見つめているのは堕天使のルシフェルだ。
「ふむ・・・」
こうして見ると、なんだこのハーレムは。世の中の誰もが羨むであろう美少女達との共同生活・・・最高ですな。
なーんて思っていた時。
「ぎゃあああああああ!!!!」
突然上の階からレヴィの叫び声が響く。
それと同時に俺は反射的に駆け出していた。
「どうしたレヴィ!!」
「うわあああん、ジークぅぅ!!」
二階に上がり、俺の部屋に入ると泣きながらレヴィが俺に飛びついてきた。一体何があったのだろうか。
「お、おば、おばけぇぇぇぇ!!!」
「お化け?」
号泣するレヴィを大変可愛らしいと思いながら、俺は彼女の頭を撫でて落ち着かせてやる。
「なんか、前にも似たような事があった気が・・・」
確か停電になった日に、変態が家の中を覗き込んでいたあれだ。
「違うの!!今回はキュラーじゃなくて目が充血した女の人だったのぉ!!」
「えええ・・・?」
シオンが言ってた幽霊は、確か雨の日の夜に現れるはずだ。今は昼だし外も晴れてる。
「見間違いじゃ・・・」
「目が合ったよぉぉ!!」
・・・とりあえずレヴィが泣き止んでから詳しく聞こう。
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レヴィから聞いた話。
俺のベッドでゴロゴロしていたレヴィは、突然視線を感じて窓を見たらしい。すると、窓にべったり引っ付いて女の人がレヴィをじーっと見つめていたそうだ。
その女は髪が長く、前髪の隙間から見えた瞳は真っ赤に充血していたという。
うん、井戸から出てくる人じゃね?
「落ち着いたか?」
「ぐす・・・うん」
俺の膝の上に座るレヴィの頭を撫でてやる。以前心霊系が駄目だと判明したレヴィにはトラウマレベルの体験だったのだろう。
「うぅ、怖いぃ・・・」
「とりあえず飯食おう。今日は一緒に居てやるから」
「ほんと?」
「おう」
俺の言葉を聞いてレヴィが満面の笑みを浮かべた。
ほんと、すぐ表情が変わるやつだよなぁ・・・そこが可愛いんだけど。




