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異世界ディヴェルティメント〜不幸少年のチート転生譚〜  作者: ろーたす
グラトニーディナー〜妖精少女と晩餐会〜
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第百十二話 魔神殺し

「は、はははは、勝った、僕の勝ちだ・・・!!」


先程まで森があった場所に立ち、ベルゼブブが笑い声を上げた。

ジークの逃げ場を無くすためにほぼ全魔力を魔法に込めた。あれで避けられているはずがないとベルゼブブは勝利を確信する。


「ああ、しまったなぁ。エルフまで喰っちゃったかぁ」


彼の周囲にはもう何も無い。自身が生み出した魔物達も、全て喰らい尽くしたからだ。


「まあいいや、ご馳走様でし────」


しかし、彼はある事に気が付く。


「え、あれ・・・?」


ジークがもつ魔力はかなりの量だった。しかしそれを喰らった筈なのに、全く力が上昇していない。


「ど、どういうことだ」


一つの可能性が思い浮かぶが、ベルゼブブは即座にそれを否定する。そんな事があるはず無い・・・と。


「なるほど、とんでもねー魔法だな」

「ッ─────」


そんな時に背後から聞こえた声。

それを聞いてベルゼブブの余裕は完全に消え去った。


「なんで、生きている・・・」

「ジャンプしたんだ」

「は?」

「思いっきり高くジャンプした、それだけ」


振り返れば、シルフィを抱きかかえて不敵な笑みを浮かべるジークが立っている。


「ジャンプしただけで・・・?」


ベルゼブブのかなり広範囲を呑み込んだ。しかも凄まじい速度で。なのにこの男はただジャンプしただけでそれを回避したというのだ。


「ぅ・・・」

「あ、わりぃシルフィ。速すぎて気絶しちまってたか」

「へっ、あ、ご主人様!?」


そんな時、ジークが抱えていたシルフィが目を覚ました。


「そ、その・・・」

「言いたいことは沢山あると思う。けど、ちょっとだけ待っててくれ」


頬を赤く染めたシルフィをジークは地面に降ろし、呆然とするベルゼブブに顔を向けた。


「魔力のコントロール、俺もちょっとやり方が分かってきたぞ」


シルフィが無事だったのは、ジークが魔力で彼女を覆い、風や振動から守ったからだ。


「んで、お前は今のでかなり魔力を消費したみたいだな」

「ふ、ふふふふ、まだだ」

「あ?」

「君は気付いてないと思うけど、王都に送り込んだ飢餓の魔物達が喰らった人間の魔力は僕のもとに送られるようにしている!!だから魔力には困らない!!」


それを聞いて、ジークは頭を掻いた。


「なあ、お前こそ気付いてるか?」

「何が」

「その飢餓の魔物ってやつ、多分全滅してるぞ」

「な・・・あ」


そこでようやくベルゼブブは、王都から全く魔力が送られてきていないことに気付く。


「馬鹿な・・・あの量の魔物を」

「王都にはレヴィにルシフェル、それにシオン達も居るんだ。いくら魔神級の魔物を送り込んでも返り討ちにされるっつの」

「く、くそ、くそくそくそくそくそくそくそぉぉ!!!!」


地を蹴り、ベルゼブブがジークに襲いかかる。しかし強い衝撃で全身が揺れたと感じた時には、ベルゼブブの身体は勢いよく吹っ飛んでいた。


「がはぁっ!?」

「黒い腕に触れられる前に本体をぶっ飛ばせばいいだけだ」


ただ殴られただけ。それだけでベルゼブブは重症を負う。


「う、ぐあああああ!!!」

「うるせえ」


全身を襲う激痛に耐え切れず、ベルゼブブが叫んだ。そんな魔神をジークは蹴り飛ばす。


「ぐ、あははは、こんなにボロボロの僕を痛めつけて楽しいかい・・・?」

「別に俺は正義のヒーローでも何でもないしな。お前が苦しもうがはっきり言ってどうでもいい」

「は、はは、君は悪魔だ」

「魔神様にそう言われるとは光栄だね。てかお前、さっきから何しようとしてんだ?」

「もう遅い・・・!!」


妙な感じがしていたジークは、まさかと思って振り返る。


「ちっ!!」


嫌な予感が的中した。ベルゼブブが生み出した飢餓の魔物がシルフィの背後から迫っていたのだ。


「シルフィ!!」

「え、きゃっ!?」


咄嗟に駆け出したジークは、シルフィを引っ張って飢餓の魔物を勢いよく殴った。その衝撃で魔物は消し飛ぶ。


「ッ・・・!?」


しかし、魔物が倒されることはベルゼブブの思い通りだった。奇妙な笑みを浮かべた彼は、背を向けたジークに向かって黒い腕を伸ばし、猛スピードで振り下ろす。


「ぐっ・・・!!」

「ご主人様!?」


ジークの背中に激痛がはしった直後、黒い腕が地面を殴った衝撃で二人は吹っ飛んだ。


「し、シルフィ、無事か?」

「私は大丈夫です、でもご主人様が・・・!!」


涙目のシルフィを庇ったジークの背からは大量の血が流れていた。黒い腕が彼の背中を抉ったのだ。


「へへ、こんなもん大した怪我じゃないって」

「で、でも、私の───」

「大丈夫」


自分のせいだと言おうとしたシルフィを、ジークは優しく抱き寄せた。


「俺は負けない。まだ劇の練習も出来てないしな」

「ご主人様・・・」

「信じて待っててくれ」


そして彼女から離れ、ジークはベルゼブブを睨みつけた。


「あははは、今ので結構ダメージを負ったみたいだねぇ」

「別に大したことねーよ。それより、よくもやってくれたな」

「は?」

「お前のスキル、俺に当たったからよかったものの、シルフィに当たってたらどうするつもりだったんだ」

「ははっ、いいじゃないか!!彼女は僕のものになるんだから!!」

「────あ?」


それを聞いてジークの魔力が跳ね上がった。


「ッ・・・!?」

「もういい、本気でやろう。一切手加減はしない。お前はもう終わりだ」

「う、うぐ・・・」


ベルゼブブは後ずさった。

絶対に勝てない。そう確信してしまったからだ。


「ジークフリードォォッ!!」


逃げるしかない。そう思ってベルゼブブは転移魔法を発動する。


「逃がすわけねえだろうが」

「は─────」


しかし、目の前に現れたジークが勢いよく地面を踏み、ベルゼブブの足元に浮かび上がっていた転移魔法陣は消滅した。


「さて、魔神ベルゼブブ。死ぬ覚悟は出来てるよな?」

「ひっ・・・!!」

「お前には俺の全魔力をぶつけてやる」


ジークの拳に凄まじい魔力が集まっていく。

そう、ジークは自身の全魔力を一気に放とうとしているのだ。


「シルフィを泣かせた事、あの世で後悔しな!!」

「うあああああッ!!神をも喰らう(デウス)─────」

「これで、終わりだッ!!!」


そして放たれた一撃は大地を抉り、衝撃波はあらゆるものを破壊しながら遥か遠くに見える巨大な山をも消し飛ばした。



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